big design awardファイナリスト5名の作品を振り返る

2022.04.01

応募条件を一切設けずに次世代のファッション業界を担うデザイナーの育成や支援を目的に開催される、アジア拠点のグローバルファッションコンペティション「big design award」。2021年のファイナリスト5名が「楽天ファッションウィーク」にてコレクションを発表。

feyfey Yufei Liu

Gyouree Kim

Saskia Lenaerts

Noga Karpel

Lucile Guilmard

最初に登場したのは、中国出身のファッションブランド「feyfey Yufei Liu」。気鋭のアンビエントアーティスト「冥丁」の音楽とともに、ぽってりと膨らんだ服がゆらゆらとした動きを纏って現れた。その瞬間、会場の空間の現実味がふっと消え、どこか知らない世界に迷い込んだような感覚に包まれる。

feyfey Yufei Liuは、ファッションをパフォーマンス、ストーリーテリング、文化批評、価値の生成を含む、商業的で機能的でウェアラブルなアートとして捉えている。きのこのようにも海洋生物のようにも見え、私たちに新たな視座を与えてくれるその服は、確かに服というよりも「ウェアラブルアート」と表現した方がしっくりくる。

身体、象徴、比喩、日常生活の相互作用に関心を持ち制作をしているというフェイフェイ。彼女が生み出すファッションは、日常風景の中で着用したときに、身体の表層だけでなくその周りを取り巻く社会空間にも、相反する浮遊感と安心感が同時に生じる様を想像させる。

feyfey Yufei Liu

feyfey Yufei Liu

次は、韓国出身の「Gyouree Kim」。彼女は韓国とロンドンにてファッションを学ぶ中で、環境と持続可能性に興味を持ち、バイオプラスチックなどのサステナブルな素材と職人の技術を組み合わせたクリエイションを行っている。

コレクション全体を通して、伝統的なデザインを踏襲しつつもそれを現代的にアップデートしたコルセットが印象的。コルセットに興味を持ったのは、デザイナーのキム自身が慢性的な消化器系の不良を抱えていたことがきっかけだという。身体に不具合があったとしても、その不快感を解放して通常の人間の部分として受け入れることができたら、という思いから、コルセットを制作の軸に据えた。

つまり、締め付けられて苦しい衣服というイメージが持たれがちなコルセットを、キムは快適でサポート力のある衣服として捉え直したということである。ココ・シャネルによるファッションの革新は女性をコルセットから解放したことだったが、コルセットこそが身体にも環境にも優しい衣服となる新たな時代が来ているということだろうか。

Gyouree Kim

Gyouree Kim

続いては、雰囲気が一気に変わり、ミリタリーウェアを脱構築したようなレイヤードと大胆な露出のバランスが絶妙なメンズコレクションが登場。

デザイナーは、ベルギー出身でセントラル・セント・マーチンズにてファッションメンズウェアの修士号を取得した「Saskia Lenaerts」。サスキアは過去に、世界中の優秀な服飾学生が集まるコンペ「GRADUATE FASHION WEEK(GFW)」にて、Considered Design賞を受賞した経歴を持つ。

彼女は人々が抱く偏見という武装を解除するようなクリエイションを目指している。軍服を解体し、誇張したボリュームと露出の脆さを併せ持った形に再構築することで、軍縮と国境の破壊を表現。文化の違いと共通点の両方を受け入れることで、ボーダーレスな世界を築いていきたいという思いが伝わってくるようなコレクションである。

Saskia Lenaerts

Saskia Lenaerts

その次に登場したのは、イスラエル出身でアントワープ王立芸術アカデミーにてファッションを学び、ロンドンとイスラエルを拠点に活動するデザイナー「Noga Karpel」。ボリューミーなフォルムと、身体的な「女性らしさ」に対して一石を投じるようなディテールが印象的。フェミニストアートの概念を探求した故フランス系アメリカ人アーティストのルイーズブルジョワの作品に触発されて制作された。

4番目に登場したチェーン状に繋ぎ合わされた鎖帷子のようなドレスは、3Dプリントで作られていて、近くで見るとその何百ものパーツはそれぞれ手の形をしている。チェーンでつながれた手のモチーフは、歴史的な女性同士の繋がりや強さ、美しさを表現すると同時に、現代の女性が直面している社会的な問題について今一度考える必要があることを感じさせる。

Noga Karpel

Noga Karpel

ショーの最後を飾ったのは、パリで育ち、セントラル・セント・マーチンズでファッションを学んだ「Lucile Guilmard」のコレクション。ルシールは、巨大な工業用ミシンに魅了され、パリにある叔父の店を訪れて、服作りを始めた。その後、パリの「SONIA RYKIEL(ソニア リキエル)」、ニューヨークの「MARC JACOBS(マーク ジェイコブス)」にてインターンを経験し、直感、実用、生産、刺激的なクリエイションを目指している。

捻りを加えたユニークなパターン構成と鮮やかな色使いが印象的で、イチゴを模したようなヘッドピースを身に付けた遊び心溢れるルックも登場した。

Lucile Guilmard

Lucile Guilmard

ショーの裏側を捉えた貴重なバックステージの写真も特別に公開!

feyfey Yufei Liu

Gyouree Kim

Saskia Lenaerts

Noga Karpel

Lucile Guilmard

デザイナー : feyfey Yufei Liu/Gyouree Kim/Saskia Lenaerts/Noga Karpel/Lucile Guilmard

big design award
WEB : https://big.inc/
Instagram : @big_designaward

feyfey Yufei Liu
Instagram : @feyfeyworldwide

Gyouree Kim
Instagram : @gyoureekim

Saskia Lenaerts
Instagram : @world_saskia

Noga Karpel
Instagram : @miss_nogi

Lucile Guilmard
Instagram : @lucileguilmard