ANTHEM A(アンセムエー)2026年秋冬コレクション-
クラシックの輪郭が揺らぐとき、
いくつもの“自分”が現れる

2026.03.18

2026年3月16日(月)〜21日(土)の会期で開催中の「Rakuten Fashion Week TOKYO 2026 A/W」。JFWO設立20周年を迎え「世界の継ぎ目となれ」というテーマを掲げる今季では、全33ブランドによる新たな20年への一歩を刻むクリエイションが披露されます。
装苑ONLINEでは、東京のファッションシーンを牽引する実力派から、今季デビューする注目のニューカマーまで、個々の美学が放たれる最新のコレクションを、独自の視点でお届け!

text : Shigeaki Arai (AFFECTUS)

鈴木麻莉子と吉田尚によるアンセム エー(ANTHEM A)が、初のランウェイショーを開催した。テーマは“INNER UNIVESE“。天井の照明がほのかに照らす会場は、黒光りするフロアがその光を反射させていた。

ショーの始まりは「黒」。光を吸い込む素材は、コートやスーツといった重厚な服へ。スタイルはクラシックに分類される。しかし、別の衣服を首や腰に巻きつけた着こなしは、クラシックの均衡を崩していた。

服は色彩を帯びる。オークル、ブラウン、パープル、ボルドー。色相が近い色は連なり、狭間にグリーンやブルーが差し込まれる。ただし、鮮やかな印象はない。

その要因はコレクションの表情にあった。無地の生地、特殊な染め加工、スパークル糸を用いたジャカードなど、異なる性質の素材が混在し、コレクションは不規則な表情を見せる。調和とは反対の場所に、このブランドの美学がある。

スタイルはハードなクラシックというべきもの。伝統に倣うが、縛られない。チョークストライプのスーツは、ゴールドの生地がパンツにまとわりつく。そこに立ち上がるのは、明快な強い意志を持つ人物。しかし、その人物は自分のスタイルすらも疑う。アンセム エーはテーラリングを軸にしつつも、テーラリングの硬さを解いている。

半袖のトップとパンツの装いは、トップに抽象的な柄をプリントし、両手にロンググローブをはめている。パンツはドレープを描き優雅だが、足元はサンダル。身体を覆い、露出する。均衡は保たれない。ファッションの文法はとことん崩される。

コレクションはクラシックという確固たるスタイルの中で、スタイルの境界を溶かしていた。様々な価値観を行き来する。そんな生き方にアンセム エーは呼応している。

鏡面状の黒い床には、水面のように揺らぐモデルたちの身体が映っていた。鏡に写る自分の姿が、本当の姿とは限らない。ショーは残像を残し、フィナーレを迎えた。

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