昨年、ブランド設立20周年を迎えたアンリアレイジが新たにメンズライン「anrealage homme(アンリアレイジ オム)」を始動し、Rakuten Fashion Week TOKYO 24AW最終日にデビューコレクションを発表した。アンリアレイジはこれまで、東京とパリでそれぞれ10年ずつコレクションを発表してきたが、東京コレクション時代の服作りがずっと原風景にあったのだという。パッチワークやクラフトワークなど当初やっていた技法を再解釈し、当時を知っている人にとっては懐かしく、近年のデジタル×ファッションの試みを見てきた人には新鮮に感じられるルックの数々が登場した。
アンリアレイジ オムを立ち上げるきっかけは、15年ほど前に遡るという。スタイリストのTEPPEIさんが、アンリアレイジに「別注で自分用に作って欲しいアイテムがある、それを街で着たい」という依頼をしたことが契機。その依頼を受けてTEPPEIさんのためにメンズ服を作ったことが一つの転機となり、曲線使いや色使いで新しい男性像を提案するメンズラインが誕生した。
デザイナーの森永邦彦さんとスタイリストのTEPPEIさんの深い関係から生み出されたアンリアレイジ オムについて、ショー終了直後のTEPPEIさんに2問、質問することができた。
スタイリストTEPPEI インタビュー
森永さんと僕が感じていた原風景にアンサーを。
——今回デビューしたアンリアレイジ オムにはTEPPEIさんも深く携わっていますが、アンリアレイジのメンズを別注で依頼するほど、“オム”に対して強い思いがあったかと思います。オムにはどのような可能性を感じていたのでしょうか?
僕が20代前半の頃「ストリートでアンリアレイジを着たいです」と森永さんに伝えたことがありました。オムと名乗る以前からアンリアレイジにはジェンダーレスという考え方があり、着たいと思えば男性でも着ることはできましたが、僕にはメンズアイテムとしてアンリアレイジを着たいという思いがあって。そこで、森永さんがサイズをアップグレードしてくださったり、いわゆるワンオフ(一回限り作られる、オーダーメイド)を作ってくださったことがありました。
現在のアンリアレイジはコンセプチュアルかつ最先端なものをパリ・ファッションウィークで発表していますが、ある種それらにはバイアスがかかっている認識があります。僕も関わりながら素晴らしいとは感じているけれど、僕の過去の思いとは違うこともあったので。
今の自分たちだったら、若い方々に熱狂してもらえるものが作れるのではないかと思い、そんな可能性を森永さんに話しました。そうしたら昨年の10月、「やりましょう」という話になりました。その後はパリで発表するコレクションの準備をしながら並行してオムも進行していたので、森永さんもアトリエの皆さんも僕もすごく大変だったのですが、森永さんと僕が感じていた原風景に、今の自分がアンサーできることはないかなと、洋服を見ながら何度も話し合いを重ね、なんとかデビューコレクションを発表できました。
——TEPPEIさんが思う、森永さんが作る服の“強さ”はなんでしょう?
不器用さですかね。パッチワークという発想もそうなのですが、良い意味での不器用さです。森永さんが持つストロングな部分と、その真逆にある部分を僕は持ち合わせていて、それをどのようにセッションしながらデザイン・スタイリング・ラインナップに落とし込めるかというのが、今回のプロジェクトの醍醐味でした。お互いの持ち味が活かされたのではないか、と今振り返ってみて感じます。多くの方に袖を通していただけると嬉しいです。
1着が何千ものボタンで埋め尽くされているジャケットやパンツは、初期のアンリアレイジを思い起こさせながらショーピースとして強い力を放ち、スカジャンのデザインをニットプルオーバーに落とし込んだアイテムや、ダッフルコートをローゲージニットで表現したもの、スクエアパッチワークのブルゾンやショートパンツなど、手作業で時間をかけ制作されたアイテムは商品としても展開される。スクエアトゥのシューズは日本のリペアシューズブランド RECOUTURE とのコラボレーションで全て一点もの。
また、今回注目を集めたのは『装苑』にも度々ご登場いただいている榎本紀子さん手がける「nori enomoto(ノリ エノモト)」のヘッドピースと、ノリ エノモトのモチーフつきジャケットやブルゾンなどのコラボレーションアイテム。森永さんとTEPPEIさんが「曲線のデザインをリードしてほしい」と依頼したという、花弁のような曲線を持つピースが、今回のアンリアレイジ オムのスタイリングに見事にマッチしていた。
今後、アンリアレイジ オムは東京のファッションウィークで、アンリアレイジは引き続きパリ・ファッションウィークで発表していくことが発表された。東京のファッションシーンの雄となっていくことを予感させたアンリアレイジ オムの今後に注目したい。
ANREALAGE
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