加納愛子インタビュー
初短編小説集『これはちゃうか』と芸人としての執筆にまつわるお話

2022.12.23

お笑いコンビ、Aマッソでネタ作りを担当し、近年では作家としてエッセイや小説、ドラマの脚本なども手がけている加納愛子さん。次々と新たな才能を現し、魅力を放っている彼女の自身初となる短編小説集『これはちゃうか』が刊行。何気ない日常のワンシーンから広がっていく物語を、独自の世界観で描いた6篇からなる本作について、そして小説を書くことへの思い、フィクションの面白さなどについてたっぷり伺いました。

photographs : Jun Tsuchiya (B.P.B.) / hair& make up : Ayumi Kiyotou / interview & text : SO-EN

芸人活動ではさらけ出していない部分が
小説には色濃く出ている

――エッセイからスタートされた加納さんの執筆活動。今年で5年目とのことですが、当初から現在までで何か変化はありましたか?

文章を書き始めた頃はファンの方が読んでくれていることが多かったと思うんですけど、最近は本を読んでライブに来てくれる方が増えましたね。エッセイを読んで私が芸人だと知り、ライブに来てくれるようになったのは、自分にとって予想外のことでした。

――元々お笑いが好きでライブに来られる方と、本を読んだことをきっかけにライブに来られる方とでは、ネタに対しての反応も違ったりしますか?

私が小説を書き出したのはコロナ禍以降なので、直接ライブを観に来られた方とお話する機会ってあんまりないんですけど、おそらく違うんじゃないですかね。逆にお笑いファンの方が『これはちゃうか』を買ってくれて、「初めて小説買いました」って言われたり。そうやって本を読むきっかけになっているのは素直に嬉しいなと思いますね。

――『これはちゃうか』には雑誌『文藝』に掲載された作品も収録されていますが、短篇小説集として1冊の本にするというお話を聞いた時はどんな気持ちでしたか?

めっちゃ嬉しいですけど、怖いというか。お笑いは、劇場でお客さんの反応がダイレクトに伝わりますが、本は直接反応をもらえるわけではないので。もう発売していますけど、本当にしてんのかなっていう感じです。

――『これはちゃうか』というタイトルにはどんな想いが込められているんでしょうか?

これは担当編集の矢島(緑)さんと考えたんです。この本をあんまり気に食わん人がおった時に、「これはちゃうか」って下げられるように(笑)。後ろ向きの開き直りのずるさみたいなのが出てますね(笑)。

――まさかそんな理由だったなんて(笑)。1つ目の短編「了解の餅」は主人公のセリフにどこか加納さんらしさを感じたのですが、フィクションにもご自身らしさは映し出されていたりしますか? 

『これはちゃうか』は執筆した順に並んでいて、「了解の餅」は一番初めの作品だったので、結構そういう意図を持って書いたところもありました。友達を笑わせたい子が主人公ということもあり、自分自身にも近かったかもしれないですね。自分の中にあって、芸人活動ではさらけ出していない部分みたいなものは、色濃く小説に出ているところがあります。

――加納さんが書かれる小説では、登場人物たちの台詞に特徴的なものが多く、言葉が豊かだと感じます。例えば、「最終日」の「本物と喋れてるのに、希釈させたものをみる必要ある?」という台詞など。その点はどのように意識されていますか?

小説を書くからには自分が書く意味というか、私やったら何が得意かなっていうところは考えますね。他の作家さんの本を読んで、この題材はこの人が面白く書いてくれてるからやらんでいいや、みたいな気持ちも割とあって。私はずっとネタを書いてきたので、喋る言葉みたいなところは、もしかしたら自分の武器として戦えるんかなと薄っすら思ったりしていました。

――これまでお笑いのネタを書かれる時、このセリフが言いたいというところから発想を広げていく作り方もされていたようですが、小説でもそういった書き方をされることはありますか?

ここ数年でネタは作り方を少し変えていて、実は最近ではあまりそういう作り方をしていないのですが、『これはちゃうか』の中だと、「イトコ」は最初の一行を言いたくて書きました。この台詞で何かを伝えたいというよりは、ただ言いたいっていう気持ちで。

――ネタとして台詞を書くことと、小説として台詞を書くことは加納さんにとって違うものですか?

全く違うものではないと思うんですけど、お笑いは笑わせないとダメなので、目的がはっきりしていますよね。その芸人が面白がっている量や場所のままで言葉を受け取られることが正解です。小説はそれよりもうちょっと広くて、好きなテンポで読んでいいし、読む側がどれくらいその作品に寄り添うか、もしくは突き放すかも決められる気がして、それは私が小説を好きなところでもありますね。そういう意味では小説には正解も不正解もないなと思います。

――では、エッセイと小説は書く上でどんな違いがありますか?

小説の方がネタ寄りかな、なんとなく。私は、分かりやすくこれを言いたいみたいな、目的を持った文章が恥ずいんやと思うんですよね。言いたいこと伝えてる~っていう感じがして。なので、ちょっとフィクション要素がある方が書きやすいんです。

――加納さんは小説を基本的に結末を決めずに書かれるようですが、『これはちゃうか』に収録されている作品もそうでしたか?

「最終日」だけ少し最後を決めていたくらいで、他の作品はほとんど決めずに書きました。ほんとは決めて書きたいけど、できひんだけです。ネタもそうなんですけど、結構オチに興味がないんですよ。「野菜も食べや」みたいなノリで「ちゃんと落としや」って言われてるみたいで(笑)。

――作品を受け取る側にまわった時も、あまりオチには興味がないですか?

そうですね。結末がどうなるんだろうとか、最後がきれいに終わってほしいという欲求がないです。観ていたり読んでいたりする時間が楽しければいいという気持ちが大きいですね。この前お芝居を観に行った時も、最初の40分くらいがおもろすぎて、そこから別にオチが悪かろうと関係ないみたいな気持ちになりました。あとは、作品を評価するとか、審査するっていう目線があんまりなくて。だから私は、一行でもおっ!っていうところがあればいいですね。

NEXT:加納さんが思う本の面白さとは?
書き手として、読み手として感じること。

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