『新聞記者』『ヤクザと家族 The Family』といった社会に切り込む力作を創り出してきた映画制作会社スターサンズが、藤井道人監督×横浜流星さんと組んだ『ヴィレッジ』(4月21日公開)。
父の起こした事件の汚名を背負い、また母親の借金を抱え、村から出られない優(横浜流星)。幼なじみの美咲(黒木 華)が故郷に戻ってきたことから、どん底の生活に光がさしていくのだが……。劇中に能を取り入れ、人間の業(ごう)や人生の栄枯盛衰を描く骨太な本作は、先んじて観賞した人々を中心に話題を呼んでいる。
渾身の表現で観るものを魅了する横浜さんと黒木さんに、メイクや衣装といった映画には欠かせないビジュアル面のアプローチのことや、『装苑』「装苑ONLINE」読者に向けたエールを語っていただいた。
photographs : Jun Tsuchiya (B.P.B.) / styling : Shogo Ito (sitor,Ryusei Yokohama) , Mayu Takahashi (Haru Kuroki) / hair & make up : Taichi Nagase (VANITES,Ryusei Yokohama),Katsuhide Arai (Haru Kuroki) / interview & text : SYO
『ヴィレッジ』
茅葺き屋根が立ち並ぶ山間の村、霞門村(かもん村)。そびえる山々の間からのぞくのは、ゴミ処理施設だ。村は環境問題への取り組みをアピールする一方で、ヤクザが取り仕切る中、廃棄物の不法投棄にも手を染めていた。ゴミ処理施設の作業員である優(横浜流星)は、かつて父親が村で起こした事件の汚名を背負い、罪を肩代わりするように生きてきた。わずかな給料は母親がギャンブルで作った借金の返済に充て、仕事中は、村長の息子の透(一ノ瀬ワタル)にいびられている。そんな暗澹たるある日、優の前に、7年前に村を出て行った幼なじみの美咲(黒木華)が現れる。二人が心を通わせた矢先、とある事件が起こる。
監督・脚本:藤井道人
出演:横浜流星、
黒木華、一ノ瀬ワタル、奥平大兼、作間龍斗
淵上泰史、戸田昌宏、矢島健一/杉本哲太、西田尚美、木野花
中村獅童、古田新太
2023年4月21日(金)より全国公開。
配給:KADOKAWA/スターサンズ
©️2023「ヴィレッジ」製作委員会
今回改めて、映画は総合芸術だと感じました。――黒木華
――横浜さんは作品・役柄ごとにヘアスタイルを変える印象がありますが、今現在のお考えを教えて下さい。
横浜:内面だけでなく外見の変化も大事だなと思っていて、出来る限り作品ごとに変えています。役に入るスイッチになるので、僕の中ではすごく大事にしているところです。
『ヴィレッジ』では、髪をぼさぼさにしたくてパーマをかけました。普段の自分はぺたんとなってしまう髪質なので、パーマをかけてボリュームを出し、さらにちょっと汚した感じの、見た目を何も気にしていない人のビジュアルにしようとしました。
――ただ、多忙なスケジュールの中でこだわりを貫くのは相当なご苦労があるかと思います。撮影スケジュールの変動や追加の撮影も場合によってはあるでしょうし……。
横浜:そうですね。でもやっぱりどうにかできるようにしたいという想いがあり、事務所にお願いして調整しています。
――黒木さんが『ヴィレッジ』で演じられた美咲は、前半では肌に赤みが残るメイク、後半ではその肌がやや青白くなっているように感じられました。
黒木:ヘアメイクの橋本申二さんほか、各パートの皆さんが役作りを手伝ってくれました。メイクや衣装に助けてもらって、役が出来上がっていきます。今回改めて、映画は総合芸術だと感じました。美咲は基本的にメイクをあまりしなかったり薄めの女性という役だったので、そのうえで「ちょっと薄くしようか」「赤みを入れようか」「艶感を出しましょう」と現場で細かく微調整して下さいました。
――横浜さん演じる優は、3段階で髪型が変化していきますが、美咲も連動して変わっていく設計になっていましたね。
黒木:そうですね。みんなで話し合いながら作っていきました。
衣装合わせに行ったら、藤井さんが「優は緑だよね」って(笑)。――横浜流星
――いまお話に出た衣装についても教えて下さい。美咲は黄色の衣装が多かったかと思いますが、藤井監督やスタイリストの皆川美絵さんとは衣装合わせの際などにどんなお話をされましたか?
黒木:私はその意図をお聞きできていないんです。個人的な印象としては「布が多い」と感じました。衣装合わせのときにも「体形が目立つようなシルエットの洋服を着るキャラクターではないよね」というお話をしたように思います。
――優はカーキのアウターが印象的でした。
横浜:衣装合わせに行ったら、藤井さんが「優は緑だよね」って(笑)。それですんなり決まりましたね。
黒木:そうだったんですね。その対になる意識で美咲が黄色になったのかもしれませんね。アースカラーでまとめていた感覚はあります。
横浜:そうそう。僕は最初、漠然と「黒かな」と思っていたんです。でも藤井さんは最初から明確に「色を付けたい」という想いがあったようで、衣装合わせの段階で黒い服はすべて排除していきました。緑やグレーといったアースカラーのものを中心に選んでいきました。
映画『ヴィレッジ』より
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