ミューズ像の原点はアンダーグラウンドな映画のヒロインたち
〝縷縷夢兎／rurumu:〟のデザイナー東佳苗さんは、高校生の頃、映画をたくさん見て、数限りない映画のヒロインたちの生き方に影響を受けた。
「『小さな悪の華』『ひなぎく』『ヴァージン・スーサイズ』『ユモレスク 逆さまの蝶』『ヴィオレッタ』……なぜか、自分の性を自覚しているのかどうか分からない頃の少女たちを映した作品に魅かれることが多かったんです」
『ヴァージン・スーサイズ』監督：ソフィア・コッポラ U-NEXTにて配信中。（雑誌掲載時の情報です。）
©1999 by Paramount Classics, a division of Paramount Pictures. All Rights Reserved.
『ひなぎく』監督：ヴェラ・ヒティロヴァー 9/8～：京都みなみ会館、10/14〜：シアター・イメージフォーラム、10月下旬：大阪・扇町キネマにて上映決定。詳しくはこちら
©State Cinematography Fund
配給・発売：チェスキー・ケー 販売：ダゲレオ出版
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高校時代に見た映画の中のヒロインたち
『小さな悪の華』のアンヌとローラ、『ひなぎく』のマリエ1とマリエ2、『ヴァージン・スーサイズ』のセシリア、『ユモレスク 逆さまの蝶』のエイミーとソニー……、高校時代に死ぬほど見たという映画の中の少女像が、東さんのものづくりの原点にある。
文化服装学院の学生時代から、インターネット上で有名な素人の女の子を発掘し、たった一人のミューズに向けて服を作り、被写体として写真を撮り始めた。さらに深くストーリーを展開するために映像を撮り、少女たちの内面や葛藤、揺らぎを追いながら、作品を制作した。
「“縷縷夢兎”というプロジェクトの根幹にあるのは、ガールズカルチャーのような一つの現象を作りたいという気持ち。せっかくなら色々な方向から服に興味を持ってもらえるように、写真、映像、インスタレーション、MVなど複合的に広がっていくように、入口をいっぱい作りたいという思いはありました」
東さんの転換期となったのは、2018年、プレタポルテライン“rurumu:”のスタート。
“rurumu:”ファーストコレクションで登場した「frenemy」テキスタイル
2018年にスタートしたプレタポルテライン、rurumu:のファーストコレクションでは、映画のヒロインの名前を埋め尽くした、frenemy（friend＋enemy 「友を装う敵」または「ライバルと同時に友である者」を意味する混成語）テキスタイルも制作。
「一点物の縷縷夢兎の服をミューズ一人にささげる、という形で作ることから、個人を特定せず、広い視野で一人ずつに寄り添うことができる、量産する服を作り始めました。今までの、自由である種モラトリアムな活動期間を終えるという意味では、青春にいったん区切りをつけて大人になる、と気持ちを新たにした面もあります。ファーストコレクションでは自己紹介も含めて自分のこだわりを随所に入れて、映画のヒロインの名前を埋め尽くしたテキスタイルも作りました。周りが見えてないくらいに今を生きていて、同時に安易に消えてしまえるような、周りを翻弄することはあっても服従はしない、危うくて脆くて強くて恐ろしい、みたいな少女像が、私のものづくりの原点にいます。余裕ができたら、またミューズに当て書きしてディレクションした映像制作をしたいです」
“縷縷夢兎”作品の被写体となったミューズたちの作品集『muse.』01〜03巻
2018年まで、ミューズとなる主人公に対し、一点物の“縷縷夢兎”の服を作り、映像を撮り、MVや本にまとめる、という一連のプロジェクトを、デザイナー兼アートディレクターとして手がけた。
01巻で制作したストーリー「Escape dream」（逃避夢）は、黒宮れいと金子理江をミューズにしたストーリーで、この撮影で仲が深まり、現在、「REIRIE」として音楽活動をする。
東 佳苗 Kanae Higashi
1989年生まれ、福岡県出身。文化服装学院ニットデザイン科卒業。 2009年、一点物のニットブランド、縷縷夢兎（るるむう）を設立。’19年SSより、rurumu:を本格的始動。活動は多岐にわたり、空間演出やスタイリストとしても活躍。映画『Heavy Shabby Girl』『my doll filter』『21世紀の女の子』などでは映画監督も務める。
WEB：https://www.rurumu.jp/
Instagram：@rurumu.official
Twitter：@rurumu_official
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