2023年に創立100周年を迎えた文化服装学院。その長い歴史の中で、ファッション業界はもちろん、エンターテインメントや芸術、表現の世界に携わる多くの“感性”を育み、輩出してきた。そんな文化の100歳をお祝いした好評連載の4回目は、ベイクルーズとビームスで活躍する文化服装学院の卒業生にフォーカス! アパレル業界で活躍するのに必要なことや、文化服装学院時代に学んで得たものを伺いました。
photographs: Norifumi Fukuda (B.P.B.)
この記事の内容
1 BAYCREW’S(ベイクルーズ)
2 BEAMS(ビームス)
BAYCREW’S(ベイクルーズ)
1977年設立。スピック&スパン、ジャーナル スタンダード、イエナ、エディフィスなどの人気セレクトショップを擁するアパレル企業。飲食店や家具店も運営する。WEB:https://www.baycrews.co.jp
ジャケット¥79,200 チルコロ1901、中に着たニットキャミソール¥16,500 シーオール、スカート¥20,900 プラージュ、サンダル¥35,200 イルサンダロオブカプリ(すべてプラージュ 代官山店)/その他 本人私物
プラージュ プレス
森山智美さん
アパレルでもきちんとした一企業に属すれば、一般企業の会社員と変わらず安心して働けます。
SCHEDULE ある仕事の一日
09:00 集合
外部スタジオで撮影スタート。
夕方頃に撮影終了。本社へ戻る。
19:00 退勤
チャンスがすぐそこにある業界です
スタイリストに憧れて、文化服装学院のスタイリスト科(現・ファッション流通科スタイリストコース)に入学しました。学生時代は、スタイリストの道を視野に入れてアシスタントを経験しましたが、あまり肌に合わなかったこと、そして何をするにもまずは販売からという学校の教えがあったので、卒業後は下着メーカーの販売からキャリアをスタートしました。その後、数社を経て、ベイクルーズに入社したのは2016年。プラージュのMDをしていた頃は特に、スタイリスト科でひととおり服を作った経験が、デザイナーとのディスカッションの現場で生きました。また、カルチャーの歴史を学んだ授業も、自分自身の糧になっていますね。
プレスルームでリース(貸し出し)対応中の森山さん。数多くあるプレスの仕事のうち、大きな割合を占めるのが、スタイリストや編集者へのサンプルのリース業務。アイテム名や価格、媒体に掲載される問い合わせ先を記載した伝票作成も行う。
アパレルは、いい意味で「ノリ」みたいなものが通じる業種です。「これが好き!」というものがあれば発信したもの勝ち。すると誰かが見ていて、「じゃあやってみる?」ということになりやすい。私が20代の時にバイヤーアシスタントになったのも、そんな経緯からでした。企業で埋もれてしまうことなく、ふとキャリアアップのチャンスがやってくるのは、アパレル企業で働くポジティブな面だと思っています。
Tomomi Moriyama 1985年生まれ、熊本県出身。文化服装学院スタイリスト科(現・ファッション流通科スタイリストコース)卒業。3つの会社で販売職とバイヤーアシスタント、バイヤーを経験し、ʼ16年、ベイクルーズに入社し、エディット フォー ルルに配属。その後は3年間プラージュでバイヤーを経験。スピック&スパンを経て、再びプラージュでMDをした後、現職。
カーディガン グローブソウル、スウェットパンツ アメリカンヴィンテージ、グルカサンダル エダー すべて本人私物
スローブ イエナ ルミネ池袋 販売
景山みなみさん
アパレルは職種が広く、会社に入れば様々なブランドでいろんなお仕事をしている方に出会います。その中で「こんな仕事をしたい」という憧れも生まれてきました!
SCHEDULE ある仕事の一日
10:30〜11:30 出勤
接客をはじめとする店頭業務を行う。
20:00〜21:00 退勤後は、まっすぐ帰宅。ゆっくり休養して明日の仕事に備える!
文化で将来への気づきをもらった
文化服装学院アパレルデザイン科在籍中に受けた特別講義が、今の仕事に就くきっかけになりました。その時、講師の方が「アパレルで働くなら、販売職は絶対に経験したほうがいい」とおっしゃったんです。それまで私は販売の経験がなく、けれど将来は、なるべく長い間ファッションの仕事を続けたいと思っていました。そこで、販売から別職種に行くことができるベイクルーズに就職したいと考えたんです。
店頭で商品をきれいに陳列することはもちろん、マネキンのコーディネートを考えたり、バックヤードで在庫の管理をしたりと、販売職は接客以外の業務も幅広い。影山さんはそのすべての業務が好きというが、やっぱり一番好きなのはお客さまと話す時間。
文化で3年間服作りを学んだことは、今、私の大きな強みになっています。どの服も見ただけで構造やデザインの意図がわかり、触れば素材特性がわかる。それを、お客さまに根拠と自信を持ってご説明できるからです。最初は向いていないかもしれない、と思った接客でしたが、ブランドが好きで来店されるお客さまに喜んでいただけることが嬉しくて、苦手意識もなくなりました。ファッションの仕事をしたいけれど何になりたいか分からない場合は、まず販売から始めれば、その先の目標が見つかるはず。私は今、企画職やVMD、バイヤーにも興味があります。選んだ道は間違っていなかった、と思います。
Minami Kageyama 1997年生まれ、愛知県出身。環境デザインを学ぶ大学を2年で中退。1年間アルバイトで資金を貯め、文化服装学院入学。アパレルデザイン科を2021年3月に卒業し、ベイクルーズに新卒入社。スローブ イエナ ルミネエスト 新宿店に配属され、1年半販売職を経験。ʼ22年9月より現職。
ジャケット ʼ90年代のポロ ラルフ ローレン、インナー ノア、パンツ ポーラー スケート カンパニー、ニットキャップ 文化の友達からもらったもの、腰につけたチェーン マーティン アリ すべて本人私物
ジャーナル スタンダード 表参道 販売
小川唯人さん
「俺はアパレルがやりたいんだ」という強い気持ちと将来像があるなら、不安もなくなっていくはず。目的を明確に見つけることが大事です。
SCHEDULE ある仕事の一日
10:00 出勤。掃除など開店準備
11:00 一服してからオープン
20:00 閉店
20:30 退勤
「仕事のリアル」を知ってから働く強み
初めはスタイリストになることを考えていたのですが、いきなりスタイリストの道も違うのではないかと思い、都心で販売員から始めよう、と。それでショップスタイリストコースを選択しました。文化服装学院で大きかったのは、同級生の存在。すでに服屋で働いている人の実体験を聞けていたことです。それから先生も販売の経験者だったので、リアルな話を聞くことができました。
「お店に立つ喜びは、自分のスタイルを気に入ってくれたお客さまがまた来てくれたり、友達がふらっと遊びに来てくれること」と小川さん。
アパレルには華やかなイメージがあるので、それと現実とのギャップで早々に辞めてしまう人が多いんです。そんな中、僕が5年、販売を続けられているのは、仕事の実情を知ってから入社することができていたからだと思います。ベイクルーズで働きたいと思ったのは、僕が好きなブランド、ノアの日本店舗を運営しているから。一緒にスケートボードをしている先輩がベイクルーズの人だったというのも、きっかけの一つでしたね。
愛用のカメラは、リコーのGRⅢ。
趣味のスケートやカメラと同じように、販売員として働いていることもライフスタイルの一環という感じです。趣味の延長線上にあり、生活サイクルに合ってる仕事で気に入っています。
Yuito Ogawa 1999年生まれ、神奈川県出身。2019年、文化服装学院ファッション流通科ショップスタイリストコース卒業。ベイクルーズに新卒入社し、ジャーナル スタンダードの町田店で2年、ルミネ横浜店で1年、新宿店で半年間、いずれも販売員として勤務した後、現職。
ジャーナル スタンダード 表参道
場所:東京都渋谷区神宮前5-25-4 BARCAビル1階・2階
時間:11:00〜20:00
TEL:03-6418-7961
不定休
Instagram:@jsomotesando
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