2025年1月10日に放送がスタートするドラマ25「風のふく島」(テレ東系 毎週金曜深夜24時42分〜)。福島県12市町村を舞台に、実在する12名の移住者から着想を得た1話完結で描くオムニバスドラマだ。第1話の主演を務めた佐藤大樹さんは、馬の社会的地位を高めるため南相馬市に移住し、異郷の地で夢に向かって奮闘する青年を演じた。そんな佐藤さんに、これまで何度も訪れたことがあるという福島県の魅力や、馬との撮影秘話などをたっぷりとうかがいました。
photographs : Ayako Masunaga / styling : 平松正啓/ hair & make up : 大木利保【CONTINUE】/ interview & text : SO-EN
馬の嬉しそうな顔がいまだに忘れられません。
ドラマ「風のふく島」より
©︎「風のふく島」製作委員会
——南相馬市は、国の重要無形民俗文化財に指定されている「相馬野馬追*」が、伝統行事として1000年以上続いているなど、馬と人々が近い距離にいます。ドラマでは、佐藤さんが馬を調教したり馬に話しかけるシーンがありました。この役を演じるにあたって、どのように馬と向き合ったのでしょうか。
佐藤大樹(以下、佐藤):クランクイン前に馬に慣れるために触れ合って、実際に乗って練習をしました。相性も重要なので自分にあった馬を見つけることと、感覚を掴むことにすごく苦労しました。このドラマのモデルになった方が指導してくださったのですが、アドバイスや励ましの言葉をたくさん掛けてくださいました。そのおかげもあり、不安だった馬とのシーンもスムーズに撮影が行えて、次第に馬とコミュニケーションを取ることができるようになりました。撮影の最終日は、馬と離れるのが寂しくなるほど馬と向き合いました。
*福島県の相馬地方で毎年3日間にわたって行われる“馬を追う神事・祭り”。甲冑に身を固めた総勢約400騎の騎馬武者が腰に太刀、背に旗指物をつけて疾走する。
——馬との撮影でハプニングなど、印象に残っているエピソードはありますか?
佐藤:普段、見慣れない撮影機材のカメラやマイクに囲まれることで、馬が恐怖を感じてしまい、撮影中におなかを見せて駄々をこねてしまうことがあり、予想外の行動で何度かNGがでてしまいました。ラストのシーンでは監督やスタッフが遠くから撮影しているため、馬をコントロールできるのは僕だけという状況。自分の映り方を気にしている余裕はなく、とにかく馬を落ち着かせて暴れさせないように、というプレッシャーがありました。ですが、無事に撮影を終え、初めて馬にニンジンを5本あげたときの嬉しそうな顔が、いまだに忘れられません。
——第1話で佐藤さんが演じた役のモデルになった方は障害馬術競技で日本一になった実績をもち、現在は南相馬市で「一般社団法人 Horse Value」の代表を務めています。彼と佐藤さんは異なったフィールドで活躍されているものの、お二人とも1995年生まれの同い年ですね。「中村」という役名で演じられましたが、役とモデルになった方の半生から共感できる部分はありましたか?
佐藤:ご本人と直接お話をさせていただき、共通点も多くすぐに意気投合しました。「根拠のない自信が昔からあった」とおっしゃっていて、馬術競技をメジャーにすることや、馬の社会的地位を高めるという夢に対して高い熱量を持っているんです。その姿を見て、僕も16歳でダンスを始めて、当時はEXILEのメンバーになるという大きな目標を掲げていたので、目標に向かってまっすぐ突き進む姿勢や、周りが見えなくなるくらい物事に打ち込むという部分に共感しました。実は、背丈も足のサイズも全く一緒だったんです(笑)。あと、馬にEXILEの曲を聴かせてくれていて、すごく嬉しかったです。
——身体表現であるダンスと馬術が通ずる部分はありましたか?
佐藤:本格的な馬術競技のシーンはありませんでしたが、馬に乗るときのコツをライブに例えて教えてくれました。乗馬には目線の位置が重要な要素らしいのですが、初心者は進行方向を向かずに馬を見てしまうそうで、「ライブでいうスタンド席です!普段、佐藤さんがライブで見ているときの視線を意識してください」とアドバイスをしていただきました。「下を見てしまうと素人感が出てしまうので、ダンスを踊るときの目線に。そうすると猫背も改善されてプロっぽく馬術競技をしている人の馬の扱いに見えるから」と教えていただいて、こんなところに共通点があったのか!と面白い発見ができました。
夢や目標を恥ずかしがらずに積極的に言葉にすることが大切
——佐藤さんにとって、福島はどのような場所ですか?
佐藤:福島県は幼い頃から毎年必ず行っている場所です。行くたびに心が浄化されるイメージがあって、今回も福島県で撮影できるということを聞いてすごく嬉しかったです。福島の方たちは、心が広くて人を信頼していて、地域の人たちの輪を大切していることを知っていたのですが、実際に南相馬市の方は僕が馬の練習をする時に丁寧に手取り足取り教えてくださいましたし、馬を愛する情熱や人の温かさに触れ、あらためて素敵な場所だと感じました。
——このドラマを通じて福島、さらに南相馬市がどのように広がることを期待しますか?
佐藤:「風のふく島」を見た方が「この福島県の市町村に行ってみたい」と感じてくれたらいいなと思います。第1話では馬について触れているので「馬のことをもっと知りたい、野馬追ってなんだろう」と興味をもち、ドラマをきっかけに調べていただけたら嬉しいです。
——中村優神のセリフの中で「オモロそうだから、やってみる。面白くなさそうだったから、一流企業の内定を辞退した」という “面白さ” を基準に物事を選択している部分が印象的でした。一見、単純なことのように感じますが、自分基準の“面白さ”を理解するのはすごく重要な点だと思います。佐藤さんが大切にしている物事を選択する際の基準は何かありますか?
佐藤:その物事に対して興味があるか、ないかということです。そしてそれをして楽しめるかどうかですかね。仕事もそうですが、自分が面白いと感じたものを選択しています。そういった意味では中村優神に似ていますよね。あとは、常にインプットすることが好きなので「こういう映像が作れたらいいな」とか「こういう作品作りたいな」などを考えていて、それを周りの力を借りて具現化するのが好きです。今もいくつか考えていることがあります。
——では、“面白さ”を感じないことは“やらない”という選択をしますか?
佐藤:します。面白いことに使う時間のほうが大切だと思います。
ドラマ「風のふく島」より
©︎「風のふく島」製作委員会
——衣装についても教えてください。南相馬市に移住するまでは乗馬服を着用して馬に乗っていた中村優神は、「野馬追」を目指し重厚な甲冑をまとって和鞍を付けた馬に乗ります。重さもサイズ感も異なる衣装で心の変化や葛藤をどのように表現されましたか?
佐藤:馬術競技のユニフォームは、実際に使用されているものをいくつかお借りしました。足のサポーターを着用して馬に跨った時は気が引き締まった感覚になりましたが、より緊張感を味わったのは甲冑を身につけた時です。小道具ではなく、野馬追で使用している本物の甲冑をお借りし、時間をかけて着せつけをしていただきました。
甲冑の姿で口上を述べるシーンを撮った時には、人格が変わったように見えるほど、顔つきも目つきも変化したと思います。物理的な重みもありますし、自由が効かない中で自分を大きく表現しなければならないと意識もしていましたが、甲冑がなければこのような雰囲気のシーンは撮れていなかったと思います。多くの方に助けられて成立したシーンでした。
——このインタビューを読んでいる装苑ONLINEの読者には、佐藤さんが演じた中村優神と同じように、夢に向かってひたむきに挑戦し続けている方が多くいます。ダンサーとしても俳優としても長く活躍されている佐藤さん。夢を叶えるためには、どのようなことを意識することが重要でしょうか?
佐藤:中村優神のキャラクターと共通する部分でもありますが、夢や目標を恥ずかしがらずに積極的に言葉にすることが大切だと思います。そして、自分だけの力では限界があるので、力を貸してくれる人を見つけてみてください。装苑の読者の方は専門学校などに通って、将来はファッションやメイク、アート関係などで活躍される方が沢山いると思いますが、自分の周りにいる仲間を意識して、夢を叶えるためにどの力が必要かということを、みんなで話し合うことが重要だと思います。やらない後悔よりやる後悔!
本当に言霊ってあると思っているので、どんなことでも、思っていることはなんでも口にして、とにかく行動することです。
佐藤大樹さん着用:ジャケット¥71,500、シャツ ¥33,000、パンツ ¥41,800 / すべて Another Aspect (コンクリート)/その他スタイリスト私物
コンクリート 東京都渋谷区東2-20-13-409
TEL:070-9199-0913
TAIKI SATO
1995年生まれ。2014年「EXILE PERFORMER BATTLE AUDITION」FINALにてEXILE新パフォーマーに選ばれる。2016年、リーダーを務める「FANTASTICS」を結成。現在はEXILEと兼任し活動を行う。ドラマ「ワイルド・ヒーローズ」(2015年)、同年からスタートしたHiGH&LOWシリーズの出演を皮切りに俳優としての活動を本格的に開始。2024年4月からは、初の冠レギュラーラジオ番組「FANTASTICS 佐藤⼤樹のぼっちマイク」の放送がスタート。
ドラマ25『風のふく島』
放送日時:2025年1月10日スタート 毎週金曜深夜 24時42分〜25時13分
放送局:テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ 九州放送
【BSテレ東】2025年1月13日スタート 毎週月曜深夜 24時00分〜24時30分
【福島テレビ】2025年3月放送予定
主演:佐藤大樹(EXILE/FANTASTICS) 駿河太郎 桜井ユキ 豊本明⻑(東京 03) 渋川清彦 北乃きい 本田響矢 三浦貴大 ⻘木柚 大友康平 黒木華 小⻄桜子(話数順)
監督:池田千尋 川元文太(ダブルブッキング) 住田崇 戶田彬弘 二宮健 広瀬奈々子 三木聡
脚本:石黒麻衣 金子鈴幸 川元文太(ダブルブッキング) 熊本浩武 広瀬奈々子 深見シンジ 三木聡
企画・プロデュース:⻘野華生子
WEB:https://www.tv-tokyo.co.jp/kazenofukushima/
X:@tx_fukushima