2019年にコンビを結成し、「神保町よしもと漫才劇場」を中心に活躍するお笑いコンビの9番街レトロは、若手芸人によるバラエティ番組『深夜のハチミツ』へのレギュラー出演、2024年7月にはナイチンゲールダンスとの冠番組『ナイチン街レトロ』がスタートするなど、破竹の勢いを見せている。いま、最も勢いに乗る二人にまとっていただいたのは、カジュアルなアイテムを、あえてドレスパンツやドレスシューズ、伝統的なハリスツイードのパンツなどをミックスしてきれいに着こなす旬のスタイル。9月1日に限定発売され、即完売した京極さんとノリエノモト(nori enomoto)のコラボアイテムをアクセントにした特別なルックとともに、ファッションと衣装、近年の活動について語っていただいたインタビューをお届けします。
9番街レトロ
京極風斗となかむら★しゅんによるお笑いコンビで、2019年結成。神保町よしもと漫才劇場所属。劇場から人気に火がつき、今年7月にナイチンゲールダンスとの地上波初冠番組「ナイチン街レトロ」がスタート。コンビ、個人でのYouTubeチャンネルも話題。
——今日はありがとうございました!『装苑』の撮影の感想や、スタイリングの印象から伺ってもいいでしょうか。
なかむら★しゅん(以下、なかむら)最初に用意してもらった衣装を見た時に、「大丈夫か?これ似合うか?」って思ったんですけど、着替えたら新しい自分に出会えました!ああ、俺これいけるんやって。助かりました。助かったという印象です。
京極風斗(以下、京極) 僕は初めてアイラインを引きまして。こんなにこしょばいんやと思いました(笑)。僕らは、服のことがわかるわけではなくてスタッフさんを信じるしかないので、結構いつも委ねてます。あと、正直ポージングは上手いほうではあります。
なかむら なんや、正直って。
京極 正直バリエーションを持ってるタイプなので。
なかむら そんなもん隠しとけ!
京極 とにかくバリエーションを渡して好きなように選んでもらおうと。できるだけ同じ形の写真を残さんようには頑張りました。
——ポーズも表情もたくさんいただいてありがたかったです!京極さんにノリエノモト(nori enomoto)とのコラボアイテムのこともお尋ねしたいのですが、実物を見て、アイテム自体すごく可愛いなと思いました。ブランドとコラボレーションするという経験はどのようなものでしたか?
京極 初めはブランドイメージとか大丈夫なんかなって。描く絵も、ご自由になんでもどうぞという感じやったんですけど、ほんまに自由でええんかと(笑)。(nori enomotoの)物自体がええので、どこまでやっていいかわからなかったのですが、とりあえず絵を描いて渡して、そっから先はお任せしてあの形になりました。やっぱり仕上がってきたのを見たらめっちゃ嬉しいですね。自分の絵がちゃんと本革の製品にプリントされているっていうのは、単純に嬉しかったです。
——なかむらさんが私服として持つならどれがいいですか?
なかむら タバコ入れるやつええな。
京極 違うよ、あれはスマホケース!まあタバコ入れてもええねんけど。
なかむら あとは、ベルトに小物つけるのもめっちゃ好きなので、コインパースも欲しいなと思いました。
京極 まず小物として便利なんですよね。
——先ほど「ファッションはあまりわからない」とおっしゃっていましたが、お二人がいつか着てみたい服や、してみたい格好はありますか。
京極 街に出る服ですか?
——街に出ず、一度だけ好奇心で着てみたい服でも。
なかむら ハイレグ。
——(笑)!
なかむら 好奇心だけで言ったらハイレグです。
京極 パリコレとかで、それどうやって着んねんみたい服ってあるじゃないですか。オブジェみたいなのとか、デカすぎるジャケットとか。
なかむら レディー・ガガみたいな。
京極 そう。そういうの着てみたいな。自分では手に入れられないような服。
なかむら ほんまに自分ができたらかっこいいなって思うファッションは、日々フォーマル。カジュアルフォーマルみたいな服で日々過ごしたいです、本当は。しかも安っぽく見えないような服で。でもそれは、こういう撮影の機会で着させてもらって買い取ったりしないと始まらない気がするから、一回どっかでやりたいですね。
京極 確かに憧れありますね。毎日スーツのおじさんとかかっこいい。
なかむら もうちょっと年齢いったらそうしたいと思います。
京極 着物もかっこいいな。着物の上品な大人を見たらええなってなります。サボらず、ちゃんと生きてきた人に見える。
なかむら こんな楽な格好(※この日私服で着ていたラウンドネックのTシャツとショートパンツを指しつつ)、多分、あと1年ぐらいしかできないんですよ。
京極 ギラギラした舞台衣装のような服も着てみたいですね。芸人だとそういう服はあんま着られないので、撮影とかで着たらテンション上がりそうです。
——普段の衣装のこともぜひ聞かせてください。9番街レトロYouTubeの「なかむらの新しい衣装について。」の内容が印象的だったのですが、これまで衣装を着てきた中で、今、結果として「これがいいな」とたどり着いたテイストや色、シルエットなどはありますか?
なかむら 今、衣装選びがめっちゃ難しくて。新しくまた作ったんですけど……例えばお金がなかった頃の5万円のスーツって、自分の中ですごく高価だったんです。だけど今、わざわざ5万円のスーツを作ってずっと着ていくって、なんかケチってるような気がしてしまって。けどスーツなんて天井知らずなので、上を見たらえらいことになるじゃないですか。どのラインのものを買ったらいいんだろうって、値段から迷いました。デザインも生地も正直わからないけど、大切なものなのでケチりたくはない。選ぶのが難しくなったなと思いました。
京極 僕はかなり紆余曲折ありましたね。めっちゃゆるいシルエットに憧れた時もあれば、下はスキニーでジャケットだけ羽織ったら完成するようにしたりとか、色々と楽にいける道を探してたんですけど、結局、やっぱりちゃんと採寸して作った、ジャストサイズのものがええなってなりましたね。
僕は少しぴったりめのシルエットがキャラ的には合ってるんです。あと体型がちょっとおかしくて、ウエストがやたら細いんですけど胸板が厚い。だから多分、ゆるいシルエットが似合わないんですよね。胸とウエストのメリハリを出してるほうが、ちゃんとスーツを着てる感じがするんだと思います。ほかはダブルのジャケットが好きなのと、なんやかんや黒かなみたいな感じです。ちょっとフォーマル強めが合うんやと思います。カジュアルに寄るとあんま似合わないんですよね。
——色に関してなかむらさんはいかがですか?
なかむら 緑か青かわからないような色がめっっっちゃ好きです。サブの衣装みたいなのもいっぱいあるんですけど、スーツはその色にするって決めてます。
——絶妙な色味ですよね。生地から選んでいるのでしょうか?
なかむら 選びました。なかなかない色で、生地を取り寄せてもらったりして選ぶのにもすごく時間がかかりました。僕があの色で衣装を作り出した頃、周りには(あの色の衣装の芸人は)いなかったんですけど、いつの間にか山ほど増えて、それだけちょっと引っかかってます。
——京極さんは、えんじ色のジャケットの時期もありましたね。
京極 あれも良かったんですけど、色があると飽きてしまうんですよね。あと、えんじは、すがちゃん最高No.1(ぱーてぃーちゃん)がいるので今は着られないです(笑)。パンツがスキニーで、えんじのジャケットを羽織ればクリアっていう衣装は結構気に入ってたんですけど、毎日見てるとやっぱりもうええわってなってしまって。すごい飽き性なのですが、唯一飽きない色が黒なんです。
ただ、最近は衣装をクリーニングに出すタイミングがなくなってきたので、さすがにあと2着くらいは欲しいなと。それなら1着は色があってもいいかなと思っています。
——お話を伺って、芸人さん同士、衣装のかぶらないポイントを探すのは大変なんだなと感じました。
京極 限界がありますけどね。全くキャラが違かったらセーフとかもあると思います。ちょっと近いタイプの芸人だと良くないかな。僕がえんじ色の上下を着てたら、すがちゃんやんって言われすぎるというか(笑)。「いや誰々やん」って言われちゃったらおしまいだと思うんですよ。「それ誰々やん」の「誰々」になれたやつは勝ちやなって思います。
僕らは(衣装が)コロコロ変わるタイプなので、衣装で印象づけるみたいなことはないですけど、売れた時の服がその芸人のイメージになるのかもしれないですね。霜降り明星さんといえば、僕は金ネクタイのイメージが強かったりします。
——奥深くて面白いです。話は変わるのですが、9番街レトロの記念月になる9月になりますね(取材日は8月下旬)。今年ならではだった挑戦を教えていただけますか。
なかむら 9月9日放送で、僕たちだけの番組『9番街テレビ』をCS-TBSさんで作ってもらったのですが、大きなお金もかけてもらっていて、それは去年とは大きく違います。あとは、ポップアップストアを今年は東京だけじゃなく大阪でもやりました。毎年、できるだけ前の年と同じにならないような1ヶ月にしているので、全体的に結構違う気がします。
京極 毎年そうですけど、前の年より時間がないのに、前の年より大きなことをしようとするから、大変になる一方です。だから去年との一番の違いは、スケジュールの融通の効かなさ(笑)。「9番街フェスやります」っていったら、前は優先で(スケジュールを)押さえられたのが、そうもいかなくなってきたっていうのはありますね。制限された準備時間の中で、どこまでフェスっぽくできるかっていう戦いになってきたなと。
——フェスという意味では、単独の時期にライブだけでなくポップアップストアもあるのが面白いなと思います。
なかむら ライブだけだと1ヶ月間何かやっている感じが少なかったので、僕らが稼働していない間も楽しめる場所を置いとけたらなっていうのが元々の発想でした。
京極 それこそ初年度は、YouTube毎日投稿するとか、毎日何かできたんですよ。9月は少なくともそういう期間にはしておきたい。
なかむら 今年も、毎日動画をあげてます!1ヶ月通して何かをやっておきたいっていうのはあって。
京極 毎年9月っていうのをファンの皆さんと約束しておけば、予定を空けておいてもらえるかなっていうのもありますね。毎年これさえ見にきてくれたら、普段は全然そんなに一生懸命見にきてもらえなくてもいいですよ、と思います。
——「深夜のハチミツ」での音楽の企画や、ノリエノモト(nori enomoto)と京極さんのコラボレーションのように、他ジャンルの方とお仕事をする機会については、どのようにとらえていらっしゃいますか?お話を受ける・受けないなどの基準もあれば……。
京極 嬉しいですね。芸人よりも、デザイナーさんやアーティストさんなど他の業種の方のほうが臆せずに「好きです」って言ってくれるんですよ。芸人が誰かに好きですって言うのって、距離感が難しくてめっちゃ勇気がいるんですけど、他の皆さんは芸人に対して堂々と好きですと言ってくれるから、ありがたいなと思います。
なかむら 求められたら全部ありがたいです。現場で「え、呼んでないですけど」みたいな顔されたら途中で帰るかもしれないですけど(笑)。
——どこのジャンルにいっても9番街レトロさんらしく面白くて、活動を拝見するのが楽しいです。
なかむら わー、ありがたいです。そんなこと言ってもらって。
京極 なかむらはサッカー選手の方と最近交流があって、僕はイラストとか文章系だから、完全に運動部と文化部で分かれてて。これがバランスええのかなと思ってますけどね。
発売中の『装苑』2024年11月号では別カットを掲載し、9番街レトロのお二人が唯一無二だと思う芸人さんの衣装や、いつか着てみたい服装などについてインタビュー!あわせてチェックしてね。
photographs : Kaori Akita / styling : Hiromi Nakamoto / hair & make up : Moe Hikida
(京極さん着用)コート ¥71,720 クードス(エドストローム オフィス)/ニット ¥63,800、パンツ ¥97,900 ダブレット(エンケル)/右手につけたリング ¥44,000、左手につけたリング ¥44,000 ヨハン(ティーニー ランチ)、バッグ ¥35,200、パース ¥18,700 ノリ エノモト/ブーツ スタイリスト私物
(なかむらさん着用)ブルゾン ¥79,200 ディスカバード/シャツ ¥33,000 クードス(エドストローム オフィス) /パンツ ¥52,800 リコール(エスティームプレス)/その他スタイリスト私物
【お問い合わせ先】
エスティームプレス
TEL03-5428-0928
エドストローム オフィス
TEL03-6427-5901
エンケル
TEL03-6812-9867
ティーニー ランチ
TEL03-6812-9341
ディスカバード
TEL03-3463-3082
ノリ エノモト
nori.enomoto@rainbowshake.jp