甫木元 空(映画監督、Bialystocks Vo.)に聞く、個展『窓外(Inter face)』。自分の喪失を、見ている人とともに考えること。自分の家族の物語が、普遍的な誰かの家族の物語になること。

映画監督であり、バンドBialystocksのボーカルとして活躍する甫木元 空。2023年11月には、’21年に発表した映画『はだかのゆめ』と同名の小説を新潮社から発行し、それぞれの分野で際立った存在感を放っている。

来る’23年12月16日(土)から’24年2月16日(金)まで、高知県立美術館で『窓外 1991-2021』という展覧会を開く。

’17年から祖父の暮らす高知に移住し、ベースとする甫木元。ジャンルや年齢を問わず、学芸員が推薦した高知ゆかりの作家を紹介する「ARTIST FOCUS」の第四弾として選出され、彼の作品の芯となってきた自身の家族の変遷を見つめ、ありし日の日常風景を撮りためた写真と映像で構成した内容となる。タイトルである「窓外(Inter face)」には、生と死、誕生と別れ、内なる眼差しによる記憶と外からの視点による記録、それを分かつ境界線を意識しながらも融合させる意図が込められる。本人の言葉を借りるとジャンルを「行ったり来たりする人」として表現の世界を拡大し続けている彼に、新しい取り組みについて聞いた。

photographs : Norifumi Fukuda (B.P.B.) / hair & make up:Chiaki Saga /  interview & text : Yuka Kimbara

つらいことを、これを機に乗り越えましたっていう劇的なことは意外となくて、ずっとぬるっと悲しみの感情の中にいる。

甫木元空〈窓外〉より 2023年

――高知県立美術館「ARTIST FOCUS」で展覧会を開くに至った経緯を教えてください。

甫木元:2020年からスタートした第一弾である画家の竹﨑和征さんの『雨が降って晴れた日』展で、僕は竹﨑さんの制作現場に同行し、ドキュメント映像を撮影しました。

Bialystocksでは、これまでの3枚のアルバムのジャケットに竹﨑さんの風景画を使っているので、目にしている方も多いかと思います。この時の学芸員である塚本麻莉さんのキュレーションで、’21年に高知県須崎市の「すさきまちかどギャラリー/旧三浦邸」にて個展『その次の季節』を開きました。1954年、アメリカがマーシャル諸島ビキニ環礁で水爆実験した折に放射性降下物によって被曝した高知からのマグロ漁船に乗船していた漁師の方たちの証言を軸にした内容で、それを経て、ARTST FOCUSで個展をしないかという話をいただきました。

このシリーズは内容に制限はないのですが、やはり高知に関係する内容がいいのかなと考える中で、自分が高知に移住した’17年から母親が亡くなった’21年までの、誰かに見せることを意識せずに撮りためていた写真や記録映像を軸にすることにしました。その4年の体験は映画『はだかのゆめ』や、同名の小説、曲にも反映していますが、今回の展覧会では自分の撮った写真を出しているので、これまでで最もドキュメンタリー性は強いかもしれない。映画、音楽、小説と違って、死者を思っての作品作りではなく、日々の記録ゆえの生々しさや、残酷な面もあるかもしれません。

――具体的にはどういう構成の展示を考えていますか?

甫木元:70数点の写真と、マルチチャンネルの映像インスタレーションとの構成になります。四面の映像チャンネルでひし形の部屋を作り、四方を映像で囲む構成です。写真の展示はそのまま並べるとがんを告知された母が死に向かっていくだけの内容になってしまうので、母の写真の上や横に空や海の写真を置いて、違う要素の写真を組み合わせることで、ストーリー性を持たせ、同時に写っている写真とは違う意味合いが生まれることを狙っています。

普通に歩いていた母が、ある時から杖をつき始めたり、治療で髪が抜けていき、帽子を被るようになったり、彼女の身に少しづつ変化が出てくるんですけど、僕自身、その経過を眺めていて、母親が徐々に高知の自然へと還っていく印象を受けた。その過程で、弟に子供ができ、次なる世代が誕生し、そういう家族の営みの記録と高知の自然を組み合わせた構成となっています。

加えて、僕が生まれる一年前に、父親がホームビデオを購入し、母を撮り始めたときの映像があり、父が撮った1991年の母と自分の撮った2021年の母という、30年を経た時間を対比させています。僕が生まれ、弟が生まれ、父の被写体への興味は母から子供へと移り、母単独の映像の時期が取って変わられるんですけど、子供が生まれる前の夫婦のはじまりの物語と、家族の終わりの話を並列し、見ている方には自由に時代を行き来して貰えればと考えています。

――タイトルの『窓外(Inter face)』に込めた意味は?

甫木元:家族の生と死の話をダイレクトに提示して見てくださいというのではなく、僕自身、この展覧会を観る人と同時に、共に窓の外から覗き込むような構成したいと思いました。どんなに大事な人であっても、月日が経つうちに忘れていくじゃないですか。でも、それって、悪いことでもないのかなと思います。つらいことを、これを機に乗り越えましたっていう劇的なことは意外となくて、ずっとぬるっと悲しみの感情の中にいる。時間が解決する時もあるし、唐突に過去の記録を見て落ち込む時があり、そこには波があります。

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