学生時代を全力で過ごした二人が考える文化の強み 
榎本紀子(デザイナー・パタンナー)、中島さくら(プレス兼ショップマネージャー)

2023.08.14

左から榎本紀子さん、中島さくらさん

文化服装学院服飾研究科を経て服飾専攻科技術専攻に進んだパタンナー・デザイナーの榎本紀子さんと、ファッション流通科出身の中島さくらさんは、学生時代から携わっていた同じ会社で現在も働く。二人の活躍には、文化時代の濃密な時間が関係していました。

photographs: Jun Tsuchiya (B.P.B.)

入学後にぶつかった壁

榎本紀子(以下、榎本) 私は4年制大学を卒業して文化の服飾研究科に入学し、さくらちゃんと同じ時期に文化にいました。ずっとさくらちゃんをインスタで見ていたので、文化で見かけたときは「本物だ」って。

中島さくら(以下、中島) 私も、のりさんのインスタはずっと見ていました! 私がインスタを始めたのは中学生の頃。入学を志望したのも、文化服装学院に通っていた人たちのインスタを見たのがきっかけです。当時は流通科の先輩が、雑誌を自主制作したり、卒業ショーや文化祭でも規格外のことをしていました。情熱のある人たちを見て文化に憧れたんです。

榎本 私はパターンを引くところから服作りを学びたいと思って、文化に入りました。雑誌「Zipper」に出てくるおしゃれな人たちは皆、文化の学生でしたし、『装苑』も版元が〝文化〟出版局。だから洋服を作るなら文化、という刷り込みがあったんですよね。ただ、服装科の2年課程を1年で学ぶハードな学科だったこともあって、入学後、5月くらいに一度つらくなってしまって。

中島 スパルタだったそうですね。

榎本 とても(笑)。でもそのおかげで今があります。分からなくても手を止めずに作り、ダメならやり直す。まずは進め、という気持ちを持てたのは当時の先生のおかげです。

中島 私も入学当初、思うようにたくさんの人とつながれませんでした。けれど夏頃に流通科で行うファッションフェスティバルで同じ科の子たちと仲よくなれて、その後、文化祭の準備期間中にほかの学科の子や先輩とつながることができました。学内のイベントやショーは積極的に参加したほうがいいなって、1年生の頃から感じていました。

榎本 流通科は漫画みたいにキラキラした世界だよね。

中島 私は作る学科の人たちの大きな荷物を見て、本気で制作に来ている感じがすごいなと思っていました! 私たちは〝流通バッグ〟と呼ばれるミニバッグにヒールみたいな感じで学校に来ていたので……。

榎本 かわいい!

学生時代は積極的に

中島 1年生の夏からRRRで販売のアルバイトを始め、学校で学んだことを土日のバイト先で生かしていました。2年でスタイリストコースに進むと先生が課題をほめてくれてビームス クチュールの方を紹介してくださり、お仕事をお手伝いしたことも。のりさんも学生時代からRRRでパタンナーをしていましたよね。

榎本 うん。制作したものや制作過程をインスタに載せていたら、文化の2年目の時に、RRRデザイナーの相羽瑠奈さんから連絡をいただいたんです。課題の合間に引いた3型が、パターンを引いてお金をもらう初めての経験になりました。そのことで、自分がパタンナー向きだと分かったんです。作ったものを発信していくことは大事だと思います。

中島 私たちが学生の頃はコロナ禍で外出制限があり、大好きなドレスコードイベントも中止になって。それで私を含めた数名で企画書を書き、コロナ対策も考えた新たなドレスコードイベントを学校に提案しました。晴れてそれが実施されることになると、先生が卒業生のデザイナーや企業に景品提供の交渉をしてくださって、その景品が豪華でさらに盛り上がったんです。自発的に行ったことに先生方が力を貸してくれたのが心に残っていますし、それは多くの有名な卒業生を輩出している文化だからできること。文化の学生・卒業生というだけで、研修などでどこのお店に行っても人脈がつながりやすいことも経験しました。

榎本 私は、文化で技術を身につけたので、文化には感謝しかありません。あとは設備や施設。ほかの学校では、学内に購買や生地店がなく、ミシンも一人1台ないと聞きます。充実した環境がありがたかったです。学生時代は課題がない夏休みの期間も大事で、その期間に工場見学をするなど、自分で学んでいくとよいと思います。文化の学生です、と言い丁寧にお願いをすれば、工場の皆さんは優しく対応してくださいます。

中島 授業を受けるだけでなく自分から動くことは、後々、仕事にも生きていきます。流通科の学生であれば新たな企画を立ち上げるなど、どんどん積極的に動いてほしいです!

Noriko Enomoto
1996年⽣まれ。共⽴⼥⼦⼤学被服学科卒業後、⽂化服装学院服飾研究科へ⼊学。その後、服飾専攻科技術専攻に進学し、卒業後、レインボーシェイクに⼊社。パタンナーとして活動しつつ、2020年に自身のブランド、ノリ エノモトを開始。

Sakura Nakajima
2000年生まれ。ʼ21年、文化服装学院ファッションディレクター専攻(現・ファッション流通専攻科)卒業。在学中よりショップスタッフとしてRRRで働く。卒業後、レインボーシェイクに入社。

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