「シアー: イヴ・サンローランのトランスペアレントなクリエイション」展より。
パリ16区にあるイヴ・サンローラン美術館。ここは1974年から2002年まで、 “モード界の帝王”と呼ばれたサンローランのメゾンが置かれていた場所。顧客を迎えたサロンやデザインスタジオを再現した部屋などもあり、当時のままの雰囲気を肌で感じられるのが魅力です。オートクチュールの作品をはじめ、アクセサリー、型紙、デッサンなど、所蔵するコレクションは3万5,000点にのぼり、定期的に内容を変えて開催されるコンセプチャルな展覧会も見応えがあります。
デザインスタジオ。本棚や壁に貼られた写真などから、一人のクチュリエの人生が垣間見れる。
サンローランがさっきまで居たかのよう。椅子には白衣がかけられ、机の上には彼のメガネも。
現在、開催されているのは「シアー: イヴ・サンローランのトランスペアレントなクリエイション(Sheer: The diaphanous creations of Yves Saint Laurent)」。イヴ・サンローランの作品にたびたび登場する透け感のある素材に焦点を当てた展覧会です。透明な素材は、身体を覆い、隠し、保護するはずの衣服の機能そのものと相容れないもの。サンローランは、この矛盾に惹かれ、また透明性が持つ暗示的な力に魅了されたのだそうです。
1964年秋冬オートクチュールのイブニングコート(左)と1969年春夏オートクチュールのブラウス。
左から、1970年秋冬オートクチュール、1988年春夏リヴ ゴーシュ、1988年秋冬リヴ ゴーシュのドレス。
1960年代にモスリン、レース、チュールなどを使い始めた彼は、40年にわたるデザイン活動の中で、こうした素材を繰り返し使い、大胆さをもって、女性が自身のボディを主張することを可能にしました。
展示されるドレスを着たモデルの写真やデザイン画も。
展示されるのは、オートクチュールのドレスを中心とした約40点のシルエット。その中には、イヴ・サンローランの歴史を象徴する数々の代表作も含まれています。展覧会の最後を飾るのは、チュールのヴェールをまとったローブ・ド・マリエ(ウエディングドレス)。社会のタブーに切り込んだサンローランの華麗な反抗が存分に感じられる展覧会です。
左のショーケースはオートクチュールのレースのアクセサリー。右は1982年秋冬リヴ ゴーシュのマスク。
モスリン、オーガンジー、レースなど、様々なトランスペアレントの素材のドレスを紹介。
2001年春夏オートクチュールのドレスとその製図。
1983年春夏オートクチュールのウエディングドレス(左)と1994年秋冬リヴ ゴーシュのウエディングドレス。
●Sheer: The diaphanous creations of Yves Saint Laurent
2024年8月25日まで。
Musée Yves Saint Laurent Paris
Photographs : Chieko Hama
Text:B.P.B. Paris