パリで開催中の「IRIS VAN HERPEN. SCULPTING THE SENSES」展より。
フューチャリスティックな作風で知られるイリス・ヴァン・ヘルペンの回顧展「Iris van Herpen. Sculpting the Senses(イリス・ヴァン・ヘルペン、感覚を彫る)」がパリの装飾芸術美術館で開催中。
オランダ出身のイリスは、テクノロジーと職人技術を駆使した緻密なクリエイションを見せる前衛デザイナー。
衣服の定義を超越し、ファッションの境界を広げる彼女は、自然科学やアートからも多くのインスピレーションを得ていて、ミクロの世界から宇宙までをテーマに、まさに感覚を彫刻するような実験的アプローチを展開しています。
この展覧会のために集められた作品は100点以上。それらと関連する現代アートや古美術品を対話させる演出も見どころで、ファンタジーと神秘に満ちた彼女の創造の源に深く迫ります。
展覧会では、11のテーマごとに作品を陳列。写真は『水と夢』のコーナー。水はイリスの創作に度々登場する要素で、カナダ人アーティストのフィリップ・ビーズリーとのコラボによるマネキンにドレス(2010年-’20年)を装着。
写真上:『深海の生命』のコーナー。海の生物を思わせるオーガンジードレスは2020年のコレクション「Sensory Seas」より。下:アーティストのNastya Kuzminaが描いたイリスのドレスのデザイン画。
『生命の力』のコーナー。有機的な形のドレスと共に、蜂の巣を使ったアート作品などを展示。自然界に由来するフォルムに魅了されたイリスは、形態形成と生命の起源となる創造の力をデザインに落とし込んでいる。
イリスに数々のインスピレーションを与えたドイツの生物学者エルンスト・ヘッケルの書物「自然の芸術的形態」(1899-1904年)。
写真上:イギリス人アーティスト、ローガン・ブラウンとコラボレートした2021年のコレクション「Earthrise」より。素材にはレーザーカットしたリサイクルプラスチックを使用。下:ブラウンの繊細なペーパーワーク作品(2023年)。
『骨格の具現化』のコーナー。スケルトン・ドレスは、ベルギー出身の建築家で3Dプリントデザイナーのイザイ・ブロッシュとのコラボ作品(2011年)。
左は、同じくイザイ・ブロッシュとのコラボで作られたカテドラル・ドレス(2012年)。
『共感覚』のコーナー。イタリアのデザイナー、フェルッチオ・ラヴィアーニの振動を表したキャビネット(2013年)と、同じように揺れるような感覚のイリスのドレス(2019年、2017年)。
昆虫の標本やアクセサリーなどを展示する『驚異の部屋』のコーナーでは、イリスの持つ好奇心が垣間見れる。
『暗黒神話』のコーナーには江戸時代の鎧の展示も。その横は、侍の鎧が着想源の一つになった2008年の作品。
『宇宙の旅』のコーナー。写真上:日本人アーティストの荒神明香の作品「コンタクトレンズ」(2023年)とイリスのドレス(2019-’21)の展示。
●IRIS VAN HERPEN. SCULPTING THE SENSES
「イリス・ヴァン・ヘルペン、感覚を彫る」
2024年4月28日まで。
装飾芸術美術館
Musée des Arts Décoratifs
107, rue de Rivoli 75001 Paris, France
公式サイト
Photographs : Chieko Hama(濱 千恵子)
Text:B.P.B. Paris