「A-POC ABLE ISSEY MIYAKE(エイポック エイブル イッセイ ミヤケ)」がパリファッションウィーク中に、特別展示『A-POC ABLE ISSEY MIYAKE: So the Journey Continues』を披露。宮前義之が率いるエンジニアリングチームの最新のクリエイションが、インスタレーション形式で紹介されました。
10月1日と2日にパリで開催された『A-POC ABLE ISSEY MIYAKE: So the Journey Continues』より。
1998年にパリで三宅一生が発表した「A-POC」。そのときに登場したのは、コンピュータプログラミングで服が編み込まれたチューブ状の無縫製ニットで、着る人が好みの形と丈で自由にカットできるという革新的な服でした。こうした着る人が参加するという新しいデザインのあり方や独自のものづくりを継承し、発展させているのが、このエイポック エイブルのチームです。
インスタレーションでは「PRODUCT TYPES(プロダクト・タイプス)」と「PROJECT TYPES(プロジェクト・タイプス)」の二つの活動を紹介。オーケストラの65人の服を手がけた最新プロジェクトのドキュメンタリー映像も初公開されました。
「A-POC」は“A Piece of Cloth(一枚の布)”の意味。写真は、その理念を受け継ぐプロダクトの展示。
一枚の布に、あらかじめ服のパターンとプリーツのデザインが設計されていることがわかる。
指揮者の井上道義氏と取り組んだ最新プロジェクト「TYPE-I MM project」のドキュメンタリー。撮影・編集を担当したのは映画監督の山中有氏。
テクノロジー、職人の手仕事、芸術が一体となり、まさにアンサンブルを奏でるような感動のクライマックスへ。
プロジェクト「TYPE-I MM project」では、ソニーグループが開発した米の籾殻を原料とするTriporous™を糸に練り込んだ衣服を展開。Steam Stretch(スチームストレッチ)によるプリーツを加えることで、さらなる軽やかさと動き易さをもたらしている。このプロジェクトの中から6型のモデルを製品化し、11月1日より販売予定。
「デザイナーがひとりで服を作る時代ではないと思っています。伝えたいのは、多くの人がたずさわり、一緒に作っていくから自分たちも前に進める、ということです」と、熱い思いを語った宮前さん。
異分野や異業種との協業によって進化する彼らの展示は、ものづくりの真髄を見せてくれるものでした。
現代アーティストの宮島達男氏との取り組みによる「TYPE-II Tatsuo Miyajima project」の展示。
横尾忠則氏との協業プロジェクト「TADANORI YOKOO ISSEY MIYAKE」の展示。
デザイナーの宮前さん。
宮前義之(みやまえ・よしゆき)
1976年東京都生まれ。2001年に三宅デザイン事務所に入社し、三宅一生が率いた「A-POC」の企画チームに参加。 2011年から’19年まで「ISSEY MIYAKE」のデザイナーを務め、現在は、2021年にスタートした「A-POC ABLE ISSEY MIYAKE」で、エンジニアリングチームを率いて研究開発に取り組んでいる。
Photographs:濱 千恵子 Chieko Hama
Text:B.P.B. Paris