【速報】第96回装苑賞公開審査会
受賞者決定

2022.06.21

去る、6月21日(火)、第96回 装苑賞 公開審査会が開催されました。

戦後いち早く、デザインの重要性と、新人デザイナーの才能の芽を育てることの必要性を感じた先達の知恵から、『装苑』創刊20周年を記念して1956年に創設された「装苑賞」は、96回で95名の装苑賞受賞者を世に輩出してきました。

審査員はファッションデザイナーのコシノジュンコ(JUNKO KOSHINO)、津森千里(TSUMORI CHISATO)、皆川明(minä perhonen)、廣川玉枝(SOMARTA)、髙島一精(Kazuaki Takashima)、三原康裕(MIHARAYASUHIRO)、森永邦彦(ANREALAGE)、熊切秀典(beautiful people)の計8名。

一次審査のポートフォリオ審査で32組の候補者を選出。その後、対談形式の2次審査を経て半数に絞られた16組が、ランウェイにて各3体のミニコレクションを発表しました。

装苑賞の栄誉に輝いたのは、国際ファッション専門職大学 国際ファッション学部 名古屋ファッションクリエイション・ビジネス学科に在学中の大下彩楓(おおした あやか)さん。テーマは「音戯(おとぎ)」。音が目に見えたとしたら、輪郭を変えながら空間を漂い、戯れるように見えるだろうと感じ、音の重なりや動きを服で可視化し作品を仕上げた。素材に使用した白と黒のチュールの重なりで陰影をつけ、着用した時に体の周りで軽やかにチュールが動くところが特徴。まるで本当に音が見えているかのようなデザインで、審査員から高い評価を受けた。

装苑賞佳作1位に選ばれたのは、文化服装学院 ファッション工科専門課程 アパレルデザイン科に在学中の山口空叶夢(やまぐち あとむ)さん。虫の生命力が持つ美しさや存在感に魅了され、特徴を捉えた構造や色彩にこだわり制作。柄模様は絵の具を用いて布に直接描き、プリントでは表せないような力強さを表現した。佳作2位は、香蘭ファッションデザイン専門学校 ファッションデザイン専攻科を卒業し、現在は会社員として勤務している行廣賢太(ゆきひろ けんた)さん。デニムの美しい経年変化の様子を時間の旅のように感じ、レーザー加工でデニムの表面を削り、時の流れをグラデーションで表現した。また、行廣さんはPR01.特別賞も受賞し、W受賞に輝いた。

NEW ENERGY特別賞に選ばれたのは、服装作家として活動中の大石龍弥(おおいし りゅうや)さん。工場と人をつなげたいという想いから、立体的なドローイングとメッキフィルムなどの素材を組み合わせ、無秩序な造形と秩序を守る人の心が共存する空間を表現した。

その他、史上初の審査員特別賞が選出され、文化服装学院 Ⅱ部服装科に在学中の高山 光(たかやま ひかり)さんが受賞。儚いからこそ表現できる紙の美しさや強さ、偶発性に興味を持ち、自らの手ですいた手漉き紙を用いて紙の跡を表現した。

トークセッションの様子

さらに、第96回装苑賞公開審査会の特別ゲストとして小池百合子東京都知事が登壇し、文化服装学院の学生とトークセッションを行った。

受賞作品

装苑賞
大下彩楓「音戯(おとぎ)」

装苑賞
受賞者:大下彩楓(おおした あやか)
テーマ:「音戯(おとぎ)」
コンセプト:空間を漂う音が、戯れているように思えたことから、「音戯(おとぎ)」をテーマに目には見えない音の重なりや動きを服で可視化したいと考えました。 素材には主に白いチュールを使用し、多方面から黒いチュールで陰影をつけています。動くたびに違う表情を見せる生地の重なり合いで、音が変化していくさまを表現しました。

プロフィール:2002年生まれ、岐阜県出身。2020年、国際ファッション専門職大学 国際ファッション学部 名古屋ファッションクリエイション・ビジネス学科入学。現在、同大学 三年次 在学中。

装苑賞 佳作1位
山口空叶夢「BUGS」

装苑賞佳作1位
受賞者:山口空叶夢(やまぐち あとむ) 
テーマ:「BUGS」
コンセプト:虫の生命力が持つ美しさを服で表したいと考え、その生態を細部まで観察し、特徴を捉えた構造や色彩にこだわりました。1体目のケープコートは、暖かい地域に生息する巨大な蛾のヨナグニサンからインスピレーションを得て、染色した羊毛にニードルパンチと布用の絵の具を用いて、羽の模様のグラデーションを描きました。

プロフィール: 2001年生まれ、東京都出身。2020年、文化服装学院 ファッション工科専門課程 ファッション工科基礎科入学。現在、同専門学校 ファッション工科専門課程 アパレルデザイン科 三年次 在学中。

装苑賞佳作2位/PR01.特別賞
行廣賢太「Time Distortion」

装苑賞佳作2位/PR01.特別賞
受賞者:行廣賢太(ゆきひろ けんた)
テーマ: 「Time Distortion」
コンセプト:経年変化しながら、絶え間なく魅力を放ち続けるデニムの姿から影響を受け、まるで理想の自分を探して時間を旅しているようだと感じ、魅力の変遷を表現したいと思いました。「アナモルフォーシス」という錯視に挑戦。プリントしたドット状の渦巻きが、斜めから見ることにより、立体的に浮かび上がる仕掛けになっています。

プロフィール: 1999年生まれ、山口県出身。2021年、香蘭ファッションデザイン専門学校 ファッションデザイン専攻科卒業。現在、会社員として勤務。

NEW ENERGY特別賞
大石龍弥「FACTORYSICAL」

NEW ENERGY特別賞
受賞者:大石龍弥(おおいし りゅうや) 
テーマ:「FACTORYSICAL」
コンセプト:工場と人を服でつなぎたいという思いで、広島市環境局中工場に注目。ベルトコンベアやプラントの配管など工場の機能美から着想しました。1体目の生地はメッキフィルム、サテン、 オーガンジー、ラメチュールを使い、曲線的なパーツはミシンで、直線的なバーツは手作業で仕上げ、人が工場空間をまとう様子を表しています。

プロフィール: 1988年生まれ、広島県出身。2012年、イスティトゥト マランゴーニ マスター ファッションデザイン ウィメンズウェア卒業。現在、服装作家として活動中。

審査員特別賞
高山 光「KAMINOATO <紙の跡_痕跡>」

審査員特別賞
受賞者:高山 光(たかやま ひかり)
テーマ:「KAMINOATO <紙の跡_痕跡>」
コンセプト:紙の弱さや繊維感、透明感、そして紙が生まれる“紙すき”の工程の美しさに興味を持ち、その特徴を生かしながら、よろいのような強さを持った服を作りたいと考えました。服に使用した手すき紙もすべて自ら制作し、生地としての強度や防水性、柔軟性を試しました。手すき紙以外の部分にも、紙に関わる素材を使っています。

プロフィール:1990年生まれ、東京都出身。2021年、文化服装学院 Ⅱ部服装科 入学。現在、同専門学校 二年次 在学中。

公開審査会、生配信の様子はこちら

さらに第96回装苑賞受賞作品や公開審査会の模様は、2022年7月28日(木)発売の『装苑』2022年9月号でも詳しくお伝えします。ぜひご覧ください!