アーティスト xiangyu × 「PERMINUTE」デザイナー半澤慶樹
RIVERSIDE STORY 渋谷川編 -川のゴミから作る衣装展-

2022.09.01

『装苑』3月号の特集<好きな人と、好きなこと。>で、頭の中を刺激し合う2人としてご登場いただいたアーティストのxiangyuと「PERMINUTE」デザイナーの半澤慶樹さん。かつて文化服装学院ファッション高度専門士科の同級生で、現在は音楽とファッションという異なる場で創造をする2人の共通点は「フィールドワーク」。自然との関りや研究からクリエーションにつながるヒントを得ている。

そんな2人が、「風土が違えば、人の暮らしや生活スタイルも違うはず。現在の人々が失いかけている、その風土と文化を掘り起こしたい!そのために川を知り、そこにあるゴミから衣装を制作し発表することで、誰かが川のことやごみのことに興味を持つきっかけをつくりたい」とこの春から始めた共同プロジェクトが<RIVERSIDE STORY 渋谷川編>である。彼らの後輩にあたる、文化服装学院ファッション高度専門士科に在学する1年生から4年生までの約20名と共に、半年に渡って取り組んできたプロジェクトの集大成である川のゴミから作った衣装作品が、9月2日から恵比寿KATAにて展示される。ここでは、その展示を前に、制作の中盤に、学生と共に熱心に作業をするxiangyuと半澤さんを訪ねて聞いた、<RIVERSIDE STORY 渋谷川編>への思いをお伝えしたい。

―――ライフワークとしてフィールドワークに取り組み、そこから思考への刺激や学びを得ているお二人。『装苑』3月号での対談で、今回の<RIVERSIDE STORY 渋谷川編>につながるお話をしてくださいましたね。その後スタートした<RIVERSIDE STORY>のことお伺いさせてください。

シャンユー:今回のプロジェクトの前に、実は、5年ほど前、ちょうど文化服装学院を卒業したばかりの頃に、お花見で出たゴミから服を作ったことがあるんです。その時は、社会的にもお花見とゴミ問題はセットになっているイメージで、どうせゴミが出るのなら、拾い集めたもので何かやれたらいいなと漠然と思い、「私は、服が作れる!」と実行しました。
『装苑』3月号で(半澤)慶樹との対談取材のお話をいただいた際に、その時のことをふと思い出しました。その頃、ちょうど(半澤)慶樹たちと一緒に街を歩いているときに「エリアによって落ちてるゴミが全然違うって面白いね」と話していたこともあって。渋谷駅の辺りには、コンビニで売られてるような小さいお酒の瓶が落ちてたりするし、恵比寿に向かって行くと、工事現場があるせいか残飯が入ったままのお弁当がそのまま捨てられてたり。場でゴミが違うなら、街を歩きながらゴミを拾えばその街の輪郭が分かってくるし、拾ったごみを捨てるだけじゃなく、自分たちのやり方で創作物を発表できたらいいなと思い立ち、私たちと馴染みのある「渋谷川」でやってみようよ!とこのプロジェクトを提案しました。

半澤慶樹(以下、半澤):「ゴミから服を作る」ということ自体は、他の人たちも試してることではあるので、「ゴミから服を作る」ことに興味があったというよりは、むしろ、ゴミを拾うの面倒くさそうだなって思ってたんです。だけど、よくよく考えてみると、ゴミを拾ってそのゴミからものを作るということ以上に、その拾ったものから何かを考えたり、何かを感じる行為が大事なんじゃないかと。しかもそれはフィールドワークに紐づいていて、土地性があるってすごく面白いし、小学生が夏休みの自由研究でやるようなことも近いなとも思いました。やらなくてもいいことだけど、何かやらずにはいられないようなこと。
シャンユーからこのプロジェクトを提案されたときに、丁度読んでた本が、レビ・ストロースという哲学者の『野生の思考』。ブリコラージュという概念のことなんかが書いてあって、そのものの本来の役割じゃないけど、他の分野では別の使われ方をしてるとか。そういうガラパゴス感みたいなのが面白いなって最近思ってて。
これだけ便利な世の中だからこそ、あえて不便なことをやってみる面白さがあるなって。デザイナーとしてブランドのコレクションの作品を作る時は「こういう服が作りたい」からスタートしてるけど、今回は全く違う。集まったものとみんなの意見の中で輪郭がぼんやりと生まれていくような。見えない目的地にみんなで考えながら向かっていく感じが面白いなと思っています。

ゴミ拾いの様子

シャンユー:元々、文化の後輩たちと一緒に何かをつくってみたいなという気持ちはあったんですけど、ファッションを学びに来てる学生たちだし、こういうコラボレーションはイレギュラーな内容ですよね。私たちの勝手な先入観もあって、学生たちはまだ二十歳前後だし、ゴミを扱うことに抵抗があるんじゃないかと思い込んでたんです。落ちていたゴミは、触りたくないくらいドロドロな状態のものもあるけど、それがこの街の輪郭の一つだから、見過ごせないなとも思っていて。でもゴミ拾いを始めた初期の頃に感想文を書いてもらったら、ゴミ拾い楽しかったとか、またやりたいとか、渋谷から恵比寿の方を通って広尾の方に向かって歩いたら、ゴミの種類が違うことがわかって面白かったって書いてくれた子もいて。その段階で、私たちの思い込みは覆されて、すでにめちゃくちゃ収穫だなと思いました。
これは楽しく最後までみんなでやり通せるなって。手伝ってくれる学生たちみんなも頑張ってくれて、どろどろになったゴミも一緒に拾い、それをきれいに洗って乾かして、生地のもとにする。そこまでの過程は、本当にすごく大変だしきつかったです。先ほど、装苑さんに生地のもとになるゴミを見て「想像していたよりもずっと綺麗だね」って言っていただいたんですけど、そう言ってもらえるくらいのところに、ようやく辿り着けました。だからこそ、今はこうしてそのゴミを生地として考えられることがとても楽しいんです

半澤:僕らだけなら、「あのゴミ取りたいけど遠くて取れないね」であきらめちゃうこともあるけど、ある日、学生のひとりが、超長いマジックハンドを持ってきて一発で解決しちゃった(笑)! 途中から、学生たちも、どういうゴミを拾ってくるかみたいな大喜利になってきたり、その行為を楽しめるなんておもろいなと思ったりもしました。
ゴミの収集や洗浄は、業者に頼んでしまえば簡単で楽なのかもしれません。それをあえて自分たちでやるからこそ、見えることや気づきがあります。あ、なめくじがいるんだなとか、そんなことさえ分からなかったりしますから。色々なことをすっ飛ばして、出来合いの材料からのモノ作りとは違い、ここでは、思考の幅とか瞬発力みたいなのがすごく問われるんです。それを面白がれる人たちが今このプロジェクトに集まってくれてるってことでもあるんですよね。
汚いものを触りたくないのは、あってあたりまえだけど、それでも手をかけて時間をかけてやってきたものだからこそ、こんな風に作りたい、こうしたいっていう思いや発想がどんどん出てきてるように感じます。

シャンユー:あのゴミ、絶対取るぞ!みたいな意地とかも出てきたりして。

半澤:そういうのが楽しい!

シャンユー:そうそう!今回参加してくれているのは、私たちが卒業した学科の後輩たちですが、このプロジェクトには、より多くの人たちと一緒にゴミを拾って、街の輪郭をみんなで考えたいなと思っていたので、その思いが形になったのはめちゃくちゃラッキーだったなって思ってます。

学生の発案によりアイロンの熱で色のグラデーションを作ったレシート。

半澤:ゴミから生地をつくる時にも、学生たちのアイデアがすごいんですよ。レシートは感熱紙なので熱で色が変わるんですけど、レシートを使って色のグラデーションを作っていくとか、僕らじゃ思いつかないことをね。

シャンユー:すごいですよね。身近に置いてないと気づかない。

半澤:プロジェクトの進め方としては、基本的には僕らがいくつかトップダウン的にここで考えたアイデアを学生たちに共有して、そこからさらに発展したみんなのアイデアのピースを集めて編んで行っています。とはいえ、僕らと学生たちはここではあくまで対等です。例えば、こういう素材を拾いました。じゃあそれをどういう風に使ったらいいだろうか?という宿題を学生たちに出したとしたら、僕らも同じように宿題に取り組んで、その翌週とかの授業でみんなで答え(アイデア)を持ち寄って、考えたり行動してみたりしています。
ファッション産業だと、ディレクターみたいな人たちからのトップダウンで何かが起こっていきますが、この拾ってきたゴミって誰のものでもないから余計に、僕らだけでなくみんなの目から見たアプローチもどんどん入れていきたいし、その余白がポテンシャルになります。いろんな人の目と手と考えが入ってるけど、誰のものでもない。だけど確実に、自分のものもそこに入ってるってものができたらすごい面白いと思いませんか? 作り方としても、服作りの新しい試みの一つにもなると思っています。
だから、学生たちのアイデアは、どれも否定はしないし、いいのがあったらガンガン取り入れていく。そういう瞬発力とある種のノリみたいな、お祭りみたいな感じの感覚がクリエーションには結構大事なので、そういう空気感の中で何ができるかを楽しみにしていますし、何を作るかよりも、どうやって作っていくかを大切にしています。

―――先ほど、「コロナ禍で人に会えなくて心が寂しくなってしまった。そんな時に、このプロジェクトがスタートしてすごく嬉しかった」とは、「課題がすごく忙しいんだけど、だからこそこのプロジェクトがあってよかった。頭の切り替えになるし、自分自身の作品のための勉強にもなっています」と学生さんの声がありました。偶然のタイミングかもしれませんが、今回のプロジェクトからいいことが自然派生しているようですね。人と一緒に考えるということが抜け落ちてしまった時間を経て、みなさんの姿から、改めて人と一緒に考えることのエネルギーを感じます。

シャンユー:本当ですか。泣いちゃいそう(感激)!たくさんの人たちと物を作るということは、実は難しいことでもあります。もしかしたら、私と慶樹の2人で作ったら早く終わるかもしれないし、楽かもしれません。でも、それでは、このプロジェクトの意味がないんです。誰かに頼まれたわけでもなく、自分たちがやりたいと興味を持って始めたことだから、いかに面白がってやれるかなんですよね。だから学生たちが、こういう風にやってみました!こんなアイデアどうですか?って言って来てくれると、すごく刺激を受けますし、やりたいことは試してみよう!ってなります。
予想以上のいい方向にこのプロジェクトが広がって、進んでいることを実感しています。だから、みんなで何か一つのものを作り上げるということが大切なんですね。学生たちは、課題だけでも大変なのに、その傍らでこれをやってくれているので、多分すごくきついと思う、みんな。

半澤:僕自身にとってもすごく刺激になってます。企画としては思いつくようなことかもしれないけど、実際にやる人はなかなかいないんですよね。時間がないとか面倒くさいとか、色んな理由をつけてやってこなかったことを、今こうやってできてるってのは、何かすごい価値のあることだと思います。今回一緒に作ってくれている学生たちを見ていると、僕は在学中に、これだけのことができてたかな?って何かそれにすごく感心しちゃいますね。

シャンユー:プロジェクトを共にする以上は、お互いに得るものがある方がいいと思ったからそう言ってもらえて嬉しいです。家でも試作をしたりしてるんですけど、失敗もいろいろありますね。
缶を切ってそれを編んだ素材があるんですけど、この太さだと駄目とか。それならベストの太さは?と思考錯誤の連続です。自分の中での改良点もあるし、テクニックも必要なんです。ニードルパンチもそうなんですけど。失敗の時間の方が断然長くて、でもそれをやらないと、学生たちにも宿題やってきてって言ってるくせに自分がやってないなんて意味不明じゃないですか。時間をかけ頭を使って、それでも失敗もして、そういうのを経て良いものがみんなで作れれば最高! どんなものでも、全ての制作においてよりよいもの、伝えるものを創るためには、失敗は必要ですね。それはこのプロジェクトでも痛感しています。
今はとにかくつらくて、楽しい。もうめちゃくちゃ苦労して出たこのアイデア最高ってなるし、制作に対しての愛が生まれる。愛おしいですね。9月2日からの展示のときにはすごくアップデートしたものを見てもらえると思います。

半澤:一方で、このプロジェクトが、自分自身の生活を見直すきっかけにもなってる気がします。他人が捨てたごみを見ると、自分も意外とものを捨ててるんじゃないかなって。日常の中で簡単に捨てずにどう使えるか考えるようにもなりました。

シャンユー:私は今まで以上にゴミをちゃんと分別するようにもなりましたね。ゴミがきれいに分別されていれば、リサイクルも含めて最終的にもっといい着地ができるんじゃないかと。

半澤:今回のプロジェクトの制作目標としては、洋服として4、5体は完成させたいと思っています。取れるゴミの量や種類によって変わってくるかもしれませんが。それを集中して作っていくのが一つと、あと展示としては、制作した洋服だけではなく、僕らがフィールドワークしてきた時に拾ったものとか、感じたこととか、そういう足跡みたいなのが一緒に展示できたらいいですね。ただのファッションの展示とか服があるよってだけじゃない、何か学びがあるものにしたいなと思っています。

シャンユー: 今回は、渋谷川を研究対象にした、RIVERSIDE STORYの第一弾ですが、最終的にナイル川とかまでいったら超いいなって思っているんです。そこで見つかるものは渋谷川とは全然違うはずなんですよ。現地では川をお風呂代わりにもしたりするし、凄いと思う。そのときは絶対、慶樹も連れて行きます(笑)。

半澤:やばそうですね(笑)

シャンユー:(学生たちに向かって)その時には、みんな行く?みんな行こうよっ!

学生たち:行くーーー!!!(笑)

シャンユー:渋谷はこうだったけど、他の川なら?と、比較ができると、土地の風土や人々の暮らしの違いが分かって面白くなりそうですよね。今回は文化服装学院の学生のみなさんが参加してくれてますけど、洋服の製作に全く携わったことがない人でも参加できるようなプロジェクトになってもいいとも思いますね。

―――例えば、ナイル川に行ったとして、そこから、シャンユーチームが作るものと現地の人たちが作るものにも違いがあるでしょうし、その両者がミックスしたらどうなるかと考えると、可能性は無限大ですね。

シャンユー:それが本当の文化の交流だと思いますね。言葉にして「やりたい」って言ったことは大体実現するので、ここで言います、「やりたい」(声大)!私たちが今やれる方法で世の中に発信することがすごく重要なんです。自分たちなりの方法で思いと考えを形にして発信し、着地させたいです。みなさん、ぜひ会場に、渋谷川で拾ったゴミから紡いだ私たちの作品を見に来てください!

【RIVERSIDE STORY 渋谷川編】 
展示期間:2022年9月2日(金)~9月6日(火)*初日、最終日トークイベントあり
会場:恵比寿KATA
   東京都渋谷区東3-16-6 LIQUIDROOM 2F
入場料:無料
主催:RIVERSIDE STORY/協力:文化服装学院、KATA

時間:
9月2日(金) 17:00〜18:30 *TALK EVENT 19:30〜20:30
9月3日(土)〜9月5日(月) 13:00〜20:30
9月6日(火) 13:00~18:30 *TALK EVENT 19:30〜20:30

公式サイト:http://kata-gallery.net/schedule/riverside-story_20220902
Instagram:@riversidestory_shibuya 

〇作品の一部と映像が、Rakuten Fashion Weekのメイン会場「渋谷ヒカリエ」9階エレベーター横に展示されます。こちらもお見逃しなく!


<RIVERSIDE STORY>
川やその周辺に落ちているゴミを拾ってそのゴミから服を作るプロジェクト。
第一弾は、渋谷川編。
日々街並みが目まぐるしく変わる渋谷。
この街をひっそり流れているのが渋谷川です。駅周辺の都市開発と共に一部暗渠(あんきょ)となったこともあり、渋谷に馴染みのある人でもどこを流れているか知らない場合もよくあるそうです。
渋谷ヒカリエの出口からほど近い、川のスタート地点から流れに沿って歩いてみると、飲み終わったコーヒーカップやサンドウィッチの包装フィルム、 タバコの吸い殻などが物陰に隠すようにあちらこちらに落ちているのが目に入ります。 川の近くにはコンビニが多く、そこで手に入る物のゴミが多いことに気がつきます。もしかしたら、 川を取り巻く環境によって落ちているゴミの種類が違ったりするのかも?落ちているゴミからその周辺を行き来する人たちの動きや街の成り立ち、つまりその土地に根付く文化の輪郭が見えてくるのかもしれないと考えるようになりました。

xiangyu
アーティスト。2016年に文化服装学院ファッション高度専門士科を卒業。’18年にアーティスト活動をス開始。自身の衣装を自ら制作したり、学生の頃に始めた、軍手を使ったクリエイションをライフワークとして継続。‘21年には映画『スパゲティコード・ラブ』に出演、さらに主演映画『ほとぼりメルトサウンズ』では主題歌「LIFE!」も担うなど、多方面から注目を集めている。
Instagram:@xiangyu_dayo
youtube:@official xiangyu

Yoshiki Hanzawa
1992年生まれ、福島県出身。文化服装学院ファッション高度専門士科及び、ここのがっこうを卒業。2016年より自身のブランド、PERMINUTEをスタート。‘18年春夏コレクションでランウェーデビュー。ファッションデザイナーの他にも、広告ビジュアルのディレクションやファッションディレクションなども手掛け、幅広い表現で活躍している。
Instagram:@_perminute_

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