オランピア・ル・タン自身が手がけるブランド「Hotel Olympia」の
ラインナップをご紹介。オランピアのインタビューも!

オランピア・ル・タンにインタビュー!小さくて可愛いものが好きという、リミットのない愛情を貫くこと。

社会にどう見られるかということやルールよりも、自分が好きなものを着ることが大切だと思います。――オランピア・ル・タン

SO-EN 2022年に続いて2回目となる伊勢丹 新宿店での「Hotel Olympia」ですね。今回の見どころをぜひ教えてください。

Olympia 伊勢丹からお声がけいただいて、このようなポップアップができることに感謝しています。私は、長年、父と一緒にブランドのクリエイションをしていたのですが、3年前に父が亡くなり、今回は父の作品を展示することで、この場所で父とまたコラボレーションすることが叶いました。それが今回のポイントで、私自身も大切に思っていることです。

SO-EN 今回展示されている、お父様のピエール・ル・タンさんの1960〜‘70年代の作品はオランピアさんにどのような影響を与えたのでしょうか?

Olympia 父の影響はとても大きかったんです。小さな頃から父が絵を描くところをそばで見ていましたからね。父は非常に細かく描き込みをする作風で、それが、私が刺繍をするときに細かいステッチを重ねていくことにも影響したと思います。あとはテイストにも影響を受けています。今回、新たにロゴを手がけてもらったオーレル・シュミット(Aurel Schmidt)が好きなのも、父の絵のテイストに近かったからだと思います。

オランピアの父、ピエール・ル・タンの作品

オーレル・シュミットの作品

SO-EN 確かに、お父様の絵とシュミットさんには通ずる世界がありますね。シュミットさんとの出会いやエピソードを教えていただけますか?

Olympia 彼女とは15年前、パーティーで出会いました。私も彼女も昔はよくパーティをしていたんです(笑)。いつもグラフィックやイラストは父に頼んでいたので、父が亡くなった今、誰に「Hotel Olympia」の絵を描いてもらったらいいだろう?と悩みました。そこで、キュートだけどダーク、ガーリーだけどちょっとふざけた感じもある彼女の絵のテイストがぴったりだと思って、コラボレーションしたい!と思ったんです。

SO-EN 「Hotel Olympia」はパンデミック禍で生まれたブランドでしたね。その期間、どんなマインドセットがオランピアさんの中にあったのでしょうか?

Olympia  私は、パンデミックで約2年間ニューヨークから出られなくなってしまったんです。渡航制限が緩和されたあとも、ビザの制限のためなかなか外に出られず、大好きな旅が全くできなくなってしまいました。その中で、旅をしてホテルにいる時間がすごく恋しくなってきたんです。そうした期間中は、家の中を充実させることに気持ちが向きました。良い服やヒールの靴を買うよりも、良い灰皿やゴミ箱、可愛いピローケースなどーーそういうもので家の中を満たしたいと思ったんです。そうした中で、自然と「Hotel Olympia」というライフスタイルブランドを始めたいと考えるようになりました。

SO-EN そうした期間はクリエイターとしてのオランピアさん自身にどんな影響を与えましたか?

Olympia いい影響があったと思います。家の中にいるしかないとき、お菓子作りをするようになったんです。作ったケーキが素敵だと思ったら写真を撮って、そうしたらそれがグラフィックのアイデアにつながっていきました。今までとは違うクリエイションのリソースが生まれたんです。

SO-EN  どんな状況でもクリエイションにつなげる姿勢や、身近なリソースを発見するのは素敵なことですね。オランピアさんがずっと大切にされている手刺繍への思いも聞かせていただけますか?今回の「Hotel Olympia」でも見られました。

「Hotel Olympia」のビーズ刺繍のクッション  ¥38,500

Olympia 手刺繍は私にとってすごく大切な表現方法で、無心でリラックスできる作業でもあり、本当に好きです。始めたきっかけは、子供の頃に祖母が教えてくれたからでした。昔、インドを旅したときに、ムンバイにいるイタリア人の刺繍職人マックス・モデスティに出会いました。彼は父と同じように刺繍で細かな表現をする職人で、そのことに親和性を感じ、ぜひ一緒に仕事をしたいと思ったんです。素晴らしい技術を持ったマックスとの出会いで、彼と一緒にオランピア・ル・タンの刺繍のバッグを作ることになりました。

 前回の「Hotel Olympia」から、伊勢丹には刺繍を用いたアートピースを作ってほしいとリクエストされていました。私はアーティストではなくデザイナーなので初めは戸惑いましたが、今回は、マックスとともに3つの刺繍のアート作品と、クッションを作っています。

精緻なビーズ刺繍のアート作品

SO-EN 精緻な刺繍や細かなディテールは私たちもすごく好きです。ハンドクラフトを大事にするものづくりは、日本人にも通じるところがありますが、オランピアさんが好きな日本のハンドクラフトはありますか?

Olympia ありがとう!そう言ってもらえて嬉しいです。
 日本の伝統的なクラフツマンシップには感銘をいつも受けていて、好きなものはたくさんあります。絞り、藍染め、木組みの技術、帯締め、洋服のデザイン、ウール……。今回の来日では「東京都庭園美術館」に行って、そこにある家具や小さな銀器に興味を持ちました。日本でしか作れないと思うような、細やかで小さなものに惹かれます。

ミニバッグ ¥11,000

SO-EN 小さくて可愛いらしいものは私たちも大好きですが、同時に、私たちの好みにはリミットが課せられることもあり、「大人になったらミニスカートは履けない」「可愛いものが好きな気持ちを卒業しなきゃ」という社会的なプレッシャーを感じることがあります。オランピアさん自身は自分のスタイルを貫くことと年齢を重ねること、社会の視線についてどのように感じていますか?

Olympia その問題については、とても共感します。私自身もリミットを感じることはもちろんあります。私は小さくて可愛いものが大好きですが、もう大人と言われる年齢で、好きだと思うデザインでも着られないと感じるものもあります。それでも、社会にどう見られるかというよりも自分が着たいものを着たいです。
 ただ、その中でもリミットがあるなと思ったことがあります。2回目に来日したとき、仕事で出会った知人が厚意で貸してくれた部屋に行ったら、部屋中、何もかも、トイレカバーまでハローキティで埋め尽くされていたんです!私はハローキティが大好きですが、さすがに驚いて物事にはリミットも必要ね、と思いました(笑)。
 今お話ししたのは特殊な例ですが、私は社会にどう見られるかということやルールよりも、自分が好きなものを着ることが大切だと思います。

SO-EN 今のお話でとても勇気づけられましたし、オランピアさんのクリエイションからはいつも夢をいただいています。

Olympia 売れるものを考えることも大切ですけど、私は、私が作りたいものを作り、着たいものを着ることを一番大切にしています。
 そして机で勉強をしているよりも、働いて手を動かすことが大切だと思っています。それが『装苑』や「装苑ONLINE」を読んでいる皆さんに一番お伝えしたいことです。外に出て、人に会い、エキシビションや様々なものを見て刺激を受け、自分も作ることを試す。あなたの手とイマジネーションを存分に使ってください。

Hotel Olympia  ホテル オランピア
期間:2023年4月28日(金)~5月29日(月)
場所:伊勢丹新宿店本館2階 ISETAN TNE SPACE
   東京都新宿区新宿3丁目14−1  
時間:10:00〜20:00
WEB:https://www.mistore.jp/store/shinjuku/shops/women/the_space/shopnews_list/shopnews031.html
Instagram:@isetan_the_space
        @thehotelolympia

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