『装苑』2023年5月号 掲載
photographs:Jun Tsuchiya(B.P.B)
ファッションデザイナーの仕事ってどんなもの? そのリアルを探るべく、新進気鋭のデザイナー、yusho kobayashiの小林裕翔さん、KIRIKOMIのソン・セイさん、nori enomotoの榎本紀子さん、PERMINUTEの半澤慶樹さんの4名の作業場に潜入!ものづくりに欠かせない基礎工程から、各ブランドならではの個性を感じる作業まで、クリエイティブな彼らのとある1日に密着しました。第3回目の今回はnori enomotoデザイナーの榎本紀子さんのとある1日を覗かせてもらいました。
ブランドプロフィール
norienomoto(ノリエノモト)● デザイナーは榎本紀子。コンセプトは「絵になる衣服、小物」。シグネチャーアイテムは、公共デザインから着想を得た規則正しく波打つウェーブモチーフの小物やバッグ。ミニマムなデザインかつ、カラフルでアイコニックな配色に多くのファンを持ち、伝統の染色技術を使ったバッグやアーティストとのコラボレーションアイテムなど、幅広いコレクション展開も特徴。
Noriko Enomoto ● 1996年生まれ。共立女子大学被服学科卒業後、文化服装学院服飾研究科へ入学。服装専攻科技術専攻に進学し、卒業後、レインボーシェイクに入社。パタンナーとして活動しつつ、2020年に自身のブランド、ノリ エノモトを開始。
Instagram @norienomoto_official
ポップアップストア開催に向けての新作制作・準備の1日
デザイン画は描かず、アイデアを思いついたらまずはパターン用紙にパターンを描いてみる。いいと思ったものは少し厚めの紙にもう一度描き、切ってシルエットを確認。納得が行けばサンプルを制作。縫製士さんなどの意見も反映させながら、紙上で修正を重ねていく。パターンを描く上で意識しているのは、自分にとっての気持ちのいい曲線であるかどうか。
生地見本帳から素材と色の組み合わせを考える。リサーチとして生地屋さんに足を運ぶこともあるという。生地が決まると一度サンプルを作り、チームと共有しブラッシュアップしていく。最近は、紫と黄色や赤と青など、反対色が好きだという榎本さん。形がアンニュイでフェミニンなので柔らかな印象になりすぎないように色でバランスを取るように意識しているとのこと。ふちに使うリボンは縫いやすいように、曲線部分は伸縮性のあるもの、直線部分は伸びにくいものを選んでいる。
定番の型の生地とリボンは、組み合わせをすぐに確認できるように、スクラップブックにまとめている。
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