世界で活躍するファッションデザイナーの発掘を目的に、昨年から東京都が始めたふたつのファッションコンテストをご存知でしょうか？　大賞賞金100万円、審査通過者は、審査員を務めるファッションデザイナーによるワークショップに参加できるなど、その魅力の高さから服飾専門学校に通う学生たちが今最も注目しているのが、Next Fashion Designer of Tokyo 2024（以下NFDT）とSustainable Fashion Design Award 2024（以下SFDA）です。

NFDT2024は、東京から未来を担う若手デザイナーを生み出し、世界で活躍できる人材に育てることを目的に、都内在住又は在学の学生等を対象としたファッションデザインコンテスト。SFDA2024は、日本の伝統文化である着物の生地等を活用した新たな作品を世界に発信する事を目的に、都内在住又は通勤・通学しているアマチュアデザイナーを対象としている。9月29日の応募締め切り前に、ふたつのコンテストの素晴らしさを広く伝えるトークセッションが、東急プラザ渋谷にて開催。SFDA2024で審査員を務める篠原ともえさんと、NFDT2024 インクルーシブデザインの審査員であるNPO法人ウィーログ代表理事の織田友理子さんが登壇しました。

司会者から、まずは前回について尋ねられると篠原さんが「サステイナブルをテーマにした、着物の生地の活用によるコンテストの審査を務めましたが、とにかく沢山の応募を頂きました。実際の作品を直接見て決めていきましたが、そのなかでもお母さまが残してくれていた、ご自身が子供の頃に着用していた袴の再利用から生れたというバッグにぐっときちゃいました。着物の素敵なところは”継いでいく”ことができること。着物の美しさはもちろんですが、仕立て直せることなどを改めて伝えられるという意味でも素敵な作品を選ばせていただきました」と応え、織田さんは「東京都さんがとても素敵で面白い取り組みしていることを、少しでも多くの人に知ってもらいたくて参加させていただきました。私は車椅子利用者ですが、インクルーシブデザイン部門の審査を通じて、こうきたか！という、学生さんたちの柔らかい頭による提案が面白かったです。障害があるとファッションを楽しむことは難しいのですが、NEXTという名がついたコンテストらしく、障害者に向けた解決策をファッションの視点で捉えていくことはとても素敵なことです」と、それぞれが審査を担当する視点で応えてくれました。

また、東京における、現在のファッションやサステイナブルに関する質問に対して篠原さんは「サステイナブルって、難しいように感じがちですけど、とてもクリエイティブだなって思うんです。何もないところから、ゼロから考えるデザインではなくて、いにしえから続く物を見直すことだと考えたら、時を超えて素晴らしい文化と再び触れ合うことを大切にしながらデザインを考えられる、とても素敵な時間をくれるものだと思っています」と。
織田さんは「コンテストにはいろんなアイデアが溢れていて、昨年の審査でファッションの楽しみ方が変りました。障害者であっても、楽しんでいいんだ！って思わせてくれることがとても嬉しくて。ファッションってどうしても二の次になってしまっている障害者が多いので、誰でも人生を楽しめるんだということを、ファッションが教えてくれるんだと。学生さんが考えてくださるダイナミックな提案からは、勇気をもらえますね」

篠原さんは、学生の頃からたくさんのコンテストに挑戦していたそうで、デザイン会社を設立した今現在もその姿勢はかわらないそう。ファッションのコンテストには制限が多く数も限られていることを知る篠原さんは、東京都がファッションデザインのコンテストを作ったことがとても嬉しかったそうだ。織田さんもサステイナビリティや着物にとても興味あるそうで、どんな状況も楽しめるのがファッションのよさであるという前提で、サステイナブルとインクルーシブを解決するデザイン提案も楽しみにしたいとのことでした。

前回に続き審査員も務めるお二人は、次回の期待を問われると、審査員として未来を想像しながら選ぶこと、また、デザインの提案は海外の学生のほうがダイナミックなので、日本人らしい礼儀正しさもいいが、学生のうちだからこそできるものを見せてほしい。それらを受け入れる深い懐で審査するので大胆にお願いします！との答えが。また、興味があれば、とにかく作ってみること。そうした動きを後押しをするコンテストになれば嬉しいと話すのは、お二人が自分の思いを形にすることで、始まる何かがあることを知っているからだ。

その後、昨年度の受賞者である3名の学生が参加。前回のNFDT2023を、第96回の装苑賞公開審査会にて、小池都知事の話しから知って参加したというNFDT フリー部門大賞 高山 光さん（左）、インスタで知ったというSFDAウエア部門大賞　成瀬擁汰さん（中）、学校の先生に教えてもらったというSFDAグッズ部門大賞　染谷崚斗さん（右）と、そのスタートはそれぞれ異なるが、都が掲げるテーマ設定と、内容から大きなコンテストであることを知り、これなら！と参加したとのこと。

それぞれの学生の作品などについては、上のサイトを見ていただくとして、コンテストを通じて、自らの作品をプロのデザイナーを始めとする審査員にみてもらうことの意味と価値を知った3名は、これからも国内に限らずコンテストに挑んでいきたいという話も。

学生たちと話した後で、篠原さんは「夢を持った学生さんたちと語らうことで、コンテストに参加することとは、自分をみつめることにもなることがよくわかりました。これを機に多くの人に東京都が開催するコンテストに興味を持ってもらえたら嬉しいです」と話し、織田さんは「学生が成長していくことを、こうしてみんなで見守っていくことは素晴らしいです。東京都はそのテーマにインクルーシブを掲げてくれましたが、困難を抱える人の解決と、ファッション性を学んでいく場となるこのコンテストなら、デザインにより新しい解決が生まれる。障害者としても、とても嬉しくて楽しみなコンテストです」と話してくれた。

2022年の作品（右）　NFDT フリー部門　東京都知事賞・大賞　高山光「生 －揺蕩い（たゆたい）―」　（左）NFDT インクルーシブデザイン部門　東京都知事賞・大賞　河村奈央子「The Dancing Baobab （ザ ダンシング バオバブ）」

2022年の作品（右）SFDA ウエア部門　東京都知事賞・大賞　成瀬擁汰　「重景纏（ジュウケイテン）」（左）　SFDA ファッショングッズ部門　東京都知事賞・大賞　染谷 崚斗「プリーツバンブーバッグ」

photographs：Josui Yasuda (B.P.B.)

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＼エントリー締め切りは9月29日！／

東京都主催のファッションデザインコンテスト
Next Fashion Designer of Tokyo 2024／Sustainable Fashion Design Award 2024
審査員はこの方たち！

Next Fashion Designer of Tokyo 2024 審査員
審査員長は東京藝術大学長 日比野克彦氏、最終審査員にはファッションディレクター 原由美子氏、ANREALAGE 森永邦彦氏、ゲスト審査員にはCFCL 高橋悠介氏、審査員にはWWD JAPANサステナビリティディレクター 向千鶴氏、株式会社三越伊勢丹 伊勢丹新宿店マネージャー（ファッションディレクター） 神谷将太氏と、様々なカテゴリーのトップランナーが集結。業界のトップランナーたちに直接審査をしてもらえるという、とても贅沢で貴重な体験ができます。

インクルーシブデザイン部門
上記に加え、NPO法人ウィーログ代表理事 織田友理子氏、NPO法人ユニバーサルファッション協会理事長 山口大人氏の両名が専門的見地から参加。一次審査通過者には、障害のある方を交えたワークショップも実施予定。

―――NFDT募集要項はこちらから

Sustainable Fashion Design Award 2024の
審査員はこの方たち！

最終審査員にはLVMHモエヘネシー・ルイヴィトン・ジャパン株式会社代表取締役社長 ノルベール・ルレ氏、デザイナー／アーティスト 篠原ともえ氏、審査員にはMALION vintageデザイナー石田栄莉子氏、Children of the discordance 志鎌英明氏、LVMHウォッチ・ジュエリージャパン株式会社ショーメディビジョン取締役 ジェネラルマネージャー 蒲谷直子氏、FASHIONSNAPファッションディレクター 小湊千恵美氏、株式会社三越伊勢丹 伊勢丹新宿店リ・スタイル バイヤー 橋本航平氏、ゲスト審査員に株式会社メルカリ取締役会長 小泉文明氏と、ファッション業界の様々なカテゴリーのトップランナーが集結。

―――SFDA募集要項はこちらから

都内在住又は在学の学生等を対象としたコンクール「Next Fashion Designer of Tokyo 2024」（フリー部門・インクルーシブデザイン部門）と、日本の伝統文化である着物の生地等を活用した新たな作品を世界に発信するコンクール「Sustainable Fashion Design Award 2024」（ウェア部門・ファッショングッズ部門）。2023年の締め切りは9月29日です。

興味のある方は、ぜひご応募ください。