装苑賞受賞デザイナー、「CFCL」高橋悠介さんのインタビュー

2022.04.01

世界で活躍するデザイナーの輩出促進をするべく設けられた「FASHION PRIZE OF TOKYO」。第4回目の受賞は「CFCL」の高橋悠介さん。2月末にパリでの発表を終えて凱旋帰国し、3月17日に東京であらためて新コレクションを発表しました。2009年にニットの作品で装苑賞を受賞し、今もニットの可能性を追い求めています。「CFCL」は、Clothing For Contemporary Life(現代生活のための衣服)の頭文字。3Dコンピューター・ニッティングの技術を駆使したクリエーションを披露しました。

Photographs:Jun Tsuchiya(B.P.B.)

―パリでの発表はいかがでしたか?

コロナ禍でオミクロン株なども出てきたタイミングでしたので、直前までパリに行くかどうかは悩んでいました。発表するにしてもフィジカルなのか、違う形にするのかなど。結局3泊5日の弾丸ツアーで行ってきました。日本ではメディアに取り上げていただき名前が浸透してきている感覚はありますが、海外では一からブランドを伝えていく必要があると思いました。「CFCL」の服を知らない人たちに向けて丁寧に説明することが出来たのはとても良かったと思っています。まだ成功か失敗かを判断する前の段階で、ようやくスタートラインに立てたような気がします。

―「ISSEY MIYAKE MEN」のデザイナー時代と比較されますか?

バックグラウンド的なことを聞かれたときに前職の経験を話すと “なるほどね”という答えは返ってきていました。それを知っている人もいれば知らない人もいるのですが、基本的に誰も知らないということを前提でやっています。

―高橋さんは2009年に装苑賞を受賞されています。その時の作品もニットでしたね。ニットの魅力はどこに?

ニットは従来カジュアルな素材として捉えられてきました。オケージョンのためのドレスは大体が布帛で作られています。要するにニットのドレスというものはほとんどマーケットになかったんです。そういう意味ではすごくチャンスがあるのかなと思います。それと糸そのものや、コンピュータープログラミングニットの技術は、日々進化しているので、まだまだクリエーションの余地があります。今の時代、スタイルに関してもダイバーシティやインクルージョンという言葉が議論に上がるように、ほかと差別化したりトレンドを生み出すことが難しくなってきています。そうなったときにニットのドレスといえば「CFCL」だよね、と人々の認識を作り出すことがビジネスを拡大させる上で重要と考えています。

―3Dコンピューターニッティングの素晴らしいところと、今後さらに開発しなければならない点は?

良い部分は1本の糸から服が出来上がるので裁断や縫製がほとんど必要なく、コスト的にも削減ができ、何よりもごみが出ないところ。生地の場合はカットして縫製して、差別化するためにプリントをしたり刺繍を施したり、生地に何かしら加工することで要素をプラスします。全く異なるアプローチによるクリエーションを可能とするのが3Dコンピューター・ニッティングの魅力でもあります。ニットの特性によって着用においてもリラクシングであり、体系も選びません。今の時代にマッチしているのかと思います。一つ具体的な課題を挙げるとすれば、ニットは暖かいイメージで冬のアイテムを連想させてしまうこと。これは季節感に限った話ではないのですが、既存のニットのイメージをいかにして拡張していくか、常に先進的なイメージでクリエーションを試みています。

―独特のフォルムやボリューム感はどこから?

「CFCL」にとって新たなスタートラインの一つであるパリという舞台で発表するにあたり、ブランド設定当初から発表しているポッタリーという陶器のような丸みを帯びたシルエットのものと、フルーテッドというギリシャ建築の柱のようなシルエットを持つシリーズに焦点を当ててみました。プログラミングで形成されたニットはシームレスで軽やか。それはニットドレスの強みです。コレクションのメッセージ性を考えて、ファーストシーズンから一貫して「Knit-ware(ニットウェア)」というコレクションテーマを設定しています。着るという意味を持つ「Wear」ではなく、器の意を持つ「Ware」を用いたテーマです。そこに今回はアウトラインという言葉を加えてみました。性別や年齢、人種、さまざまな概念の二元論的な立ち位置を見つめ直し、世の中をアップデートするデザインへのチャレンジです。一人一人の個性に、人体の形状を超えたアウトラインを描くコレクションを提案しています。
今回東京では、マネキンを並べた背景に、スタジオや雪山で撮影した写真や動画を分解しながら組み合わせた映像作品を発表しました。映像自体はデジタルですが、3面のスクリーンに映像を投影し、スピーカーは10,4サラウンド。14個のスピーカーから別々の後を出し、音を立体的に作っています。フィジカルとメタフィジカルが行き来するような新しい体験型のインスタレーションとして表現してみました。

―デザインするうえでイメージする人物像はありますか?

ミューズはいませんが、ペルソナはいます。それは、変化し続ける時代の中、自分が何者かを問い続け、ポジティブに時代を生きる人です。
「CFCL」が今伝えるべきことは、人が着た時の服が揺らめく美しさより、クリエーションの根底にある思想やブランドのアティチュードであると考えています。

高橋悠介(たかはし ゆうすけ)
1985年 東京生まれ。2009年 文化ファッション大学院大学在学中に、第83回装苑賞受賞。‘10年 同大学修了後、三宅デザイン事務所入社。’13年に「ISSEY MIYAKE MEN」のデザイナーに就任。‘20年、「CFCL」設立。

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