文化服装学院 ファッション高度専門士科× L’OREAL PROFESSIONALによる卒業ファッションショー。13名の学生デザイナーに注目。

ショーの様子

世界年間売上1位を誇る一大ビューティー企業であるロレアルグループ。その中核を担うヘアブランド L’OREAL PROFESSIONALのサポートを得て、文化服装学院 ファッション高度専門士科による卒業ファッションショーが開催された。

今年で10年目となるこのコラボレーション企画では、厳しい学内選考を勝ち抜いた学生にインセンティブとして、第一線で活躍しているサロンのヘアクリエイターの方々と組み、ポートフォリオ撮影及び卒業ファッションショーのhair&make-up Creationのサポートを受ける。

2021年度ファッション高度専門士科4年卒業ファッションショーSupported by L’OREAL PROFESSIONNEL

学生デザイナーが4年間の学生生活の集大成として創り上げたこのショーにはどんな想いが込められているのだろうか。また卒業後に描く、未来を聞いた。13名のデザイナーの作品紹介とともに彼らの想いをここに。

photographs : Josui Yasuda (B.P.B.)

13名の学生デザイナー紹介

井上 碧海×ZENKO
テーマ:holy forest
「樹木葬」という岩手県にある知勝院が始めた雑木林づくりと墓地が合体した、新しい形の埋葬方式を参考にしたコレクション。死者が花木として生まれ変わり、様々な花が咲き乱れ、死者が自然に溶け込み、一つの森になる様を表現したいと思いました。それぞれの花の柄や色、フォルムを衣装に取り入れ、ヘアメイクでは作品一体一体を別物の花木に見立て、それぞれが際立つようなヘアメイクをサロンさんにお願いしました。卒業後はファッションだけに捉われず、ファッションと他の分野をミックスした企画をしていきたいと考えています。卒業制作をここまで創り上げられるのはファッション高度専門士科だけなので、コースに迷っている方がいたら是非オススメします!
Instagram:@inthesea_blue22
ZENKO:https://www.zenko-hair.com/

川浦 明夏葉×mille
テーマ:COMPASS
17世紀初頭、アメリカ大陸の領土開拓へ挑んだイギリス軍とネイティブアメリカンによる戦争の実話を元に制作。素材選びにもこだわり、開拓者には綺麗で高級感のあるレザー・金属的なアクセサリー、先住民にはシワなどが多いナチュラルな風合いを持つレザーや木、骨のアクセサリーを作りました。骨は実際にフライドチキンを食べて調達し、煮沸消毒後に乾燥させてアクセサリーに取り入れました。ショーの構成では青と赤に分けて戦っている様子、開拓者が新大陸を探索する所から最後に皇女が戦争を止めて平和になる所までを表現しています。卒業後は舞台衣装の仕事に就けることが決まって、高校生の頃からの夢が叶った今、私がやりたい事は関わる全ての人が笑顔になれる衣装の制作です。
Instagram:@kupu_fashion
mille:https://www.1001mille.com/

中野 真紘×グレース
テーマ:G×MINE×S
人に造られた神々。崇めるための神聖視とそれがある限り、神であり続ける異物たちの、互いに一方的で奇妙な相互関係を表現。それぞれの作品に同じテーマと全く別の物語を持たせ、一つのコレクションとしてまとめました。神々しさが単純な神秘感で終わらないように、恐ろしさを表現したいと思いながら構成を考え、衣装やアクセサリーは手作業にこだわりました。金色の羽を一枚一枚作って縫い付けた翼のケープや、手で編み込んだ腰飾り、一粒ずつ縫い付けたビーズ。スプレーやグルーガンを利用して銀が溶けた腕のようなグローブを作ったのは特に楽しかったです。今回、たくさんの人のサポートをいただいたので、感謝の気持ちが一番大きいです。
Instagram:@nkn_da.at
グレース:http://www.salon-de-beaute-grace.com/

五十崎 梨夏×クレス
テーマ:memento “Quelle est votre madeleine?”
*プルースト効果による香りから思い出す、懐かしい、素敵な思い出をコンセプトに制作。1ルックごとに背景を設定し、その情景を想像してデザインに落とし込みました。ボリューム感のあるリアルクローズで、ルックの大半は紐やリボンなどを垂らして、動きが出るよう工夫しています。基本的にアシンメトリーで、どの角度から見ても飽きないようなデザインを意識しました。卒業後はアパレル会社に就職するので、まずはそこで学校では学べなかったことを実践的に学んで経験を積みます。そして自信がついたら、また自分が心から好きだと思えるものを作って発信していけたらいいなと考えています。*特定のにおいが、それに結びつく記憶や感情を呼び起こす現象
Instagram:@___8rina3___
クレス:http://www.clesc.co.jp/

松永 隆之×JCB
テーマ:DERBY
スポーツがテーマなのでスポーツウェアで用いられる素材を使ったり、色使いをしました。スポーツ選手のようなヘアスタイル、さらにヘアバンドなどを使ってスポーティーさを出し、メイクにはワールドカップなど大きな大会で顔にペイントしているファンをイメージして、目もとにそれぞれのlookの色でメイクをして貰いました。音効、照明、映像も選手入場をイメージしたものに。卒業後はスポーツブランドのパタンナーとして就職するので、選手がより良いパフォーマンスを発揮出来るような服を作りたいと思います。スポーツによって多くの人を感動させる一員になりたいです。
Instagram:@_princetaka620_
JCB:https://www.biguine.com/en/

細井 嗣未×forever
テーマ:scribbler
コンセプトはstreet chic(ストリートファッションにシャツ地やスーツ地といったシックな要素があるアイテムを組み合わせた)。衣装に合わせたカバンや靴下がこだわりです。音効では元の音源の背景に、都内の街中の音を組み合わせて制作し、車の音や改札の音、テーマに合わせたスプレー缶の反射音などの細かな音が紛れているので注目して聴いてほしいです。映像は繁田さん(@vg_shigeta)に制作していただきました。音効に合わせて映像を切り替えたり、渋谷の街の落書きなどをメインに撮っていただきました。卒業後はグラフィックデザインの仕事に就くので、今回のプライベートコレクションで得た経験を活かして、精一杯頑張りたいです。
Instagram:@scribbler_jp
forever:https://www.forever-hairsalon.jp/

平林明夏×UNIX
テーマ:Normal emotional state
今まで学んできたメンズ服の知識と趣味である映画からインスピレーションをうけて表現。ヴィンテージSF映画をテーマに服を制作しました。映画のイメージに合わせてスピード感、抑揚のある音効に薄暗いステージに白のみの照明で、ストーリー性とヴィンテージ感を表現しました。卒業後はパタンナーとして就職するのでリアルクローズの知識を増やしていきたいです。
Instagram:@garinton_meimei
UNIX:https://www.unix.co.jp/

キム ジヒョン×un ami
テーマ:ON YOUR MARK
On your markは陸上競技の合図で使われる言葉。このコレクションは4年間の学校生活が全てではなく、これからがスタートという思いを込めて制作しました。スポーティーモダンをテーマとし、派手すぎないルック作りを心掛けました。ヘアメイクはスポーティーなムードを出す為に全体的にウェットヘアで仕上げ、メイクは今回のキーカラーでもあるグリーンをポイントで入れました。一番頑張ったところは映像です(https://youtu.be/r2mmE313T4Q)。たくさんの方に手伝っていただき、映像を完成することができました。今回のコレクションで自分の企画力がとても伸びたと思います。卒業後は自分の作品を作り続け、少しずつ準備をして5年以内に自分のブランドを出すのが夢です。
Instagram:@carpe.diem.jh 
un ami:https://un-ami.jp/

青柳 陽菜×STRAMA
テーマ:DRUZY
テーマである天然石をビジュアルイメージにし、スラッシュキルトや絞り、デジタルプリントなど布から作るということにこだわりました。メイクはゴールドとシルバーをメインに使って統一感を出しつつ、ヘアスタイルはマクラメ編みを参考にしています。ショーは天然石の博物館をテーマに音楽を制作してもらい、スポットライトをイメージした照明、シンプルながらもそれぞれのルックが平等に映える歩行案を考えました。卒業後は様々なブランドの企画を通して、もっと自分が着たい服を自由に着られて、着た人が自信を持てるような服を作っていきたいと思っています。
Instagram:@druzy_2000
STRAMA:http://strama.jp/

ユ ジヘ×TKS
テーマ:Rapanui
自然や動物が好きで、普段見ていた自然環境のドキュメンタリーからインスピレーションを得ました。派手で大きなボリュームが、必ずしも人の目を引くというわけではないと思っていたので、ヘアメイクも歩行案も、照明も音効も衣装に集中できるよう比較的シンプルにしました。卒業後は自分のブランドを作りたいです。表現したいことを表現でき、人々が素敵だと思えるブランドを作りたいのと、もともと芸術高校の美術科を卒業していることもあり絵を描くのが私にとってはとても自然なことなので、ファッションを頑張りつつ、絵も描き続けたいです。これからもどんな分野でもやりたいことを諦めず、やり続けられる人になりたいと思います。
Instagram:@youjihae__designs
TKS:https://tks-beauty.tokyo/

石川 泰生×TONI&GUY
テーマ:The BALL
1980年代のボールカルチャーからインスピレーションを得たコレクション。メンズにドレスを着せて、華やかな演出をしています。今回はTONI&GUYさんがヘアメイクを担当してくださり、本当に感謝しきれないほどの仕上がりでした。唇にスパンコールのリップを施したり、ウィッグを加工して被せたりと私のわがままを優しく受け止めていただいた最高なヘアメイクでした!ライティングに関しては4年生と3年生の照明担当の友人と何回も話し合い満足のいく照明になりとてもよかったと思います!4年間、ファッション高度専門士科で得た技術を最大限に活かしたコレクションになりました。卒業後は文化学園大学院大学(BFGU)に進学し、私自身のブランド立ち上げへの準備をしようと思っています
Instagram:@ya_su_o_
TONI&GUY:https://toniguy.co.jp/

友田 愛梨×総美
テーマ:Amaryllis(アマリリス)
アマリリスの花のように、かわいいだけではない女性の強さや美しさを表現しました。ピンク×黒の組み合わせで、ピンクは女性のかわいさ、黒は強さをイメージし、また、ピンク色もくすみピンクを使ってかわいいだけではない印象を持ってもらえるようにしました。私はこのコラボレーションのショーに参加したいと思い、他科からファッション高度専門士科に編入しました。理想通りのヘアメイクをヘアサロン「アトリエ」さまにして頂けて心から光栄に思っています。卒業後は、学生の時から受け付けているアイドルの衣装制作オーダーを引き続きやっていきます。自分が制作した衣装によって、アイドルが光り輝く瞬間を作り上げていきたいです。
Instagram:@___u.u23
総美:https://www.banet.jp/

天羽 恵理紗×ASCH
テーマ:ID
日系人として、自分のアイデンティティをアートやファッションを通して表現したコレクション。私は7歳の頃からファッションデザイナーになるのが夢でした。初コレクションは両親へ感謝の気持ちを込め、自分のアイデンティティについてのコレクションを制作したかったので、夢が叶った今、嬉しく思います。一つ一つの事にこだわりがあって大変でしたが、チームワークのおかげで全ての想像通り、そして理想以上に出来上がって感動しました。卒業後はしばらく営業部で実際に服がアートからどのようにビジネスになるのかを、世界観やコレクションの発想や企画の仕方を学び、いつか自分のブランドを立ちたいと思います。頑張れば、夢は叶います!
Instagram:@eli.tamo.design
ASCH:https://www.asch.jp/index.html

日本ロレアル株式会社
プロフェッショナル プロダクツ事業本部ブランドエクスペリエンスマネージャ
千葉龍太郎さんコメント
今年は作品撮りからステージまでのストーリーがしっかりと展開されていました。今まではドレススタイルが多かったのですが、今回はリアルクローズが戻ってきた印象を受け、メイクに関してはカラフルだったり、アートメイクに近いリクエストを学生の皆さまから多くいただきました。普段、美容師はサロンスタイルで作り上げるところを、このコラボ企画を通してアーティスティックな作品を創るというチャレンジを経験できました。学生がしっかりと想い描いている方向をリードしていただいたため、プロの美容師が人生の先輩としてサポートし素晴らしい作品が実現できたと思っています。
また、学生の皆さまの年齢に近い美容師がサポートさせていただきましたが、美容師は服飾学生と同じように専門学校を卒業して美容師になっています。美容学生は国家試験を受けるために学生の期間を突っ走るわけですが、服飾学生は自己表現を極めるためにやり切る期間がある。そんな文化の学生を見ると彼らは学生の頃を思い出し、最後まで自分の表現を追い求めていて「羨ましい」という声を多く聞きます。マンネリ化してしまう美容師1年目・2年目の方々にも刺激をいただき、美容側での表現者になりたかった気持ちをもう一度、思い出させていただけた良い機会にもなりました。

L’OREAL PROFESSIONAL
WEB:https://www.loreal-professionnel.jp/top.html
Instagram:@lorealpro_education_japan

文化服装学院 ファッション高度専門士科
4年間で、クリエーション・生産関連・ファッションビジネスについて幅広い知識と技術を習得。卒業時には大学卒業と同等の高度専門士の称号が与えられます。卒業生の多くはファッション界のスペシャリストとして高い評価を得ています。
WEB:https://www.bunka-fc.ac.jp/course/fashionkoukasenmon-katei/fashion-koudosenmonshi-ka/
Instagram:@bunka_kosen_official

L’OREAL PROFESSIONNEL 卒業ファッションショーバックステージサポート企画
「Future Talent Support PROJECT」とは
世界年間売上1位を誇る一大ビューティー企業であるロレアルグループ。その中核を担うヘアブランド「ロレアル プロフェッショナル」では若きクリエイターの育成を目的として、イギリスのセントラル・セント・マーチンズなど有名ファッションスクールの卒業ファッションショーや若手デザイナーのコレクションのhair&make-up Creationバックステージをサポートしている。日本では例年、スクール支援部門において文化服装学院が選出され、ファッション高度専門士科の卒業ファッションショーが支援の対象となっている。