「ANEVER」第2弾は、移ろって消えてしまうものへの愛おしさや、留められない儚いものへの想いを表現。

2021年3月より展開している、アンリアレイジのデザイナー、森永邦彦さんとオンワードとの協業により誕生したニューブランド「ANEVER(アンエバー)」。

アートディレクションに吉田ユニさんを起用し、平手友梨奈さんをミューズに制作したビジュアルクリエイションも話題となったブランドの、4月展開商品のビジュアルが公開された。


「ANEVER」のVISUAL MOVIE APRIL。どの瞬間を切り取っても同じ表現はない平手友梨奈さんの優雅さと力強さを感じるダンスで、季節や自然が刻一刻とその姿を変える「移ろい」を伝えている。回ったときのスカートの広がりが、咲き誇る花を象徴しているよう。音楽を手掛けるのは、サカナクションの山口一郎さん。


「一瞬=A NEVER」と「永遠=AN EVER」という対極の言葉を共存させた「ANEVER」というブランド名が物語るのは、”枯れていくはずの花が最も美しい一瞬をずっと眺めていられるファンタジーを日常に”というコンセプトだ。

透明な樹脂の中に、生きている花々が見せる一瞬の美しさを永遠に閉じ込めたジュエリーやバッグなどのアイコニックなアイテムをはじめ、プレーンなトレンチコートのボタンにも使用するなど、リアルクローズの中にもアンリアレイジの非日常感をさりげなくプラスしている。



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【SEDUM】サーキュラーキャミソールドレス¥42,900(予約商品)



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【SEDUM】フラワーボタントレンチ コート¥49,500(予約商品)


また、今回の協業について、森永さんは次のように話している。

「ANREALAGEのブランド設立初期から樹脂のなかに花を閉じ込めたボタンを制作してきました。ボタンから派生した樹脂アイテムのシリーズ自体は、ANREALAGEでもある種の定番となりました。樹脂のプロダクトの可能性を、もっと広げたい気持ちがある一方で、コレクションブランドとしては、つねに新しい挑戦をすべきで、同じことを繰り返し取り組み続けることには、少し違和感がありました。

自分のなかでも折り合いがつかない、相反する感情を抱いていたタイミングで、オンワード樫山さんと出会いました。オンワード樫山さんも、ぼくらが培ってきた樹脂シリーズに魅力を感じてくれて、協業の話になり、新ブランド「ANEVER」としてスタートすることにつながりました。

ANREALAGEとANEVERはブランドコンセプトの考え方やものづくりへのこだわりは似ていますが、プロダクトの打ち出し方は大きく異なります。ANREALAGEでは「非日常」を重視し、誰も想像したことのないものや、出会ったことのないものづくりを意識しています。そのため、強く共感してくれる人に届いてほしい思いがあります。一方でANEVERは「日常」の要素が強く、日々の生活に花を添えるようなプロダクトを身につけてもらいたいと考えています。誰の日常にも寄り添うプロダクトとして、より多くの人に届けたいという思いがある。だからこそ、生産や販路において、強い基盤と知見がある大手アパレル企業と手を組むべきだと思いました。

そういった意味でも、0から1をつくることが強みのANREALAGEと、1を100にする力を持つオンワード樫山さんが組めば、両社にとってこれまでにない製品をたくさんの人に届けられると感じています。お互いの強みをうまく活かしながら、ANEVERを育てていきたいです。」

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【BURNET】エコトート バッグ 各¥5,940(右・コスモス、左・ひなげし)


このような思いで誕生したニューブランドの「ANEVER」。4月からはさらに新しく、エコバッグシリーズも登場した。バーネットの花言葉「移ろいゆく日々」から発想したエコバッグは季節ごとに変わる花々を、4月のひなげし、9月のコスモスのように誕生月の花から12か月分展開。それぞれ花一輪が構成する色の面積の比率を解析し、デザインに取り入れている。

新しくて日常でも使えるニューアイテムと、こだわりぬいたニュービジュアルを月ごとに展開し、ブランドの世界観を丁寧に伝えることで、一瞬を永遠にする「ANEVER」のフィロソフィーを時間をかけて届けていく手法も面白い。これからどのようなアイテムやビジュアルを展開していくのか、ブランドが発信する新しい発想にも期待したい。


「ANEVER」の4月ビジュアルは、アンリアレイジに入社した第94回装苑賞候補者・岡本尚美さんの活躍にも注目!

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白いドレスの上にクリアフラワージャケットを羽織って撮影に挑んだ平手友梨奈さん。このクリアジャケットこそ、装苑賞受賞者の岡本さんが森永さんからオファーを受け制作した作品だ。


今回、「ANEVER」の新商品はもちろん、広告ビジュアルの中にもう一つ注目してほしいポイントがある。

年に一度、『装苑』誌上で行われる日本で一番歴史の長いファッションコンテスト「装苑賞」では、アンリアレイジの森永邦彦さんも、2019年の第93回から審査員として参加し、新人の発掘や育成に力を注いでいる。そんな中、2020年に行われた第94回装苑賞で大賞に輝いたのは、森永さんが選出した候補者・岡本尚美さんの作品だった。装苑賞受賞後、アンリアレイジに入社となった岡本さんが、今回、「ANEVER」のビジュアルへの制作参加を果たしたのだ。

この取り組みについて、森永さん、岡本さん両名にお話を伺った。


ーー広告ビジュアルの起用に至るまでの経緯を教えてください。

岡本尚美(以下、岡本) 装苑賞が縁となり、アンリアレイジに入社が決まり、アシスタントデザイナーとして働く事になりました。実践を通じて仕事を学んでいく中で、今回の衣装制作に参加するお話をいただきました。「ANEVER」のブランドコンセプトを聞き、キーワードは花と透明感と伝えられて制作チームに入りました。

まず初めに、アシスタント業務から始まるかと思いきや、いきなりの広告の衣装だったので驚きました。 以前より憧れのあったアンリアレイジから誕生する新しいブランドのスタートに、自分が製作で参加出来るとは夢にも思いませんでした。 プレッシャーも大いにありましたが、新たな挑戦の機会をいただいたので頑張りたいと思いました。


森永邦彦(以下、森永) アンリアレイジの服づくりの現場では、上下関係や、経験の有無は一切関係なく、0から1が生み出せるかどうかが全てです。そのためには、チームを信じることが第一歩だと思っています。経験がなくとも、生み出せるものはある。そう信じて、すぐに実践させて現場に出すことを大切にしています。

先輩達と同じ目線でものをみて、同じ土俵で闘わせて、何か彼女も気づいていない得体の知れない創造の種を引き出すことが、1番彼女自身の成長につながると思っています。彼女の持ち合わせた美意識とブランドの思想の狭間でゆさぶられながら、新しい服を生み出せる日まで、自分を信じて粘り強く頑張って欲しいです。


――作品を作るうえで交わされた二人のクリエイション作業はどのようなものだったのでしょうか?


岡本 「ANEVER」は本物の花を樹脂で固めたものになっている為一見同じに見えますが、それそれ違うものであるということを伝えられました。それを踏まえて、衣装も花のコサージュを全て手作業で制作し、本物の花が持つような表情の違いを表現しました。

森永 僕にとっては原点に立ち戻るような作業。今は遠く見えなくなりそうな灯台の光の下にかえるような作業。着る人のことをかんがえて、手をつかって。はじめて服をつくった時のように。一方、岡本さんにとっては、まだ見ぬ出口に向かって、光を放つような作業。出口が見えているものづくりではなく、出口が見えない中でどこまで到達できるか。暗闇の中で光を見出す作業でした。


――撮影現場も取材させていただきましたが、撮影が始まるぎりぎりまで作品の修正をしていたようですが。


森永 作るものに正解があるわけではないので、彼女自身が納得できるところまで行き着いたものを正解にしようと思っていました。ぎりぎりまでどこまで行けるか見極めていました。迷いながら進んでいるものは没に、迷いが完全に晴れて最後に追い上げた服を使用しています。

岡本 実は、今回使用いただいたジャケットの中に着用するワンピースと、別型でPVCのライダースも製作していました。しかし今回採用いただいたもの以外は、求められていたものに答えられなかった為使用できませんでした。悔しい思いもしましたが、これらの制作を通して想像を形にすることの難しさを改めて実感し、これから日々学んでいく中でもっと技術を向上させたいと思いました。


ーー平手さんが着用した姿を見て感想は?

森永 一点一点が違う形の透明な花で覆われたジャケットを着た平手さんをみて、服に込めている移ろって消えてしまうものへの愛おしさや、留められない儚さを感じました。ちゃんと自分を持っている平手さんの『強さ』がある反面、繊細で儚げ、ピュアな雰囲気も漂わせている相反するエッセンスを増幅できたかと思います。

岡本 これまで自身の考えやイメージを服で表現する事のみを制作の主軸にしていましたが、「ANEVER」というブランドがあり、ブランドミューズの平手さんやブランドに関わる多くの方々がいらっしゃり、その中の一人として全体に反映するべき役割があるのだと実感しました。

実際に撮影されている瞬間に立ち会った時は、一瞬一瞬目が離せないほどで、鳥肌が立ちました。 撮影された画像を見る度にあの瞬間を思い出し、今後の励みになります。

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一見同じ表情に見えて、自然も人間も花も、何一つ同じものが存在しない世界を、全て形を変えた透明の花々で表現している。


装苑賞をきっかけに、プロの舞台へと一歩を踏み出していく岡本さんと、さらにその行く先を灯台のように遠くから導く森永さん。この二人のコラボレーションを見て、ファッションの道を目指したいという信念を強めた人も多いのでは。

最後に、岡本さんから装苑賞へチャレンジしたこと、そして装苑賞を目指す人たちにむけ、言葉をもらった。

「私自身このような今があることを学生の頃は想像もつきませんでしたが、些細な事でも行動を起こせば今までいた環境とは違ったものを見る事ができると実感しました。 森永さんをはじめ、装苑賞に挑戦したことで築いた出会いやチャンスは、私自身にとってかけがえのないものでした。プロとしてスタートラインにたったばかりですが、 今後もものづくりを続けて新たな可能性を模索し続けたいです。

一昨年は装苑賞という一つの目標を持って作品と向き合いましたが、結果に至るまでの過程の中で学ぶことが多くありました。思い通りにいかないことの繰り返 しで悩みながらも少しずつ克服していった経験は私にとって貴重な財産となりました。 好きなことを続けるには同時に苦手なことや嫌に思うことも継続して行わなければならず、 壁にぶつかる瞬間もありますが、必要な事だと信じて向き合っています。今この瞬間を大事に、限られた時間の中で後悔のないよう頑張ってください」

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アンリアレイジ デザイナー、森永邦彦さんと、アンリアレイジ アシスタントデザイナーの岡本尚美さん。


商品の詳細はこちら。
「ANEVER APRIL SPECIAL FEATURE」




photographs : Jun Tsuchiya(B.P.B.)