yoshiokubo(ヨシオクボ)吉本新喜劇とコラボした「おもろい」ショーで、切り替え、ギャザー、テクニカルデザインにアプローチ 
Rakuten Fashion Week Tokyo 2025 S/Sレポート

2024.09.06

ブランド設立20周年を迎えた久保嘉男によるyoshiokubo(ヨシオクボ)のショーは、東京・新宿のお笑いの劇場「ルミネtheよしもと」が会場となった。意表をつく会場以上に驚いたのは、真っ赤な緞帳が開いて始まったのが、あの「吉本新喜劇」だったこと!間寛平さん(吉本新喜劇ゼネラルマネージャー)、すっちーさん(座長)、島田珠代さんなどの人気座員がこのショーのために書かれたオリジナル台本の新喜劇を披露し、その流れのまま客席脇の階段をランウェイに見立てたショーが行われた。

ショーの様子はこちらから

吉本新喜劇とのコラボレーションは、大阪出身の久保さんの悲願。長年、温めてきた構想を20周年の節目に実現させたもので、最後、ステージ上で挨拶をした際にも「夢のよう」と目尻を下げていた。

デザイナー久保嘉男のコメント
「大阪弁ではクリエイティブなことや、誰も目にしたことがない、聞いたことがないようなことを『おもろい』と表現する。そして、大阪には、他人と違うことをすると『君、おもろいな!吉本の芸人さんになれるで』と褒める文化がある。この言葉は、他と違うことをすることは良いことだ、という気持ちを育み、他と違うことをしようとする自分への自己肯定感を高めてくれていた。吉本新喜劇があったから、のびのびと自分の“色”を出すことを恐れずにいられたし、『おもろいこと』をしても良いと感じさせてくれたのは吉本新喜劇であり吉本の芸人さんの存在があったからだと思い、尊敬している。そして、ファッションデザイナーとして『今まで見たことのないパターンやディテールを追求して、誰も見たことがない服を作りたい』というブランドのアイデンティティにも深く繋がっていると考えている。
そんな吉本新喜劇の劇中に自分のショーが組み込まれ、一体となって観客を楽しませることができ、感無量だ」

見たことがないパターンやディテールの探求を続けるヨシオクボの2025年春夏コレクションは、「切り替え」「テクニック」「ギャザー」の3本柱。テーマは、「守・破・離、自在」で、過去のアイディアを深く掘り下げ、そこから生まれる独自の着眼点をもとに服作りを行っている。

ギャザーはファーストルックから登場。特に、シャリ感のある素材にギャザーを寄せて、MA-1を思わせつつ新たなバランスに仕上げたコクーンシルエットのアウターが、鮮烈なインパクトを残した。ギャザーはシャツやボトムにも施されるが、それはいずれも甘く優しいものではなく、隆起する地表のような力強さや雄々しさを宿したギャザーだ。

「切り替え」は、ヨシオクボの土台的な基盤となる手法。無数のファスナーで様々な着方を楽しめそうなジャケットは、昨今の地球沸騰化にも対応し得る近未来のユニフォームのようだった。

アウトドアウェアのようなファンクショナルなディテールとファッションの融合は、近年、よく見られるものだが、ヨシオクボのそれは、最新のファッションが本来内包しているはずの驚きに近い喜びと、エレガントに見せる上質さを兼ね備えたもの。メンズ・レディス問わずに着用できそうなシルエットやバランス感も、モダンな印象を与えた。宇宙を思わせるドットプリントのフーディとスウェット、リラクシングパンツのさりげないルックにも洗練が漂う。

新喜劇で「花月うどん」の先代に扮した間寛平さんと、人気キャラクターのすち子に扮したすっちーさんもランウェイに登場!すち子がすれ違うモデルにあめちゃんを配り、笑いが起きる一コマもあった。

新喜劇の出演者、モデル、久保さんも舞台に上がって、ショーは大団円を迎える。締めくくりは、あのお決まりのズッコケ。ユニークなコントラストを成した「おもろい」ファッションショーは、会場中の笑顔とともにハッピーなムードで幕を閉じた。

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