デザイナー・小塚信哉さんによるSHINYAKOZUKA(シンヤコヅカ)が、2024年春夏シーズンのISSUE#4コレクションを発表した。会場となったのは、東京体育館のサブアリーナ前。20時のショースタートを待つ観客たちの隙間を、秋の気配が滲む夜風が通り過ぎていく。ふと見上げると、その風が雲を運び、濃紺の夜空に輝く月が顔を出した。そうして「WONDERFUL WANDER」“月が綺麗ですね”と名付けられたコレクションの発表に、最高の舞台が整った。
国内産地や工場と協業するオリジナルテキスタイルに定評があるシンヤコヅカ。今回、エレファントカシマシの「月夜の散歩」が流れる中でファーストルックに登場したのは、手描きの筆致が温かな印象を与える具象的なプリント柄のコートと、手描きのメッセージを配したレギンスのスタイル。「絵を描くときに、月と家のモチーフをよく描く」という言葉通り、その後に登場するプリント柄にも、デザイナーが愛するこれらのモチーフが見られた。手描きのイラストや文字は、ニットや箔プリントなどさまざまな表現技法で服を彩る。
今回のコレクションの起点になっているのは、小塚さんが20歳の頃から行っている「散歩」。特に、夜の散歩で見る光景は、今コレクションのプリント柄となった月と家のモチーフを愛する理由にもなったという。そしてもう一つ、今回ずっと気になっていたというのが青色と金色。夜の散歩のお供となる、あるビール缶がいつの間にかデザイナーの心象風景になっていたというから面白い。ラメ糸の服をまとったモデルたちも、小塚さんのようにゴールドの缶を片手に、ゆったり歩くのだ。
月夜の輝きとも、ビール缶の鈍い光ともとれる様々な”光”がコレクションを彩り続ける。リアルクローズのなかに差し込まれた輝きは、日常生活に潜む美しさを思い起こさせるものだった。
ショーの楽曲は「月夜の散歩」から「友達がいるのさ」へ。ささやかな日々の喜びや感じた美しさを心に携え歩いていくーー。「月が綺麗ですね」という言葉の奥に込められた、作り手の祈りにも似た思い。詩情溢れるコレクションが終わると、会場は温かな拍手に包まれていた。
SHINYAKOZUKA
WEB : https://shinyakozuka.com/
Instagram : @shinyakozuka