MIKAGE SHIN(ミカゲ シン)の2024-’25年秋冬コレクションのテーマは「GAME CHANGER」。ゲームチェンジャーとはスポーツの試合の流れを一瞬で変えて活躍をする選手や、ビジネスシーンでは大きな変革をもたらす革新的な人物を指す。このような強靭なテーマを掲げ、“情動”と“瓦解”をキーワードに、これまでとは異なる激しい表現で、ブランド4年目にして最大の“攻め”の姿勢を見せた。
今回のコレクションのインスピレーション源には、デザイナーの進さんが価値観が変わるほど衝撃を受けたという、ベルリンの映画作家ウルリケ・オッティンガーの作品群と、クロード・レヴィ=ストロースの著書『悲しき熱帯』、映画『未来世紀ブラジル』(テリー・ギリアム監督、1986年)、『インターステラー』(クリストファー・ノーラン監督、2014年)がある。これらの作品の影響は、「一筋縄ではいかない人物を思い起こさせるようなコレクションにしたい」という思いに現れた。
ミカゲ シンらしい大理石の床が広がったコレクション会場に登場したファーストルックは、全身トゲで覆われたピンク色のドレス。コレクションには、もう一つ“BUG(バグ)”というキーワードがあったが、これまでのブランドイメージからは想像がつかないこのルックで、まさに一瞬、脳が“バグった”感覚に。それはデザイナーの思惑通りで、「ミカゲ シンに対する今までのイメージを一回フラットにしてコレクションを見てほしいという思いがあり、『これはなんだろう?』と皆さんに考えていただく、バグを起こす装置の役割」だったという。
このトゲは絞りではなく、大阪の刺繍職人が独自に開発した刺繍で作られたもの。渦を巻きながらピラミッドのように立体的に積層させる特別な技術を用いており、今回、初めて実用化に至ったそう。
そのほかにも、強酸性の薬品で5回以上脱色し奥行きを生んだタイダイ柄のデニムや、2枚のデニムを貼り合わせて加工糊を塗り、1枚のデニムのみ溶かして洗い加工を施すことで、ボロボロとした糸が現れるデニムボンディングオパールという技法など、奇抜に見えていても職人の繊細な手作業によって生み出されたアイテムが次々に登場した。
ブランドが得意とするプリーツや構造的なパターンワークは継続しながら、それらにもどこかにエッジが効かされて、新たな印象を与えた。
また、昨年ローンチしたブランド初のチェーン付きのオリジナルシューズとバッグもスタイリングに用いられ、コレクションが放つ強いムードを増幅させていた。
MIKAGE SHIN
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