
2025年6月20日、デザイナー後藤愼平が手がけるエムエーエスユー(M A S U)が、2026年春夏コレクションのルック撮影を一般公開型で行うイベント「SECRET BOX」を開催。東京・新木場のGARDEN 新木場 FACTORYには、500人を超えるブランドのファンが集結した。
装苑ONLINEではリハーサルから本イベントを取材。会場の雰囲気やお客さん入り後の様子を、イベント開催の背景やファッション業界に対する後藤さんの思いとともにお届けする。
photographs : Jun Tsuchiya (B.P.B.) / text : SO-EN

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「今日のファッション業界のロジカルさ、アルゴリズムに傾倒しすぎていることへの提言です」というステートメントとともに開催が発表された本イベント。デザイナーの後藤愼平さんは、作り込まれた美しさで予定調和的に洋服を発表する現代のファッションブランドに対し、問題意識を抱いているという。それこそが「リアルなファッションのワクワク感を取り戻す」という、今回のイベントの開催動機になっている。
「ルックでもショーでも、基本的には完成品をお披露目して、それを写真で皆さんにお届けすると思うのですが、近年は、それが全て数字の計算の上に成り立つゲームになっているなと感じていたんです」と後藤さんは語る。



リハーサル中の様子。写真下はモデルの着替えスペースで、ランウェイと仕切りのない開放的な空間が印象的。モデルとスタッフによる、入念な打ち合わせが続いている。
ルック撮影をブランドのファンに公開するという本イベント、その舞台となったのは、ランウェイのように長くまっすぐに伸びる一本の巨木だ。これは東京・渋谷に拠点を構える一枚板のテーブル専門店「WONDERWOOD」が手がけたもので、山形県産の樹齢250年にも及ぶ約8メートルの杉の木から、職人たちが精密なカッティングを施して生み出したもの。
巨木をランウェイに活用した背景について後藤さんは「原始時代に人類がランウェイを歩くとしたら何を用いるのだろうかと想像してみたら、ぶっ倒れている大木の上を歩いているのではと思って作りました」と語る。
無数のライトに照らされて光るその大木は、黒を貴重とした会場の中で一際強い存在感を放っていた。その傍らの高台にはモデル用の着替えスペースが用意され、後藤さんの声が響く会場は、リハーサルから熱を帯び始める。
NEXT:18時半。期待と興奮に包まれた様子のM A S Uファンたちが来場する。