「TOKYO FASHION AWARD 2024」を受賞したKota Gushiken(コウタ グシケン)の2024-’25年秋冬コレクションが「渋谷ヒカリエホールA」で発表された。デザイナーの具志堅幸太さんは、2023年のはじめ頃に、’24年秋冬からはパリで展示会を行いたいと思ったという。「TOKYO FASHION AWARD」を受賞すると、パリでの展示会と東京でのショー開催の支援を受けることができる。
そして迎えた東京での発表。ホール前方に設置された小さな舞台の上には洋服がかかったラックが用意されている。誰もが、この後にモデルが登場し、順番にルックを見せるようなインスタレーションが始まるだろうと思っていた。
しかしその予想は大きく裏切られることとなる。コウタ グシケンが選んだのは、お笑い芸人の又吉直樹さんと好井まさおさんを招いたコント形式での発表。「整理整頓って難しいなあ、どれくらい難しいやろ。街中で知らん人に、突然いないないばあされた時のリアクションくらい難しいな」という音声が流れると、自転車に乗った又吉さんが登場する。コウタ グシケンの展示会にやってきたという設定で、新作のポイントを伝えながらコントを繰り広げ、会場を笑いで包みこんだ。
ニットを得意とするコウタ グシケンが、今シーズンのテーマに掲げたのは「orgnaseid well」(よく整頓された、の意味)。パリで初の展示会を行うにあたり、自己紹介のようなコレクションを作りたかったという今シーズン。学生時代からの作品を振り返るために苦手な整理整頓をしながら制作したが、完璧に整理できなかったことから、あえて「organaised」を「orgnaseid」と間違ったスペルにしている。
過去を振り返ったコレクションに登場したのは、セントラル・セント・マーチンズの卒業コレクション発表時から毎シーズン展開している「名画シリーズ」。今回は「モナ・リザ」や、又吉さんが着用したゴッホの肖像画が選ばれた。コントの中で「全ニット」と呼ばれた赤色のビッグシルエットのワンピースや、八海山とコラボで作ったライディーンビールのピルスナーのロゴの猿がモチーフとなり、微かに淡く浮かび上がる姿が愛らしいカーディガンも見られた。
イギリスの伝統的なブランド「Jamieson’s(ジャミーソンズ)」とのコラボレーションは先シーズンから続き、今回は、新たにフェアアイル模様のベストが登場した。
ショーのラストでは、バンドの酩酊麻痺が、1月にリリースしたEPから「朝のはなし」を生演奏。ステージの天井には、セントラル・セント・マーチンズの卒業コレクションから’24年春夏までのアイテムが下げられていた。
今回、最も挑戦的だったアイテムは、ニットスカジャンだという。これは、イタリア製のラメ糸を混ぜてシルクやレーヨンの光沢を強調したもので、リバーシブルで着ることができる。1940年代のスーツをベースにした、あたたかみのあるダブルジャケットとパンツのセットアップや、ボックス型のニットバッグなど、具志堅さんの遊び心と、ニット愛を感じるアイテムも印象的。
ショー後に行われた囲み取材の場では、「自分の気持ちや伝えたいことは全て洋服に閉じ込めている。コント形式での発表を選んだ理由は、出る人も見る人も、全員が楽しむことのできる空間を作りたかったからです」と語っていた。
又吉さんがコントの中で「洋服って楽しいなあ」とつぶやいた通り、コウタ グシケンの前代未聞のコレクション発表を通じて、多くの人がファッションの前向きなエネルギーを体感した発表となった。
Kota Gushiken AW24 Performed by Naoki Matayoshi (YOSHIMOTO KOGYO HOLDINGS CO., LTD.), Masao Yoshii (YOSHIMOTO KOGYO HOLDINGS CO., LTD.), Hitomi (Meiteimahi) and Marin (Meitei Mahi)
Photo by Naoya Matsumoto and Yuichiro Noda
Movie by Herbert Hunger
Modeled by Glorietta Reantaso, Ruben Cefai (xdirectn) and Rakhim Imashev (spectomodels)
Show Production by H INC.