サカイカナコさんが手がける「KANAKO SAKAI(カナコ サカイ)」がRakuten Fashion Week TOKYOで2024年秋冬コレクションを発表した。
今季はスタンフォード大学ジェンダー研究所の上級研究員、マリリン・ヤーロムの著書『乳房論』をひも解き、サカイさんが苦手だったと語る「女性性」に向き合ったコレクションに。初めてのランウェイショーを開催した2024年春夏は自己紹介のようなもの、2回目となる今回はより深く、デザイナーが自身の内面に向き合ったコレクションになったという。
カナコ サカイは、国内産地の優れた素材を用いた都会的かつクリーンなスタイルで広く知られ、その確かなものづくりとデザイン性が、高く評価されてきた若手ブランドだ。しかし、今季、力強いドラムの音とともに現れたファーストルックは、鋭く尖ったコーンブラのビスチェ。インナーにあわせたボディスーツとともに、ビスチェは暈色に輝いている。続いて、セクシャルな雰囲気をまとう股上がハート型にカットアウトされたパンツや、レザーのショーツ、レースがのぞくシルク様の光沢を持つスカートなどがランウェイに登場。これまでのブランドイメージを大きく覆すアイテム群だが、その落とし込みは、あくまでも上品で知的だ。
これまでのシーズン同様に、国内の素材やその作り手たちとの出会いを大切にしたクリエーションも健在。鉱物を思わせる絶妙な色合いのコートは、螺鈿織りで知られる京都・丹後の織元「民谷螺鈿」によるもので、本物の銀に硫黄をつけ、熱を当てることで色を変化させている。力強い輝きはコレクション全体を通して見られ、シルバーのパンツやベスト、千羽鶴をイメージしたゴールド&シルバーのアクセサリー、亀甲花菱紋にスタッズを打ったネクタイやブーツも際立っていた。
終盤にはサカイさんの情熱や思いを託した、燃えるような赤色のルックが見られた。写真上のスカートはアメリカの詩人、ウォルト・ホイットマンの詩「Song of Myself」(『草の葉』より)に登場するフレーズ「Do I contradict myself? Very well, then I contradict myself, (I am large, I contain multitudes.)」を京都で箔プリントしたもの。
私は矛盾しているか?
それでもいい、私はこれからも矛盾する。
(私は大きくて、すごくたくさんのものでできている)
この言葉が、サカイさんの、ひいては多くの人々が内に秘めた複数性を表現している。苦手だった女性性に向き合い尽くして生まれた、女性身体への示唆に富んだコレクション。それは自らの掌中に意思と選択を取り戻せるよう、着る人をエンパワーするものだった。
KANAKO SAKAI
WEB:https://kanakosakai.com/
Instagram:@kanakosakai_official