1月16日から6日間の日程で、2024-’25年秋冬パリ・メンズファッションウィークが開催され、73ブランドが公式スケジュールで新作を発表。今シーズンの注目のショーや見逃せないトピックスをご紹介します。
ディオールの今シーズンは、著名バレエダンサーのルドルフ・ヌレエフがインスピレーション源に。メンズ クリエイティブ ディレクターのキム・ジョーンズは、フォトグラファーで元ダンサーだった亡き叔父コリン・ジョーンズによるヌレエフの写真の記録からアイデアを発展。公私にわたるダンサーの人生から多くのヒントを得ています。
ショーに登場した後半の20ルックは、ディオール初のメンズクチュール。ヌレエフがライフワークとして収集したテキスタイルをベースに、京都・西陣に伝わる最高峰の引箔を用い、10人の職人が3か月かけて完成させたキモノ・ガウンも登場しました。フランスのクチュールと日本の伝統技術が融合した圧巻の一着です。
京都の職人が語るこの動画では、糸状にカットした引箔を一本一本絹糸に織り込んでいくプロセスが紹介される。
もう一つのハイライトは、ムッシュ・ディオールによる1950年のイブニングドレス「ドビュッシー」からインスパイアされたルック。繊細なチュールの花びら、きらめくビーズやスパンコールがグラデーション状に刺繍され、一見ドレス風ですが、実はワークウェアのシルエットになっています。この絶妙なコントラストは、ジョーンズならでは。
「ドビュッシー」から着想されたルックの製作動画。オートクチュールの豪華な刺繍を間近で見てみて!
アーカイブのオートクチュールがベースになった作品は他にもあり、柔らかなウール生地で仕立てたプルオーバーのジャケットは、1960年代にイヴ・サンローランがデザインした「Jockcy Club」のスケッチからインスパイアされました。
「Jockcy Club」からインスパイアされたジャケットが、熟練の職人によって形作られていく。
全般を通して、実用性と豪華さ、プレタポルテのリアリティとオートクチュールのドラマチックさが共存。ヌレエフとバレエ衣装、コリン・ジョーンズへのオマージュがひしひしと感じられるコレクションです。
All Photos : ©︎Dior
Text : B.P.B. Paris