ディオールが2025年サマー メンズ コレクションの解説動画を公開しました。
Courtesy of Dior
今シーズン、クリエイティブ ディレクターのキム・ジョーンズがスポットライトを当てたのは、メゾンのアトリエ技術や手仕事。オートクチュールのアーカアイブからもインスパイアされ、ラグジュアリーと実用性が融合しました。
多くの着想源になったのは南アフリカの陶芸家、ヒルトン・ネルのアートピース。ショーの舞台装飾では、動物をモチーフにしたユーモラスな陶芸作品が巨大化され、遊び心のあるモチーフ、セラミックの留め具、アクセサリーにもネルの世界観が反映されました。
© B.P.B. Paris
全体的にシルエットは彫刻的で、存在感のあるビーズ刺繍のコートはイヴ・サン=ローランによる1958年秋冬オートクチュールのデザイン画から着想。
© Melinda Triana
動画の解説:
キム・ジョーンズは2025年サマー メンズ コレクションのテーラリングを考案するにあたり1958年秋冬オートクチュール コレクションのコートのための、実現されなかったイヴ・サン=ローランによるスケッチを発見し、今回このデザインを初めて採用することになりました。
コートの上にはマルク・ボアンによる「プティ・テアトル」という、ラフィア糸とガラスビーズで構成された刺繍が袖や裾、襟から中央に向かって消えていくように刺繍が施されています。
コートのフロントは一枚布で作られており、非常にクリーンな外観で、全くしわが寄らず、低めに設定されたアームホールがアクセントを添えます。バックデザインはフロントとバランスを取るため半円形がデザインされており、そこに2センチメートルほどの大きなトップステッチを施しました。
コレクションでは2種類が製作され、1つは茶色で同色のトーンオントーン刺繍が施されており、もう1つはオートミールカラーにホワイトの刺繍が施され、コントラストがつけられています。
陶器や釉薬がかかる前の原材料としてのセラミックスの生々しさを反映するような、マットな生地と遊び心のあるデザインがほどこされておりショーで見た光沢のあるオブジェクトと非常に良いコントラストを為しました。
Courtesy of Dior
随所に見られた陶器のようなスカーフ襟は、彫刻家フラヴィオ・ニュンネス(FLAVIO NUNEZ)とのコラボレーションで製作されました。
© B.P.B. Paris
© Melinda Triana
動画の解説:
このプロジェクトは、南アフリカの陶芸家ヒルトン・ネルの作品に触発された新しい素材を創造したいというキム・ジョーンズの願望から生まれました。ディオールのために、テキスタイルアクセサリーから陶器の感触を表現する方法を開発し、コレクション全体で、ドレープや襟に焦点を当てます。
まず初めに、コットンポプリンに硬さを出すための処理液に浸し、繊維が固まる1時間半の間に、このドレープを彫刻して動きを演出します。可能な限り自然な動きを創り出すのが課題でした。
次にセラミックを薄く塗り広げ、オーブンで加熱をする工程を繰り返すことで、堆積作用のようにセラミックの層を形成します。それを研磨することで鏡面仕上げの磁器のような光沢が施されます。
これは、陶器、宝飾品、革製品など様々なサヴォワールフェールが交差する地点を見直すことで、これら全てを重なり合わせ、共鳴を呼び起こすクリエイティブで、新しい試みでした。
© B.P.B. Paris
アクセントとなったクロシェハットは、スティーブン・ジョーンズがデザイン。南アフリカの職人たちが1点ずつカギ針で編み、パリのアトリエでセラミック製ビーズを取り付けるという流れで完成しました。
様々な職人のクラフツマンシップが結集したコレクションは、“ヒエラルキーを問わず、サヴォアフェールを組み入れる”という、キム・ジョーンズの包括的なアイデアが詰まっています。
左:フィナーレに登場したキム・ジョーンズ。右:ネルの作品を再現した巨大オブジェが迫力。© B.P.B. Paris
Text:B.P.B. Paris