福田里香のフード+1
Vol.1 PARKLET

人気菓子研究家の福田里香さんが、フードに+αのカルチャーを感じるお店をレコメンド!

うちの近所にあったらいいなぁ~
〝公園ちゃん〟という名のカフェベーカリー

ひと際目を引く、巨大な天然木のテーブル。座ると眼前に広がる公園が見渡せる。

カウンター越しにも公園が見える。コーヒーは環境に配慮したOverview Coffeeを使用。

「PARKLET」のオーナーの一員であるマックス・ハウゼガーさんいわく「LETは小さいという意味で、Parkletを訳すと"公園ちゃん"という感じかな」とのこと。Parkletとはサンフランシスコ発の比較的新しい概念で"駐車場や通りの一角をパブリックな公園のように使うこと"を指す造語だ。店名はそこから取ったのだという。「PARKLET」のZ字型の店内は、3方向の大きな窓から緑豊かな公園を展望でき、まるで公園の一部がカフェになったような立地。なるほどここは公園ちゃんだ。この店のオーナーは店舗デザインと企画、運営を担当するマックス・ハウゼガーさんと岡雄大さん、調理製造を担当するジェリー&ケイト・ジャクシッチ夫妻の4人だ。日本語が堪能なマックスさんにお話をうかがった。

 「アメリカ人の僕が日本に興味を持ったのは13歳の時。当時、仕事で東京に行っていた父が、北海道に連れて行ってくれたのがきっかけです。日本はスノボ天国だと思いました(笑)。後にLAの大学に通っている時に、改めて日本語も学びました。25歳で日本に来て、2021年に雄大とTerrainを立ち上げたんです」

 Terrainは、土地の風土を食の観点から引き出すべく、作り手から消費者までを巻き込んだコミュニティを創出し、後世に残すことを目的にする会社で「PARKLET」もその活動の一環だ。

現在、朝食や午後のランチ、おやつが楽しめる。ケイトさんが焼くパンはすべて国産の材料を使用。11時に焼き上がるパンを目的に出かける価値あり。粉の風味がすばらしい焼き菓子も絶品だ。状況が落ち着けば、夜も営業して、料理と自然派ワイン等を提供する予定だという。aグラノーラとヨーグルト 季節のフルーツ ¥700  bリコッタチーズと蜂蜜、アーモンドのトースト ¥900  c柚子カードパイ ¥350  d五穀のポリッジと季節のグリーンズ、半熟卵、パルミジャーノレッジャーノチーズ ¥850  eクランベリーマスカルポーネとローズマリーのトースト¥700

 「ジェリーはシェ・パニース*のシェフでした。退職後、仲間とサンフランシスコ近郊のオークランドでRamen Shopという、地産地消でオーガニックを旨としたラーメン店を開業し大成功を収めましたが、やっぱり日本で暮らしたいと、一家で日本に移住したんです。ケイトはとてもおいしいサワードウブレッドを焼くことができる腕の持ち主。『PARKLET』を開業するにあたって二人の力が必要でした」

地産地消とオーガニック食材の普及に尽力し、カリフォルニア料理の先駆者として知られるアリス・ウォータースの店。

PARKLETのスタッフと一緒に。左から3・4人目がJJ&ケイト夫妻。その右隣が岡さん、そしてマックスさん。

 普通にこの街に馴染む場所になることを目指しているという。店内でお客さんのくつろぐ様子を見るにつれ、オープンして間もないこの店はすでに目標に達していると感じた。まずは充実した朝食メニューを食べに出かけてみませんか? 

「PARKLET」
場所:東京都中央区日本橋小舟町14-7
TEL:03-3527-2627
時間:8時30分~18時(定休日なし)
WEB:www.parkletbakery.com

Ricca Fukuda
菓子研究家。著書にマンガ家・雲田はることの共著『R先生のおやつ』(文藝春秋)、『いちじく好きのためのレシピ』(文化出版局)。
Instagram:@riccafukuda

text : Ricca Fukuda
photographs : Max Houtzager

『装苑』2022年5月号掲載