『ファッション・リイマジン』Mother Of Pearlのエイミー・パウニーに尋ねた、真のサステナブルファッション実現のために必要なことは?篠原ともえさんのコメントも。

現在公開中の映画『ファッション・リイマジン』の主人公であるMother Of Pearlのディレクター、エイミー・パウニーにインタビュー。この映画は、2017年、英国最優秀新人デザイナー賞に輝いたエイミーが、ブランドをサステナブルな方向へ舵を切り、ファッション界に新たな価値観を提示するまでの旅路を映し出したドキュメンタリーだ。コレクション発表までの18ヶ月間、理想の素材と制作方法を追い求めて旅をするエイミーとチームの前に立ちはだかる数々の壁……。大学の卒業制作で、すでに「持続可能性」をテーマにエコ素材のニットを発表していたエイミーの戦いを通じて、ファッション業界の問題点と、現代において真に価値のある新しさが提示される本作。装苑ONLINEでは、エイミーに、改めて「真のサステナブルファッションの実現に必要なこと」と、彼女の現在地について語っていただいた。服を作る人と服を愛する人、すべての人へ届けるインタビューです。

interview & text : SO-EN

エイミー・パウニー   Amy Powney
1985年⽣まれ。英国におけるサステイナブル・ファッションのリーダーとして広く知られるエイミーは、10 歳の頃から、イギリス、ランカシャーの⽥舎にあるオフグリッド(電気やガスなどのインフラがない状態)の農場で、妹と両親とともに育つ。2002年、キングストン⼤学に⼊学し、ファッション・デザインを専攻。2006 年、⼤学を卒業し、Mother Of Pearlにアシスタントとして⼊社。その後、スタジオ・マネージャーに昇進し、2015 年にクリエイティブ・ディレクターに就任する。2017 年、英国最優秀新⼈デザイナーに選ばれ、その賞⾦でサステナブルなライン、No Frills を⽴ち上げる。その後はコレクションの回数を年2回に減らし、⽣産数を抑えるなど、ブランドが地球に与える影響を軽減することを使命とする。彼⼥のサステナブル・コレクションは、ロンドン・ファッションウィークやコペンハーゲン・ファッションウィークで発表され、Net-a-Porter、ハロッズ、サックス・フィフス・アベニュー、ニーマン・マーカスなど、グローバル展開の⼩売店で扱われている。また、英国最⼤の百貨店であるジョン・ルイスのサステイナブル・コレクションやホームウェアのデザインも⼿がける。BBC Earth やチャールズ皇太⼦とサステナブル・プロジェクトでコラボレーションしているほか、英国VOGUE で「Ask Amy」のコラムを執筆中。

映画『ファッション・リイマジン』
監督:ベッキー・ハトナー 
出演:エイミー・パウニー(Mother of Pearlデザイナー)、クロエ・マークス、ペドロ・オテギ
全国公開中。
(C)2022 Fashion Reimagined Ltd 配給:フラッグ 
WEB : https://www.flag-pictures.co.jp/fashion-reimagine/
Twitter:@fashionreimagin  Instagram:@fashionreimagin

ビジネスや業界を変えるのか、さもなくば自分のキャリアを変えるのか。選択肢は二つだった。

――映画『ファッション・リイマジン』を拝見して、こんなにも洋服一着を作るのに環境負荷をかけるのかという驚きと、それまでこの現実を知らなかったことへの恥ずかしさがありました。エイミーさん自身は、かつては年間700着もの服を大量にデザインし作っていた頃もあったそうですが、その頃、ご自身の仕事やファッション業界に対して感じていたことは何でしたか?

エイミー・パウニー もともと環境問題の知識はあったのですが、どちらかといえば、私はそれを社会問題として認識していました。そしてMother Of Pearlに入り、年間700着の服を作っていた頃から「何か違うな」という違和感を強く感じるようになって、私自身も私のチームも、これは持続可能性がないなと思ってしまったんですよね。そこから、この業界がいかにサスティナブルではないか、その点と点がつながっていきました。それにこの業界はスピードが早すぎるんです。その気づきがターニングポイントとなり、どうすれば持続可能性を得られるのかを考えはじめました。サプライチェーンを見直し、実際そこで何が起きているのかを知り、地球にどのくらいの負荷をかけているのか、消費者にどれほどの負担を与えているのかを計算し直さなければと。

――エイミーさんは、英国最優秀新人デザイナー賞を受賞したタイミングで、ブランドをサステナブルの方向へ思い切り舵を切りました。最も勢いづいている時にやり方を大きく変えるというのは、勇気のいることだったのではないでしょうか?そのとき、エイミーさんを突き動かしていたものは何でしたか?

エイミー・パウニー 何かしないとっていう気持ちでした。私にはその時、もう二つの選択肢しかなかったんです。「変化するか、やめるか」。つまり、何かしないとファッション業界で仕事を続けることができないということですね。 ビジネスや業界を変えるのか、さもなくば自分のキャリアを変えるのか。それほどまでに自分も自分のチームも、このままではいけないという思いがあったんです。私も全然幸せじゃなかったしね。

NEXT ファッションのサプライチェーンの問題点、新たに見つけたサステナブル素材のこと。

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