2021年春夏東京コレクション総合レポート、その前に <コロナとファッション。オンラインの時代>

1. 東京ファッションウィークの前に、ANREALAGEの「HOME」に出会う。


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 今回、Rakuten Fashion Week TOKYO 2021 S/Sは、2020年10月12日(月)〜17日(土)の公式スケジュールを無事に終えることができた。と書くのは、半年前の2020-21秋冬のファッションウィークは、ニューヨークからパリの4都市では、すでに新型コロナウィルスの感染拡大は始まっていたにもかかわらず、都市閉鎖に至る前になんとか開催し終えたが、東京は、すでに多くの参加デザイナーたちの準備は整っていたにもかかわらず、ファッションウィークの開催が中止になってしまったのだったからだ。


 今回の2021年春夏の東京ファッションウィークの公式スケジュールの大半は動画をオンライン配信するという形での発表となった。ただし、毎日いくつかのブランドは人数を絞ってリアルなショーを敢行。オンライン、リアルなショー共に、実況中継のあと、アーカイブとして視聴することができるようにされた。展示会だけの発表も少なくなかったが、これも多くのブランドが事前予約制で、会場に人々が密集するのを避ける対策をとっていた。


 ところで、コロナ禍でのオンライン配信の先鞭を切ったのは、7月のパリメンズコレクションであった。従来ならパリコレは現地に行くか、さもなければネットで(静止画像で)しか見ることができない。今回は、カレンダーにブランド名が配分されていて、その時間に発表されたオンライン配信動画を見ることができる(アーカイブでももちろん視聴可)。無観客のショーのようなものがあれば、実験性の高い音楽のPVのようなものがあり、コレクションの制作プロセスをドキュメンタリー風にまとめたものがあれば、デザイナーの意見表明で終わるものがあるなど、とても多様で、慌ただしくパリコレの会場をかけまわって必死に見るよりも、この方法は時間に余裕ができてなかなかいい、と思ったものだった。服のディテールを確認するために何度も見ることだってできるし。


 今年は、東京に先立つニューヨーク、ロンドン、ミラノ、パリでも、主流は圧倒的にオンラインだった。


 オンラインだったことによって、少し遠くに感じていた日本のブランドも親しく見ることができた。とりわけ印象的だったのが、ANREALAGE「HOME」だったのは、自分でも意外だった。それは多分、今回のテーマ「HOME」というのが、2009年春夏、東京で発表した「○△□(まるさんかくしかく)」を練り直し、成長させたものだったからだろう。ファッションでは、たいてい止まることなく、更新し続けていかなければならない宿命みたいなところがあって、そのエネルギーを競いあうわけだが、何周もしていると、見ている方も飽きてくる。求めているのは、そんなに新規なものなのだろうか、と疑問に思ったり。
ステイホームのおかげで人々は時間を手にした(少なくとも私は)。過去に目を向けることを厭わないばかりか、振り返ることで、価値が見えてくることも多い。


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 11年前には、人間の身体に合わせた立体を用意して、そこに服を着せ、それを広げて人がまとうと、不思議な形の衣服ができ上がるというコンセプトだったが、今度の「HOME」では、人よりひと回り大きな○△□のテントを人のすみか(HOME)と見なし、それをおおう美しい半透明の布を外して身にまとうとドレスになる、しかもその繊維には抗ウィルス成分が織り込んであって、このテントに住んだり、身にまとうことで、人は未知のウィルスから身を守ることができる、というものなのだ。

Anrealage Spring-Summer 2021 Collection "HOME"


 これはステキとか、モテるとか、そんな下世話な観点を超越している。自分が発明したコンセプトを現在の世界が直面する問題と繋げ、「HOME」というタイトルで原点に戻る。ファッションの想像力は素晴らしい、と思わせてくれるコレクションだった。映像を撮るためにANREALAGEの撮影チームは富士山麓の朝霧高原まで行ったという。昔、装苑などのファッション撮影で行ったことがあるところだ。世界で戦うためには、何も欧米を想起させるロケーションである必要はないということも教えてくれるいいチョイスだと思った。

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 このほか、Mame KurogouchiやHYKEも独自のオンライン映像を制作。

Mame Kurogouchi 2021 Spring Summer Collection

HYKE 2020 S/S Collection | Rakuten Fashion Week TOKYO 2020 S/S


 Comme des Garçonsは東京本社の社屋でショーを開催した。珍しい川久保玲のテレビでのインタビューが話題を呼んだ。パリに行ってしまった日本のファッションを代表するブランドが、コロナのおかげで帰ってきてくれた。そんな感想を持った人も多いのではないだろうか。海外の人たちは、オンラインによって、このコレクションを見る。なんとも不思議な気分だ。コロナ禍で、グローバルという名前の世界の広がり方は一時中止になってしまったが、オンラインという名前の別の広がり方が模索されている。

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 前置きのような形で、東京ファッションウィークには含まれない、しかし大切な東京のブランドのコレクションに触れたところで、次は本編に入っていこう。


text:西谷真理子


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