
1991年にパリでスタートしたTRANOÏ(トラノイ)は、クリエイティブなブランドと世界のバイヤーをつなぐ場として発展してきた。その東京版として2026年 3 月18日、19日の二日間にわたり開催されたTRANOÏ TOKYO AW26-27は、Rakuten Fashion Week TOKYO期間中に行われる国際的なマーケットイベント。新鋭から実力派まで、約25カ国から190ブランドが集結した。
中でも印象に残ったのは、今回、東京に初出展したフランス発のバッグブランドCAHU(カウ)。手がけるのは、アートディレクターでありスタイリストとしても活動するクレマンス・カウだ。
photographs : Jun Tsuchiya (B.P.B.) / interview & text : Midori Yoshino
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ファッションスクールで学んだ後、スタイリスト、アートディレクターとして編集、広告、コンサルティングの分野で幅広く活動し、『Grazia France』や『Sport & Style』では編集長も歴任。そうした活動と並行して、2016年より、ノルマンディーで家族が経営する工場で作られるインフレータブルアイテムから着想し、PVCキャンバスを取り入れたブランドCAHUを主宰している。



CAHUの始まりについてクレマンスは、
イケアとセリーヌの中間にあるような、実用的でありながらラグジュアリーなバッグをずっと探していたんです。でも、思い描いていたものにはなかなか出会えなかった。だから、自分で形にしてみようと思いました。
と話す。
建築的でシンプルなフォルムには、気負わず物を入れて持ち歩けるタフさがあり、ハンドルや細部には上質な意匠が施されている。日常に必要な機能を備えながら、きちんとファッションとして成立するCAHUのバッグには、スタイリストやアートディレクターとして磨いてきたクレマンスの感性が反映されている。
ブランドを象徴するのが、バッグに採用されているPVCキャンバス地。フランス・ノルマンディーで家族が経営する、インフレータブルアイテム(海に浮かぶバウンシーキャッスルなどのおもちゃ)を製造する工場で使われていた、軽くて丈夫な工業用素材から着想を得たのだとか。
父の工場でその素材を見た時に、ハンドステッチやレザーのようなラグジュアリーな要素を組み合わせれば、強さもファッション性もあって、しかも軽やかなものが作れると思ったんです。
スペインのサプライヤーから調達したPVCキャンバスに、厳選されたレザーやファブリックを掛け合わせ、職人の手でひとつひとつ丁寧に仕立てられたバッグは、アイコニックなアイテムとして注目を集めた。

CAHUのバッグは完成された定番でありながら、コラボレーションによって少しずつ異なる表情を見せることもある。Paraboot(パラブーツ)ではPVCとレザーを組み合わせ、K-WAY(ケーウェイ)では、ブランドを象徴するジップのディテールを取り入れた。
コラボレーションの相手には、自分が惹かれるアーティストやデザイナーを選ぶことが多いです。それぞれに、素材やコンセプトにまつわる素敵なストーリーがあるんですよ。K-WAYとのコラボレーションも、色やサイズの考え方がCAHUと通じるものがあると感じて、自分からプレスオフィスに連絡しました。
実用性を土台にしながら、相手との対話を通してバッグに新たな表情をもたらしていくところにも、CAHUらしい魅力がある。



今回、CAHUのブースの横で、“What’s in the Bag?”をテーマにしたインスタレーションも展開。クレマンス自身の私物とTRANOÏ TOKYOに出展しているブランドのアイテムを、スタイリストならではの視点でセレクトし、バッグの背景にあるライフスタイルや価値観を伝える展示となっていた。CAHUのバッグが目指しているのは、ただ物を入れるための道具ではなく、手にすることで日常や気分に変化をもたらしてくれる相棒のような存在だ。会場には日本各地からバイヤーやプレスが訪れ、初出展ブランドへの関心の高さもうかがえた。




TRANOÏ TOKYOの会場には、Rakuten Fashion Week TOKYOでショーを開催した台湾ブランドを中心とする「TAIWAN SELECT」や、ルーマニアから 9 ブランドが集結した「Romanian Designers」、さらには、TRANOÏ TOKYO Awardを受賞した文化服装学院の卒業生が手がけるDeadbooyも参加。国内外のブランドが集まり、それぞれの美意識やものづくりへの姿勢を多角的に提示していた。
About TRANOÏ TOKYO 》》
TRANOÏ TOKYOは、パリで開催されるTRANOÏの精神を継承し、国内外のデザイナーズブランを紹介する国際的なマーケットイベントとして、2024年より年2回、東京にて開催されている。





