日本の工場の技術を広めて残すための
自分にしかできないものづくり
『装苑』2022年11月号 掲載
文化服装学院在学中からパターンメイキングを意欲的に学び、卒業後はパタンナーとして活躍していた金子俊平さん。学生時代、デザイナーになろうと考えたことは一度もなかったという。そんな彼が自身のブランド、ペイズムを始めたきっかけは、これまでお世話になっていた工場がコロナ禍で廃業していくのを目の当たりにしたことだった。
「若手や国内で頑張っているブランドをクリエイションの面で手助けしてくれていた工場が、どんどんなくなっていくことに危機感を覚えました。そこで、僕だからできるパターンにこだわった服を作って、染色工場や刺繡工場の技術を生かした美しくかっこいい加工を施すことで、日本はもちろん世界にもその魅力を届けられたらと考えました」
22年秋冬コレクションのテーマ「ESSENSE」は、1981年のクラフトワークのアルバム『コンピューター・ワールド』から着想。
ブランケットステッチがアクセントになった巻きスカート。アシンメトリーなシルエットもポイント。スカート¥56,100、シャツ¥31,900
「情報過多な今の時代だからこそ、自らで物事の本質を見極めなければならないというメッセージを込めています」
自分の目で見て、触れて、心からいいと思える服を作りたいという金子さんの将来の目標は縫製工場を作ること。
「メイド・イン・ジャパンのものづくりで、日本のファッション業界がさらにポジティブになれるよう貢献していきたいです。そしてブランドを支えてくれているたくさんの方への感謝を込めて、いつかショーもできたらと思います」
アウターの上から着るために作られたビッグスウェットTシャツ。生地と同じ色で刺繡された“Future”の文字は「自分たちで考え続けなければ未来はない」という意味を込めて。¥24,200 photographs:Jun Tsuchiya(B.P.B.)
ビッグスウェットTシャツと同じく胸もとにさりげなく刺繍が入ったニットワンピース。セットで身につけるとよりかわいい袖つきのバラクラバも展開。ニットワンピース¥62,700、バラクラバ¥41,800
ベルトを少し落としてはくことで裾が綺麗に広がるよう計算しデザインされたキルティングスカート¥46,200 photographs:Jun Tsuchiya(B.P.B.)
ブラックデニムの裾をブリーチし、スプレーを使い手作業で色づけしたジャケット。1981年から未来に向かう時間軸をイメージした色合いに。¥63,800 photographs:Jun Tsuchiya(B.P.B.)
滑らかで肌触りのいいラムウールを使ったロングコート。袖のラインの美しさにこだわっている。¥89,100
背中のドレープと、衿から続くボータイが印象的なデザイン。袖にも膨らみを持たせ、シルエットに遊びを。ワンピース¥44,000
ブランドプロフィール
Shunpei Kaneko 金子俊平●1995年生まれ、秋田県出身。2017年に文化服装学院服飾専攻科技術専攻を卒業し、国内コレクションブランドでパタンナーとして勤務。’21-’22年秋冬コレクションにて、自身のブランド“ペイズム”をスタート。’22年春夏シーズンより独立し、本格的にコレクションを展開。「ペイズム」 product@peism.net Instagram @peism_official
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EUCHRONIA/ ユークロニア デザイナー
文化服装学院卒業の宮崎さんと佐藤さんによって立ち上げられたブランド。おのおのアパレル企業のデザイナーとして勤務した後、共にイギリスへ留学。2023年4月にユークロニアをスタートさせた。 Instagram:@euchronia_official