今、発信したい思いを
社会と対話するための言葉を超えた服づくり
『装苑』2023年1月号 掲載
イギリス・ロンドンと、ノルウェー・オスロでファッションを学び、2022年に日本で自身初となるエキシビションを開催した飯野麟太郎さん。大学で映像作品などデジタルの表現に触れるうちに、画面の中だけでなく見た人が手に取り、体感できるようなフィジカルな作品を作ることにも興味が湧き、ファッションの道に進むことを決意した。
「デザイナーの服に込めた思いや、ショーでの見せ方などを一つ一つひもとくと面白くて、自分もデザインのプロセスを一から学んでみたいと考え留学しました。そして一番身近にあったニットをベースにした服作りを始めました」
異国の地で経験したパンデミックをもとに、「孤独」をテーマにした卒業コレクション「Black Sheep」では、毛刈りから逃げ、6年間、1匹だけで生きていたというニュージーランドの羊、シュレックから着想を得た5つの作品を制作した。photographs:Dev Dhunsi / model:Emma Effie
留学中から日々の“疑問”や“矛盾”を原動力にクリエイションを続け、言葉だけでは伝えきれない思いを表現。
「その時々に発信したい考えをどう作品に落とし込めば、服を通して社会とコミュニケーションがとれるか、そして何より自分がビジュアルとして見せたいものにできるかというところをいつも葛藤しながら制作しています」
現在はイタリア・ミラノに移り、トラサルディのデザインチームで新たなキャリアをスタートしている。「まずはヨーロッパを拠点にしながら、自分らしく社会と対話するための作品づくりを続けていけたらと思います」
「重いものを背負ってでも手に入れる自由」というシュレックが抱えていたジレンマを、守られているようでとらわれているデザインに落とし込んだ。photographs:Dev Dhunsi / model:Emma Effie
リリアン編みで作った太い糸をさらに編んでワンピースに。ヘッドピースはニットアーティストのHABUJUNさんによるもの。photographs:Dev Dhunsi / model:Emma Effie
毛の伸びすぎにより重さでただれていくシュレックの皮膚の様子を編みで表現した。photographs:Dev Dhunsi / model:Emma Effie
様々な情報に惑わされ、身動きができなくなる前に、本当の意味での“孤独”になることも重要だという思いを込めた。photographs:Dev Dhunsi / model:Emma Effie
「作品づくりは一人遊びのようなイメージで、一方的な発信をするものですが、このセーターはカスタマーに着てもらって完成するものなので、『一人遊びは終わり』というメッセージを、シルバニアファミリーの家が巨大化したようなビジュアルで表現しました」photograph:Kae Homma
チェーンのように編まれた両腕のデザインには「Black Sheep」コレクションのムードも引き継がれている。3色展開。セーター 各¥60,000(数量限定)photograph:Jun Tsuchiya(B.P.B.)
ブランドプロフィール
Rintaro Iino 飯野麟太郎●1994年生まれ。イギリスのセントラル・セント・マーチンズにて学んだ後、2021年にノルウェーのオスロ国立芸術大学大学院デザイン科を修了。卒業コレクションが北欧最大のコンペティションである、Designers’ Nest(現・ALPHA)にてアワードを受賞。2022年よりイタリアの老舗ブランド、トラサルディのデザインチームに参加。「リンタロウ イイノ」info@rintaroiino.com Instagram @rintaroiino
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EUCHRONIA/ ユークロニア デザイナー
文化服装学院卒業の宮崎さんと佐藤さんによって立ち上げられたブランド。おのおのアパレル企業のデザイナーとして勤務した後、共にイギリスへ留学。2023年4月にユークロニアをスタートさせた。 Instagram:@euchronia_official