sulvam(サルバム)ブランド10周年を経た今、ファッションの未来を担う次世代へ、ショーを通して伝えたいこと。
Rakuten Fashion Week Tokyo 2025 S/S レポート

2024.10.07

デザイナー 藤田哲平 インタビュー
服作りでアウトプットをし続けないと、多分僕は死んじゃいます。

藤田 哲平(以下、藤田)ちょうど東京でランウェイショーをやりたいと思っていたんです。そんなことを考えていた時に楽天さんから「by R」のお話をいただいて。ぜひ!とお答えさせていただきました。僕が決断したのではなく、楽天さんがよく決断してくださったなと思います(笑)。

これまで東京コレクション(以下、東コレ)は、スポンサーが短期的に変わってきましたよね。そんな中、楽天の代表取締役会長兼社長である三木谷(浩史)さんは長期でスポンサーをしますとおっしゃっていました。そのおかげで今は「by R」という名前も認知されてきていて、枠組みが徐々に固定されつつあります。東コレのレベルが一個上がったと感じます。

藤田東京はパリ・ファッションウィークのようにメンズとレディースで分かれていないので、その両方を年2シーズンでミックスして発表することができる。この垣根を超えられるのは唯一東京で、僕の中でそれは結構大きなポイントです。また、パリだと物理的な距離がありますが、東京ならこれまで長くお世話になっている縫製工場さんや、友人・両親にも見ていただける機会にもなるので。

海外のブランドやデザイナーを東コレに招待し、日本で発表することが実現するのであれば、もっと日本のファッション業界は盛り上がると思います。海外のメゾンやブランドも、それをやりたがっているはずです。今回はサルバムがby Rに携わらせていただきましたが、次回はどのブランドになるのか楽しみです。次の「by R」もサルバムでいかがでしょう。初めての2連チャンで(笑)。

藤田全然ありますよ!東京でショーをやれるのであれば、毎シーズンやりたいくらいです。ただ、パリでも毎シーズン行いたいので、時間と予算の問題になってきますね。8月にオープンしたパリのお店もありますし。これまでずっと東京とパリで、僕を入れて3人だけでやってきているんです。やりたい気持ちは常にありますが、労力的な限界もあるので。

藤田今、アウトプットしたいことがたくさんあって。これまでもメンズコレクションにウィメンズのアイテムを出していましたが、改めてウィメンズの服は新しいアプローチをしたいと思い、スタートしました。
メンズを制作する際に、一緒にパターンを引いてデザインをしているウィメンズと、ウィメンズコレクションとして制作するものは、僕の中では別ものです。作るタイミングや時期が違うこともあり、意識的に分けているというよりは、それぞれが自然に違うベクトルを持っています。今、ファッションに性別はもはや関係ないですが、僕が女性であっても着たいと思う服しか作っていないです。

藤田インプットは24時間365日しています。例えば、パリの街中にあるカフェにはテラス席がズラーと並んでいますが、そこでお茶したり、ビールを飲んだりしてる時に、道行く人を見るのがすごく好きなんです。「なんでこの人 、こんな服着ちゃっているんだろう」とか 、逆に「なんでこの人はこんなにカッコいいんだろう 」とか、目に入るものすべてがインプットされて、思考が止まらないんです。 寝ている時に見た夢から服が出来上がっちゃうこともあります。そうすると、情報量が多すぎて疲れてしまう。だから服を作ってアウトプットをし続けないと、多分僕は死んじゃいます。

藤田メンズでも使用しているグレーのストライプの生地は尾州で織っているウールなんですが、ウィメンズでは若干色味を薄くしています。それ以外はメンズとはイメージが全く違う生地を使っていますが、全国各地にお世話になっている生地屋さんがいるので、その都度作りたいものに合わせて得意なところにお願いをしています。

藤田ブランドを始めた当初から僕が思っているのは、クオリティはもちろんですが、「恥ずかしくない服」を作ることです。サルバムの服を着てる人が 「あの服変だね」、「あの服クオリティ悪いね 」って指をさされてしまったら、それは僕の責任だと思ってます。だから、 着る人に失礼がない服を作るというのが僕の絶対条件です。

囚われなくていい、正解は自分で導き出すこと。

藤田海外の専門学校は早い段階で、インターンなどで直接ブランドに入って、そこで1年間現場で勉強してきなさい、現場を見てきなさい、という外の現場を体験できるカリキュラムになっていますが、日本は専門も大学も就職をさせるための仕組みが強いと思っています。その問題意識から学生6名を選抜で選ばせていただき、サルバムのジャケットをいつも縫っていただいている縫製工場の「福新ドレス」さんにご協力いただきながら、現場を体験してもらって、早く力をつけていくということを今回実践しました。

海外では外に出てくるデザイナーの年齢層が若いと思います。それがなぜ、日本では若いデザイナーが少ないのかと考えていくと、技術や才能以前の“教育”の部分を考える必要があると思っています。自分自身、まだそんな身分でもないのですが、少しでも若手の育成に尽力したいという思いもありました。

藤田学生と関わって、初心に帰った気持ちになりました。正直、僕が学生の頃よりも、みんな勉強していてすごくできる子たちなんですよ。真面目に課題に励んでいて、目標が明確にあって。当時の僕はそんな学生ではなく、ずっと呑んでいるだけ(笑)。今が楽しければ良いと思っていたタイプだったので、みんなしっかりしているなと感じました。ショーに関わってくれたフィッター担当の学生や、案内、設営に関わってくれた学生たちも真剣に取り組んでくれて、素敵な学生たちだからこそ、早く外に出て経験を積んでほしいと思いますね。僕も心が洗われた気がしました。

藤田海外で僕より若いデザイナーはたくさんいますし、頑張っているから凄いなと思ってみていますが、日本の若い世代も負けていられないかなと。やるべき時代になっていると思います。だから「頑張れ!」という気持ちがあって、今回学生に向けてのショーも行いました。ショーを見て「何か変わった!やってみよう!」と感じてくれていたらそれが本望ですね。こういった思いを伝えられるのもファッションの力なんです。囚われなくていい。力を抜いて、自分で正解を導き出して欲しいです。自由でいいんだけど、その代わり責任はあるよということを学生に伝えたいです。

楽天グループ株式会社及び、文化服装学院の皆様のお力添えによって、3年ぶりに東京でランウェイショーを開催できることを本当に嬉しく思います。このショーはsulvamのものではなく、このショーに関わってくださる皆さまのものです。“ファッションに関わる仕事をやりたい”“服を手に取ってみたい”私たちがあの頃に感じた真心。身の丈に合っていないかもしれませんが、決して明るいとは言い難いこの世界において、将来を担う次世代に感じてもらえるキッカケになることを祈っています。 From Teppei Fujita

sulvam
Instagram:@sulvam_official

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