1月21日から6日間の日程で、2025-’26年秋冬パリ・メンズファッションウィークが開催され、約70ブランドが公式スケジュールで新作を発表。今シーズンの必見のショーや話題のトピックスをご紹介します。
Photo : ALFREDO PIOLA
今シーズン、ディオール(DIOR)のキム・ジョーンズが着目したのは、創業者クリスチャン・ディオールが手がけた1954-1955年秋冬オートクチュールコレクションの「H ライン」でした。
「(H ラインは)グラフィカルで角ばった印象があり、メンズウェアの世界と非常に親和性が高いと感じていました」とキム・ジョーンズ。
Photo : ADRIEN DIRANDA
「このコレクションには、ファッションの歴史、特にメンズウェアの歴史を感じさせる要素が落とし込まれています。そこに感じられるのは、18世紀の非常に華やかで絢爛なものから、モダンなメンズウェアの起源である19世紀のより直線的で実用的なものへのシフトです。ただ、多くがファッションの歴史に触れるルックである一方で、このコレクションが体現するのは歴史的なファッションではありません。究極的には、『現在』を体現するものなのです」とキム・ジョーンズ。
ショーのバックステージより。Photo : ALFREDO PIOLA
「レディーズ マン」と呼ばれた18世紀の伊達男ジャコモ・カサノヴァの人物像も全体に落とし込まれているそうで、ショーは華やかに装う男性や仮面舞踏会を想起させます。すっきりとした直線的なシルエットが特徴的ですが、ウィメンズウェアのアーカイブから着想されたボリュームたっぷりのオペラコートやスカートなども提案されました。
フィッティングより。Photo : ALFREDO PIOLA
ショーの冒頭や終盤では“メンズクチュール”数点が登場し、ラストを飾ったのは1948年春夏のオートクチュール「ポンディシェリ」から引用された豪華な刺繍のコートです。ピンストライプやヘリンボーンなど、メンズウェアのクラシックな柄をビーズ刺繍で表現したものもあり、小さなガラスビーズを散りばめた雨粒のような刺繍も。
ショーのバックステージより。Photo : ALFREDO PIOLA
過去と現在、豪華さとミニマリズム、ロマンティシズムと厳格さ。究極にドレッシーなコレクションは、相反する要素を巧みに融合させ、みごとな調和を奏でています。
「ポンディシェリ」から引用された刺繍のコートの制作風景。Photos : SOPHIE CARRE, DOLLY DEVI(右上)
写真左:同刺繍のモチーフと職人の仕事道具がジュエリーに。Photo : ALFREDO PIOLA 右:細かなビーズを繋げたリボンでマスクを製作中。Photo : SOPHIE CARRE
Photos : ©DIOR / Courtesy of DIOR
Text:B.P.B. Paris