森永邦彦さんがデザインする「アンリアレイジ」のメンズ、「アンリアレイジ オム」の2回目のコレクションが北青山の秩父宮ラグビー場で発表された。今回もメンズをスタートさせるきっかけとなったスタイリストのTEPPEIさんのワードローブに着想を得て、ハンドワークをアクセントにしたノスタルジックなコレクションを繰り広げた。
ピアノと少年の声でアレンジした「THE BLUE HEARTS」の楽曲『青空』が流れる中、コレクションはスタート。前回のサークルのランウエイとは真逆で、細くまっすぐ長いランウエイをモデルが闊歩した。オープニングに登場したのは、大きなパールビーズを全体にあしらったジャケットとショートパンツのセットアップ。衿もとを大きく開けてデコルテを強調させたジャケットからは、エレガントなレディスのスタイルをも連想させる。
レディスの「アンリアレイジ」が“未来”を大きなテーマとしたクリエーションであるならば、メンズの「アンリアレイジ オム」は“過去”を振り返るクリエーション。2000年初頭の原宿の町に溢れていた、古着やモード、ストリートをミックスして着こなす人。東京独自のファッションの熱がインスピレーション源となっている。今シーズンはさらに過去に遡り、森永さんの小学生の頃に発想を得たものに。
新鮮なアイテムとして登場したのは、膝上丈のショートパンツ。ボクサーパンツだったりニットパンツだったりデザインはさまざま。このアイテムが、テーマとなった“少年時代の原風景”をより一層色濃く表現している。
春夏シーズンということもあって、軽やかさもポイントになっていた。ふんわりとしたエアリーな素材や透け感のあるもの、そしてコットンのビッグシャツなど。モデルが闊歩することで風が表れ、風をはらみ、それぞれのアイテムが大きく膨らむ。軽やかと同時に大きなシルエットも描いていた。
幼少期の純粋な気持ちを表すモチーフの一つに、ざっくりしたローゲージニットにあしらわれた男の子と女の子が手をつないでいる人形のモチーフが印象に残った。これは実際に昔実在したモチーフで、それを再現させている。
デザイナーの森永さんがファッションに出会う、もっと前の時代。少年たちの心は純粋で汚れなく、未熟さも魅力として感じられた。今回もどこか懐かしく、手仕事の温かさがノスタルジーをよみがえらせるディテールに目を引いた。未完成らしさが味となったアップリケや、ステッチ刺繍など。ステッチのモチーフはモデルの顔やボディにも施され、それは子供がスケッチブックに描くいたずら書きのようにも見えた。