愛の唯一の正解は、
結ばれることではない。
――楽曲のアイデアやインスピレーションは、日々楽器に触れる中で生まれてくるもの?
じゅり:日々、日記みたいな感じで曲をボイスメモしているんです。「本日カレーを食べました」みたいなメモに合わせて可愛らしいメロディをつけたり。5秒とか10秒しかないものなんですけど、それをほぼ毎日記録しています。朝起きてちょっとやって、寝る前にもまたやるみたいな感じ。ルーティンになってるから、やらないと物足りなくて落ち着かないくらい。寝坊したらやらないけど(笑)。
――面白いです!それは一節が曲に生かされることも?
じゅり:はい!新曲「Polaroid」の一部はロケバスの中で空を見上げながら書いたものなんですよ。曲作りの時にコードやメロディのアイディアをボイスメモから引っ張ってきて、このメロディを中心に曲にしよう!みたいな作り方をすることが多いです。
――呼吸するように作っているんですね。
じゅり:そうかもしれません。あまり意識しないで作っています。「Polaroid」は、番組(「オオカミちゃんには騙されない」)で好意を持った人に対して、こんな気持ちがあったよ、とかわかって欲しいなと思っていた気持ちと、その後、そんな自分を客観視して書いた歌詞が一緒になっています。パッチワークみたいな曲です。
――日本での活動スタートは2022年。大好きな音楽を仕事にしてみて、今、どう感じていますか?
じゅり:この間リリースイベントで、曲を聞いて泣いてる方がいたんです。それも幸せそうな顔をして泣いていて……。その姿を見て、ミュージシャンとして仕事をしてる意味があるなって初めて思いました。いろんな音楽家が、音楽を仕事にする理由として「この世界を変えたいから」とか、「みんなのために」とか、「自分はこれしかできないから」などと言うけれど、私はそこで初めてこう実感したんです。「自分のしていることがただそこにあって、共感してくれる人がいること。それが私が役に立てた証だ」って。私が誰かに一方的に影響するのではなく、同じ作品の中へ入り込むように共感できることが幸せだなと思っています。初めは「かっこいいから」というだけで始めた音楽を続ける理由が、日々どんどんアップデートされています!
――じゅりさんの音楽のルーツにはクラシックとジャズがありますね。届ける音楽の中にもその魅力を混ぜたいと思いますか?
じゅり:今の人には、クラシックもジャズも伝統的なものに聞こえるかもしれないけど、当時の環境や歴史を勉強しながら曲を聴くと、これはその時流行ってたものだって思うんです。バッハもベートーヴェンもその時のポップス。だから私も、時代ごとのポップミュージックを勉強してるし、作るのは今の時代のポップミュージックなんだっていう気持ちです。
ゴールデンエラにタイムトラベルしたらビッグバンドをやるかもしれないけど、この時代に20代の私ができることはなに?って。今しかできないもの、この時代にしか作れないものを残したい。それが私自身の人生の記録になるなんて、悪くないと思う。
――「オオカミちゃんには騙されない」の期間は、じゅりさんにとってどんな経験になりましたか?
じゅり:「オオカミちゃん」ではメンバーと3ヶ月間くらい密に撮影をしていて、大人になった今、もう決して生まれなさそうな友情が育まれました。その場でしか生まれない恋もありました。どうやって人に気持ちを伝えるかをすごく考えたし、本当に勉強になった。愛の唯一の正解は結ばれることではないと思っています。正解や不正解すらないかもしれませんね。私はそれを体験しにいったんです。
3ヶ月の間、人のことを好きになって、女の子たちと仲良くなって友達ができて……。そういうことが私にとっては大事で、人生の中で最後まで大切にしたい思い出になった。結果だけじゃないんです。だって人生って、評価をもらったり、あるステップに来たら終わるわけじゃないと思います。最後の一息まで人生は続くし、更新されるし、成長する。そうすると結果のために頑張ることはそこまで大事じゃないかもしれない。
――素敵です。今は日々、どんなふうに過ごしてますか?
じゅり:最近はライブやイベントを積極的にやっているので、毎日練習しています。弾き語りの練習を毎日して、曲のメモも毎日つけてますね。あとはレコード屋さんや本屋さんに行っています。
――読書も好きなんですね。どんな本を読みますか?
じゅり:ずっと好きなのは夏目漱石です。生まれ変わったら苗字は絶対「夏目」がいい(笑)。中国語に訳された小説を子供の頃から読んでいたのですが、日本人特有の考え方を感じますね。抽象的な表現というか、繰り返し読まないと真意がわからないものが多くて、色々考えさせてくれる文学です。
――創作に真摯に向き合いつつ、ファッションや文化にもアンテナを張っているじゅりさん。今チャレンジしていることは?
じゅり:アルバムを出したいと思って曲作りをしています。シングルではいつも、1曲3分や4分の間、あなたと私が同じ空間にいられたら、と思って作っているけれど、アルバムはその時間分の長さで同じ気持ちになってもらえるものを目指しています。たくさん曲を書いたからアルバムを出そう!ということではなく、一つの作品としてのアルバムができたらなって。そんな思いが強いから、360°全方位を見たくて、全部自分で作りたいんです。成功するかわからないけどね。楽しみにしていてください!
じゅり
中国出身。4歳の頃、テレビでピアノを弾いている人を見て「かっこいい」と思ったことがきっかけで音楽に触れるようになる。プロを目指し、北京の音楽学院卒業後、アメリカの名門、バークリー音楽院卒業。ニューヨークで音楽活動を開始し、2022年より日本で活動をスタート。3月に、トラックメイカーGimgigamとのコラボレーションで1stデジタルシングル「OTSUKARE」をリリース。今年9月にシングル「Polaroid」を発表。出演したNetflixリアリティシリーズ「オオカミちゃんには騙されない」で注目を浴びる。
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