M A S U(エムエーエスユー)/後藤愼平

後藤愼平さんインタビュー

基本を学び、自ら「基本」を作り出す

 服の持つ既成概念やコードを再定義し、現代の男性像を服で提示するエムエーエスユー。デザイナーの後藤愼平さんは、文化服装学院時代にファッションへの視点が明確化された。

 「高校時代、カーゴパンツをカッターでボロボロにするようなリメイクはしていましたが、ミシンを踏んだこともなければパターンも知らない。だから1年生の時は必死でした。文化では1、2年次に縫い代やステッチ幅、使う針まで指定されて、技術の基本を叩き込まれます。それが決まりを強制されているようで、当時の僕には疑問でした。マルタン(マルジェラ)の、縫い代がボロボロの仮縫いシリーズだってクリエイションなのに、と、その疑問が原動力になったんです。教え込まれた技術は、3年の6月頃から働き始めた『ライラ』でお直しやリメイクをする時に、結果的に生きたのですが。

文化服装学院生時代
課題に追われながら遊び、遊んではまた課題を制作。3年の6月頃から「ライラ」に携わるように。このチャンスを逃すまいとライラの仕事に邁進。
2年生の頃の作品。手作業ベースの加工をデザインに取り入れる手法に、現在とつながる作風が見て取れる。

 3年でメンズコースに進むと、メンズ服には、変わらないよさと、変われない愚かさがあると思いました。僕はそこを行き来しながら遊ぶのが好きだということがクリアになったんです。それがエムエーエスユーのコードをすり替えた記号遊びのような服につながっています。ただ、服で遊ぶには技術であれ知識であれ〝基本〟を知っていることが必要。同時に〝基本〟を自ら生み出す感覚で物を見られているかどうかだとも思います。どの服も正解だけど自分だったらこうするとか、今の時代にこれはいらないなとか。常に疑問を持ち、突発的にいいと思ったものに対してもなぜ?と理由探しをちゃんとできるかどうか」

 では服を仕事にする理由は?と尋ねると、「洋服には無形の価値がある」という答えが。

  「服を買った時や着て会った人のこと、服自体のストーリー。そういう形のないものこそ、僕にとっては服の価値です。少しでもそれを多くの人に伝えられればいいかなと。1月にはパリで展示会も。向こうに合わせず〝自分の言語〟で服を作り、日本以外の仲間を増やしたいです」

2023SS

ダンシングアノラック¥52,800 

ディスコフーディ¥64,900

ビジューつきデニム¥198,000 エムエーエスユー(ソウキ)

コレクションタイトルは「READY」。後藤さん自身が納得できるレベルのものづくりにたどり着き、いつどこでも勝負できる準備が整ったという意味、そしてマイケル・ジャクソンのオフスタイルがステージ衣装と同様に美しく見え着想源になったことからつけられた。ミックス感覚がさえる服は、社会規範と服の関係、服とTPOの常識を捉え直す。

2023SSの着想源になったもの
(左)’23年春夏の軸になったマイケル・ジャクソンについてリサーチした際の本。右下のマイケルの衣装本『キング・オブ・スタイル』は、文化の図書館で見つけて自分でも購入したという。(右)メンズ服のデザインにおいて男性性の既成概念やコードを疑う後藤さんが「バイブル」と呼ぶ一冊。ʼ21-ʼ22年秋冬を構想していた頃から読んでいる。/『男らしさの終焉』グレイソン・ペリー 著、小磯洋光 訳、 フィルムアート社

ʼ23-ʼ24年秋冬制作中の様子。アトリエにはそのムードボードが。

photographs: Jun Tsuchiya (B.P.B.)

Shinpei Goto
1992年生まれ、愛知県出身。2014年、文化服装学院アパレルデザイン科メンズデザインコース卒業。卒業後、ライラに入社し、オリジナルブランドの企画、生産に携わる。退社後、’18-’19年秋冬より、エムエーエスユーのデザイナーに。
Instagram:@masu_officialaccount   

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