「キディル」デザイナー 末安弘明インタビュー

2022.02.09

一緒にやりたい熱い気持ちを相手に伝える。コラボレーションはまずはそこから

――今回も前回に引き続き素晴らしいロケーションでの発表でしたね

前回は草月会館。そして今回は鳩山会館が会場でした。12月の頭まではパリコレクションに行こうとしていたんですが、結局コロナのオミクロン株が世界中に蔓延して叶いませんでしたね。パリでのショー会場も庭付きの一軒家を探していたんですが。その流れで日本でもと。12月末から探し始めたんですが、鳩山会館はイメージ的にぴったりでした。家から庭にモデルが出てくる感じが想像できましたし、庭の広さもパーフェクトでしたね。迷うこともなく即決。

ヘンリー・ダーガーとの出会い

――今回のコラボについて教えてください

ショーのテーマが「THE OUTSIDER」。芸術に関して教育を受けず、流派や流行にとらわれずに自然に表現された芸術作品“アウトサイダー・アート”の第一人者ともいわれる、ヘンリー・ダーガーの作品とコラボレーションさせていただきました。15年前くらいになると思うのですが、原美術館で展覧会をやっていたんです。その時期に合わせて美術手帳で特集したり、さまざまな雑誌でも取り上げていたのですが、その頃知りました。画集も買い、ドキュメンタリーの映画も見ました。その後デザイナーとしてクリエーションをするうえで常に頭のどこかにダーガーの作品があったのですが、今回やっとコラボレーションすることができました。

ダーガーは現役の時には作品を1つも発表せず、亡くなってから住んでいたアパートの大家であったネイサン・ラーナーさんが世に広めたらしいんです。そのラーナーさんの奥さんがキヨコ・ラーナーさんという日本人女性で、ニューヨークの所蔵している美術館に連絡をしたのち、最終的に作品の権利者のキヨコさんに許可を得て実現しました。
今回キヨコさんがタイミングよく日本に帰国していて、このショーに来てくれたんです。“涙が出そう。本当に良かったわ”と、心から喜んでくれたのが嬉しかったです。

前回とは違うガーリースタイル

――今回のクリエーションのポイントは?

ダーガーの絵を刺繍、プリント、ニットで柄に落とし込みました。色もイエローや紫など、ダーガーのカラーパレットからの提案。今シーズンのキーカラーです。そして43年もの長い時を経て綴られた、ダーガーの15,000ページもの長編小説に登場する、世界と戦う7人の女の子ヴィヴィアン・ガールズのモチーフ。そのヴィヴィアン・ガールズは自分の中で解釈して出した、ガーリーなスタイルです。前回のトレバー・ブラウンはフェティシュでエロティクな雰囲気だったんですが、今回は少し違う世界観で表現しました。ヘンリー・ダーガーという人物を理解したうえでのガーリーを表現したんです。ただ甘いだけじゃない女の子。サイケデリックな色合いがそうさせているのかもしれません。

今回はきちんとテーラードを作って男の子に着せたいと思って服を作りました。最近は男の子、女の子の区別することのないファッションを少し意識しています。人間として相手を客観的に見たときに何が似合うかを考え、その人に合わせて作る感覚。お店でもメンズとしてデザインしたものを、普通に女性が買うことが多くなってきているんです。この先レディス、メンズの垣根がなくなって、サイズ展開でフロアに並べられるようになっていくのかもしれませんね。

――次に何をというときの発想はアートから?

パンクが好きなので、2,3年ぐらい前はパンクバンドや関連するグラフィックアートなどとコラボレーションしていましたが、それだと服を作るうえで広がりがなくなってくると思いました。そういうこともあって、そこから脱却しなければと。バンクのカルチャーからは外れずに、精神的な繋がりを強く求めるようになってきました。

作ることで自分の生きざまを表現しているアウトサイダー・アートのヘンリー・ダーガー。自分も服作りをすることで生きていることを表現している。パンクって表面的にとらえられがちなんですが、目に見えない精神的なつながりのことだと思うんです。音楽だけではなくてね。前回のトレバー・ブラウンもそうですが、そういう繋がりを感じながら一緒に何かを作り上げていくのがすごく楽しくなってきたんです。

photographs: Kyohei Hattori

末安 弘明 (すえやす ひろあき)
2014年、KIDILL(キディル)をスタート。「KIDILL」とは、カオスの中にある純粋性を意味した造語。自身が90年代に体験してきたパンクカルチャーを軸に、現代の新しい精神を持った不良達へ向けた服を制作。

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