2019年に楽天が東京のファッションウィークの冠スポンサーとなり、「Rakuten Fashion Week TOKYO」と銘打たれたのが2020年春夏から。コロナ禍でのフィジカルショー中止の時期を経て、2021年春夏より特別招待枠「by R」がスタートした。この枠はこれまで、海外進出済みの日本ブランドが凱旋的にショーを行う(ファセッタズム、アンダーカバー、トーガ、アンリアレイジなど)か、当時あるいは今現在も、ブランドの発表形態としてランウェイショーがデフォルトではないブランドが特別にショーを行う(タカヒロミヤシタザソロイスト.、ア ベイシング エイプ®︎など)のが常で、いずれの場合も、日本のブランドから選出されていた。それが今回、2024年秋冬の「by R」で選ばれたのは「Marimekko(マリメッコ)」。言わずと知れた、1951年創業のフィンランドのデザインハウスだ。運営サイドには、世界的に多くの人が認知するマリメッコにこの招待枠を託すことで、東京のファッションウィーク全体の知名度向上をはかる目的があったという。
ライフスタイルブランドのイメージが強い同ブランドが、どんなファッションショーを見せるのか? 関係者たちは期待を胸に、近年、ショー会場として定着した感のある「東京国立博物館 表慶館」へと向かった。
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マリメッコといえば、誰しも思い浮かべるのは大ぶりの花モチーフ「ウニッコ(Unikko)」だろう。今年は、このウニッコ柄が誕生してから60周年の節目の年であり、表慶館に入ってすぐに観客を迎えたのも、青色のウニッコテキスタイルだった。
そのため、1stルック(写真上)はもちろんウニッコ柄。グレーのニットトップの柄がまず目を引くが、よく目を凝らすと、ネックポーチやスカートにも立体モチーフになったウニッコが装飾されている。立体のウニッコ装飾は、この世界一有名な花柄に新たな表情を与えていた。特に、ネックポーチは、リアルなアイテムとしての魅力が際立つ。
ショー全体を貫いていたのは、この「リアルさ」であり、アンリアルを求めがちなランウェイショーという場にあっても、地に足のついたアイテムが次々に登場する。人種も性別も、体型も様々なモデルたちがマリメッコをまとい歩く姿を見ていると、街中を行き交う人々を見ているよう。それもそのはずで、十字になっていたランウェイは、渋谷のスクランブル交差点をイメージしていたのだという。
ウニッコ柄は他にも様々な形に表情を変え、そのデザインバリエーションは圧巻。タック入りの白いシャツには白いウニッコ柄がプリントされ、さらに、グラフィックの大きさを変えて小花柄としてダウンジャケットにもオン。また、初となるデニムライン「Marimekko Maridenim(マリメッコ マリデニム)」のデニムにも、溢れんばかりのウニッコが咲き誇る。現クリエイティブ・ディレクターのレベッカ・ベイが熱望したというFPMこと田中知之のDJプレイにあわせて展開されるウニッコいっぱいのコレクションは、見る人の心奥に爽やかな一陣の風を届けていく。
幾何学柄やボーダー×ストライプのルックも途中で現れ、ウニッコ柄いっぱいのコレクションにアクセントを生み出していた。特に、上のルックのシャツとベストは、明るいカラーリング同士の柄のレイヤードが、日常着の中の遊びとなって効いていた。ベストの胸元にさりげなく施されたウニッコ刺繍もにくい。
「ドレスアップとドレスダウン」をコンセプトにしたショーのラストは、オールブラックのルック(写真下)。今季を象徴するネックポーチと、ウニッコモチーフつきのペンシルスカートによって、黒色にも軽やかな表情が生まれているのがマリメッコらしい。誰もが知っている柄の新しい側面を打ち出した今コレクションで、マリメッコは、クリエイションの力で優れたデザイン遺産は何度でも生まれ変わることを示したのだった。
フィナーレに現れたレベッカ・ベイさん。
Marimekko
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