舟山瑛美さんがデザインを手がけるFETICOが、Rakuten Fashion Week TOKYOで2024年秋冬コレクションを発表した。会場となったのは「東京国立博物館 表慶館」。重要文化財の建物内で、夜の始まりとともにショーはスタート。
今季のテーマは「Eternal Favorites」、直訳すると「永遠のお気に入りたち」。そこに込められたのは、女性が年齢を重ねることや世間体を理由に、好きなものを諦めないでほしいという思い。「好きなものを大切にすることは、自分自身を大切にしていることと同じ。好きなことに素直な自分はより愛しく思える。お気に入りと共に人生を歩むことは、何より幸せなことだから」というデザイナーが、何歳になっても「好き」の気持ちに素直でいられるようにと、本能的に惹かれるエッセンスをコレクションに詰め込んだ。
そうして散りばめられた舟山さんの「好きなもの」は、チャールズ・アダムス原作のホラーコメディー映画『アダムス・ファミリー』(1991年)の人気キャラクター、ウェンズデーや、アメリカの絵本作家であるエドワード・ゴーリーの作品、ドイツ人アーティストのハンス・ベルメールの球体関節人形。幼い頃から好きだというこれらのホラーやゴシック、シュールレアリスティックなテイストの作品群は、今コレクションの重要なインスピレーション源だ。
特にウェンズデーには思い入れがあるようで、
「小さい頃に見た映画『アダムス・ファミリー 』のウェンズデーは、キラキラした可愛い女の子たちとは何もかも違った。自分のスタイルを貫く彼女は、残酷で陰湿なのにどこかチャーミングで魅力的で、人と異なることを恐れない強さを教えてくれました」
とコメントしている。
トップ画像のファーストルックでは、ウェンズデーを彷彿とさせるゴシックスタイルのドレスを披露した。大きな白襟とフロントのクロスカットのディティールが目を引くアイテムに続き、3ルック続いてブラックのベルベットドレスが登場。白い肌にヴァーガンディリップとブルーアイシャドウをのせたメイクも相まって、観客をダークな雰囲気へと引き込んだ。今コレクションの主役は、このベルベット。福井県鯖江市で生地から制作したというベルベットはキュプラとレーヨンの再生繊維で構成され、優雅なドレープとマットな光沢がコレクションを上質に演出している。
クロスカットのディティールも象徴的だ。ドレスの胸元やトラウザーのサイド、デニムジャケットの背面など様々なアイテムに施されたほか、花のシルエットにアレンジして、ニットやビスチェにも取り入れた。フェティコの代名詞ともいえるクールな肌見せのディテールは、ゴシックエッセンスを感じるカッティングで見事に刷新された。
ボディスーツやソックスの無縫製ニットの編み地は、エドワード・ゴーリーの絵本に描かれるヴィクトリア洋式の邸宅の壁紙にヒントを得てデザイン。レイヤードスタイルに瀟洒でクラシカルな装飾性をプラスしていた。
今回、ブランドが初挑戦したのは、キルティングアイテム。大きなボア襟のコートや、ビックシルエットのスカート、ビスチェを披露した。素材には環境に配慮した高機能中綿を使用し、フェイクレザーとナイロンの2種類を採用している。ボディコンシャスが得意なフェティコが、新たな一面をのぞかせた。
小物では、二つのコラボレーションが実現。ドームスタッズが目立つハンドバッグは英国のバッグブランド「ザ・ケンブリッジサッチェルカンパニー(The Cambridge Satchel Co)」とのコラボレーション。ヴェールとパールをあしらったバケットハットと、ボーダーハットは英国のハットブランド「ミサハラダ(misa harada)」と協業した。
ブランド初展開のジュエリーにも注目したい。大きなボールの意匠が特徴的なチョーカーとイヤリングがお目見えし、ベルベットリボンのヘアクリップやリバーレースのスカーフ、透け感のあるシルクのナロースカーフ、バラの刺繍を入れたチョーカーという充実のラインナップ。ヴィクトリア調のレースアップブーツも披露した。
ショート丈のジャケットはビルドアップショルダーラインからケープのように袖へつながる立体的なパターンで構築している。チュールのベビードールブラウスやネグリジェのようなキャミソールドレス、ガーゼのシャーリングドレスは、ゴシックムードのコレクションにロマンティックなアクセントを与えていた。
デザイナーの舟山瑛美さん
FETICO
WEB : https://fetico.jp/
Instagram : @fetico_official