©Chieko HAMA
デザイナーの宮前義之(みやまえ・よしゆき)率いるエイポック エイブル イッセイ ミヤケ(A-POC ABLE ISSEY MIYAKE)が、パリ・ファッションウィーク中に第2弾となるインスタレーション『So the Journey Continues』を開催し、3つの最新プロジェクトを発表した。
エイポック エイブル イッセイ ミヤケ(A-POC ABLE ISSEY MIYAKE)は、異分野・異業種との協業から様々なプロジェクトを立ち上げ、異なる視点や発想を取り入れながら、服づくりの新たな可能性を探究するブランド。
『So the Journey Continues』より。©ISSEY MIYAKE INC.
一つ目は、新進気鋭の写真家、梅本健太(うめもと・けんた)との協業によるプロジェクト「TYPE-VIII Kenta Umemoto project」。梅本が撮り下ろしたビジュアル「FlORA 花」をブランド独自のスチームストレッチ(Steam Stretch)技法の服に熱転写プレスすることで、偶発的な美しさを表現している。
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インタレーションでは完成したドレスとジャンプスーツと共に、プロジェクトのために制作された「FLORA 」のシリーズが展示された。
梅本健太はデジタルとマニュアルを掛け合わせた手法により、新たな写真表現を追求するパリ在住のフォトグラファー。「FlORA 花」は梅本の代表作。光と影が織りなす花のビジュアルは、力強いストロークを効かせた絵画のようでもあり、見る者のイマジネーションを刺激する。©ISSEY MIYAKE INC.
二つ目は、アルゴリズムとエイポックの技術を掛け合わせたプロジェクト「TYPE-IX Synflux project」。Synfluxは最先端のデジタル技術によってファッションデザインの革新を目指すデザインラボラトリー。テキスタイルの廃棄を減らすべく、幾何学やアルゴリズムを応用した新たなデザインのシステムを開発し、運用する。
今回のプロジェクトでは、ブランド独自の形状記憶素材「TYPE-U」のジャケットを原型に、一枚の布の上に最適化された無駄のない美しいパターンを形成。そこから2つのジャケットが展開された。
Synfluxのデザインシステムを用いることで、衣服の機能性や意匠を損なうことなく、布の廃棄を最小限に抑えた合理的かつ持続可能な衣服デザインを実現できる。©Chieko HAMA
ジャケットの製作風景より。©ISSEY MIYAKE INC.
三つ目は、東京大学大学院の研究グループとの協業プロジェクト「TYPE-X Inkjet 4D Print project」。これは、インクジェットプリンターでパターンを印刷したシートに熱を加えると、あらかじめ設計された立体形状が自動で折れるというもので、アクセサリーなどの製品化が期待される。さらに、富士フイルム株式会社が開発した「高輝度メタリックインクジェット技術」による表現が加わり、多彩な色合いと折り紙形状を同時に表現することが可能となった。
加工を施したシートを70度以上のお湯に入れると立体的な形になる。実質的にあらゆる多面体を自動で折れる世界初の技術なのだそう。©ISSEY MIYAKE INC.
会期中には、イッセイ ミヤケの特殊技法スチーム・ストレチ(Steam Stretch)とベイクド・ストレッチ(Baked Stretch)の技術を体験できるワークショップも実施。
ワークショップのコーナー。©ISSEY MIYAKE INC.
アート、先端テクノロジー、職人技術を融合させ、着実に進化するこのブランドならではのクリエイション。未来のものづくりへの期待が膨らむ。
Text : B.P.B. Paris