2021年春夏東京コレクション総合レポート <コロナとファッション。オンラインの時代> ーvol.2

2. オンライン配信で可能なことを考える。


 今回のRakuten Fashion Week TOKYO の1週間のカレンダーを見ると、新型コロナウィルスの感染が収束しない社会状況を考慮して、オンライン配信が大半である。とはいえ、1日に1〜3ブランドは、観客数を削減して、リアルなショーを敢行することになっている。通常のコレクション時期には、1週間以上前から続々とショーのインビテーションが私の手元にも届くものだが、今回は、2、3通という少なさだった。


 それならば、と気分を切り替えて、オンライン配信だけで、コレクション記事を書くことに挑戦してみようと思った。前回紹介したパリメンズを見ても、デジタルを使って、意表をついた実験的な動画を作成したブランドがあれば、服のアップを付け加えることで、ショーでは見えにくい素材感が鮮明に見えたり、また、ショーが生まれるプロセスや楽屋裏をあえて見せて、親近感を生み出すところがあったり、言ってみれば、ブランドが持つそれぞれの世界観を表現することが、デジタルではできるのだとわかると、期待も膨らんだ。東京では、どんな独創的なプレゼンテーションをデジタルで表現して、オンラインで届けてくれるのだろうか?


 ところが、蓋を開けてみると、東京ファッションウィークのオンライン配信は、少々残念と言わざるを得なかった。それぞれのコレクションの内容が悪いというわけではない。全体に時代の気分を反映して、ブランドごとに、抑制された、そして世の中に歓迎されそうな(つまり売れそうな)コレクションに仕上がっている印象を持った。私が言いたいのは、その表現方法にもう少し独自性がほしかったということである、ショーの代わりにオンラインになってしまったが、それをポジティブにとらえて、ショーでは伝えられないものを表現してほしかったと思うのである。無観客のショー映像を流すところが多かったが、オンラインで鑑賞されることが目的ならば、HYKE(ハイク)がブランドを立ち上げた初期に作っていたような、服をごく少数のモデルが着用して動く様子を淡々と見せる映像や、ここ2シーズンsupport surface(サポートサーフェス)がショーの代わりに制作したコレクション映像のようにアップや後ろ姿まで丹念に見せるものというところまで行ってほしかった。そしてこの2メゾンはどちらも、音楽が既製の曲ではなくオリジナルというところにも注目したい。奇をてらったものがなくても完成度の高い映像は生まれる。



「ハイク(HYKE)」2014-15年秋冬コレクション
服をごく少数のモデルが着用して動く様子を淡々と見せている



support surface Spring & Summer 2021 NEW collection
support surface(サポートサーフェス)がショーの代わりに制作したコレクション映像
上野公園内の「法隆寺宝物殿」で撮影。音楽は、音響作家のSawako。


 そんな中で、ユニークなデジタル映像を見せたのは、リアルなショーも行ったdoublet(ダブレット)。リアルなショー自体も、ゾンビたちが集まって一人ずつ歩いて見せる奇怪なショーなのだけど、その前に流すムービーはさらにホラー感漂う物語映像。ダブレットは、7月のパリメンズにもオンライン配信で参加しているが、こちらは同じコレクションでも編みぐるみの熊を主役にしたほっこりした物語。ところが、今回発表されたのは、古い洋館を舞台にしたゾンビたちのパーティを思わせる幻想的な映像。Youtube後半は、ゾンビたちが服をまとってランウェイ(?)を歩くショーの動画と、パリメンズとイメージは全く異なる。



doublet | Rakuten Fashion Week TOKYO 2021 S/S


 ショーに加えて、このような動画を企画制作するのは簡単ではないだろうが、コレクションに物語性を持たせようとするデザイナーなら、チャレンジしてみてほしいと思わせてくれた。

 この他、10/14のRobyn Lynch(ロビン・リンチ アイルランド)、Tiscar Espagas(ティスカー・エスパガス スペイン )、Fabian Kis-Juhasz(ファビアン・キシュハス ハンガリー)は、昨年新設されたファッションコンテストbigのファイナリストで、参加した海外デザイナーだが、イメージを作るにあたってのコンセプトの強度や独自性は、日本人にも見習ってほしいと感じたものである。特に、ロビン・リンチは、純粋に映像として見て楽しい。



Robyn Lynch | Rakuten Fashion Week TOKYO 2021 S/S

TISCAR ESPADAS | Rakuten Fashion Week TOKYO 2021 S/S

Fabian Kis-Juhasz | Rakuten Fashion Week TOKYO 2021 S/S


 ところで、日を追うごとになぜか、オンライン配信にも変化が出てきたのは、おもしろい現象だ。

 10/15のヒロココシノは、長らくショーを観て来なかったが、オンラインをうまく活用して、六甲の旧自邸でピアノの生演奏をバックに、自分の描いた絵画を展示しつつ、その絵画が服地としてドレスになった様子を見せるというプレゼンテーションだった。素材感がよく写っていることに驚く。

HIROKO KOSHINO | Rakuten Fashion Week TOKYO 2021 S/S


 最終日(10/17)のMITSURU OKAZAKIは、ルー・リードのWalk on the Wild Sideに合わせてモデルが東京を駆け抜ける動画で、モデルのキャスティング(特に女性モデル)が今ひとつだったし、服の合わせ方もこの曲にするならもう少し練ってほしかったけど、スピード感は良かった。

MITSURU OKAZAKI | Rakuten Fashion Week TOKYO 2021 S/S


 それから、山口壮大のKORI-SHOW PROJECT(こりしょうプロジェクト)の「うつつ」という映像は、キモノを巡っての考察、とでもいうのか、過去の女性(芸者)と現代の女性(モデル)を対比させてキモノの着方や仕草を見せつつ、AIが参加して、映像が溶け合うという、説明を聞いただけではよく飲み込めない作業で生まれたデジタル映像。単なる撮影ではないところに興味はそそられるが、今後の展開に期待したい。

KORI-SHOW PROJECT | Rakuten Fashion Week TOKYO 2021 S/S


 北澤武志のDRESSEDUNDRESSED(ドレスドアンドレスド)は、ブランドがずっと追求してきたジェンダーの問題を映像を使って、解答を提示したというのだろうか。見ているうちに、男性なのか女性なのか分からなくなってくる不安の中に立たされるが、いつもながら精緻に作られた服は美しい。

DRESSEDUNDRESSED | Rakuten Fashion Week TOKYO 2021 S/S


 というように、オンライン配信という形でのコレクション発表は、まだまだ伸び代がありそうだ。「鬼滅の刃」ではないが、日本はこれほどアニメーションが発達していて、海外からも注目されているのだから、ファッションをアニメーションで表現するところが少しはあってもよかったと思わずにいられない。来年の東コレはきっとリアルなショーがもっと増えているだろうけど(コロナはまだ残っていそう)、せっかくだから、デザイナーの人たちはデジタルでできることにも目を向けていただきたいものである。

 次回は、リアルなショーで発表したブランドを紹介する。


text:西谷真理子


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