世界へ飛び出した日本人
vol.4 安室麗奈さん

「ジュエリーを作ってみると、アイデアがたくさん浮かんできた」

天真爛漫さの中に芯の強さをのぞかせる安室さん。

 努力の甲斐あり充実した学校生活を送っていた安室さんは、授業の一環で受けたワークショップでジュエリー制作に惹かれていく。
「ジュエリーはもともと好きで、高校の時からファッションのコーディネイトには欠かせないものでした。作る機会はなかったのですが、実際に作ってみるとすごくおもしろくて、アイデアがたくさん浮かんできたんです」

同コレクションのイヤリングとネックレス。Photos : Yurina Nishihara

 明るく前向きな安室さんは「人に恵まれてきた」とこれまでを振り返る。特にファッションデザイナーのマリアナ・ラドレ(Marianna Ladreyt)と、ジュエリーデザイナーのクリストフ・ロート(Christophe Lhote)との出会いは大きい。
「研修の長期契約をしてくれたマリアナがクリストフを紹介してくれて、アシスタントをさせていただきました。その頃、イエールの作品のアイデアがすでにあって、それを見たクリストフが『すごくいいけど、もっといい仕上げのやり方があるよ』って教えてくれて。働きながら勉強させてもらっている感じでした」

籐を編むのは緻密で根気のいる作業。

写真上:ジュエリーに使う籐。下:指輪などの小さなピース作るときは、細く削ってから編み込んでいく。削るための道具は自作。

制作段階では3Dプリンターで作った枠に籐を実際に編み込む試作を行う。この作業で、ボリュームや籐のしなり方を確認するそう。

 ジュエリー制作で多くのインスピレーションを受けるのが、家具やオブジェ。シャルロット・ペリアンやフランク・ゲーリーなど、建築家の作品からもアイデアを得るという。
「例えば、フォンダシオン ルイ・ヴィトンの建物もそうですが、ジュエリーの大きいバーションのようにも見えるんです。大きなものの線やボリュームからインスパイアされて小さなジュエリーを作るのが好きですね」
 作品の中には指輪になるイヤリングなどもあり、1つで数通りの楽しみ方ができるのも彼女のジュエリーの魅力だ。
「意味を2個、3個作りたいのですよね。このカーブがあるんだったらこっち向きでも使える、みたいに。そうゆうことをよく考えています」

壁に貼られたインスピレーションソースの写真。

フランク・ゲーリーによって設計されたフォンダシオン ルイ・ヴィトン。

着用方法を変えて楽しめるリング。写真提供 : Rayna Amuro

「日本は私の強み」

 黙々と指先を動かす安室さんの作業場は自宅のリビング。整理整頓された道具入れと机まわりから几帳面さがうかがえる。傍らの棚にはイエールで授与されたトロフィーと花束が飾られ、その下にあるのは沖縄に自生するトウツルモドキで編まれた工芸品の籠。沖縄は安室さんの祖父母の出身地でもある。

写真上:作業中の安室さん。下:ヤシの形のトロフィーが置かれる棚。記念の花束はドライフラワーに。

「この籠の職人さんと何かコラボができたらいいねって話しているんです。もともと日本の伝統工芸に興味がありましたし、現地の雇用にも繋がったらいいなって。こんなにすばらしいものなのに、あまり売れていなかったり、値段も安かったりで、なぜだろうって思うのです。多くの職人さんは技術を磨いていますが、昔からある形をずっと作っているんですよね。私は、技術は無いですがデザインはできるので、コラボができればと」

沖縄の工芸品、トウツルモドキの籠のすばらしさを説明する安室さん。

「2、3軒まわって編んでもらえないかと交渉したのですが、ベーシックなのものは作れるけどファンタジー系は作れないなどの理由で、まだ実現できていません。ですが、開拓していきたいです。日本は私の強みなので。古いものにはもっと大きな可能性があると思いますし、その技術を後世に残していきたいですから。でも私が継ぐわけにはいかないので、一緒に盛り上げて行きたいです」

愛犬の“いなり”と。散歩コースのヴァンセンヌ城の前にて。

 現在、複数のショップからの問い合わせを受け、コレクションの一部を販売に向け準備している安室さんは「気に入ってくれた多くの方々に、身につけていただけるようになったら嬉しいです」と話す。新たなチャンスを掴み、夢を語ってくれた彼女の今後が楽しみである。

安室麗奈(あむろ・れいな)
1996年生まれ、神奈川県出身。ジュエリーデザイナー。東京のバンタンデザイン研究所高等部でファッションを学び、2016年に渡仏。パリのステュディオ・ベルソーを’19年に卒業。デザインを学ぶ過程で参加したワークショップをきっかけにジュエリーの道へ。セリーヌのアクセサリー部門での研修を経て、クリストフ・ロートに師事。自身のブランド「RAYNA AMURO」を立ち上げ、ファーストコレクションが’21年度イエール国際フェスティバルで市民賞に輝く。
RAYNA AMURO公式サイト:https://www.rayna-amuro.com/

Photographs:濱 千恵子 Chieko Hama
Text:水戸真理子 Mariko Mito(B.P.B. Paris)

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