偏愛映画館 VOL.1『CUBE 一度入ったら、最後』

劇場上映中&これから劇場上映となる映画から、映画のプロが選んだ偏愛作品を、
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映画ライター。1987年生まれ。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクションや映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー、レビュー、コラム、イベント出演、推薦コメント寄稿など映画にまつわる執筆を幅広く手がける。「CINEMORE」「シネマカフェ」「装苑」「FRIDAYデジタル」「CREA」「BRUTUS」等に寄稿。
Twitter @syocinema

映画『CUBE 一度入ったら、最後』予告編

クリエイションにおいて、「温故知新」や「継承」は非常に大切なアプローチだ。よく使われる「斬新」という言葉も、比較対象としての過去作品があるからこそ輝く言葉である。そうした意味で、あの『CUBE』の日本リメイク『CUBE 一度入ったら、最後』(10月22日公開)は、「ローカライズ」という意味でも「現代版アップデート」という意味でも非常に興味深い内容となった。

トラップが幾重にも仕掛けられた立方体に閉じ込められた、6人の男女。なぜ自分が選ばれたのか、出口はどこなのか、そもそも何のためなのか、何もわからない。上下左右にある扉を開けて次の部屋に進むしか道はないが、レーザーや火炎放射器といったトラップ部屋を引き当てたら死んでしまう。極限状態に置かれた彼らの運命は――。というのが本作の筋書きだ。

リアルタイム世代でなくても、1997年に制作され、一大ブームを築いたカナダ発のスリラー映画『CUBE』の存在は知っていることだろう。日本版『CUBE』も、「公認リメイク作」として、基本的な構造・設定(下地、という感覚が近いか)は本家を踏襲している。そのうえでどう変化をつけるか、が清水康彦監督率いるチームの腕の見せ所だが、各キャラクターや結末を含めた物語展開は日本オリジナル。

非現実的な設定・物語にドラマ性と説得力を与えるビジュアル周り、切迫した状況を伝える音像がこの映画のオリジナリティを作り出す鍵となる。あの『セブン』やゲーム『デス・ストランディング』のタイトル・デザインを担当したカイル・クーパーがコンセプトデザインを担当し、オリジナル版の監督ヴィンチェンゾ・ナタリをクリエイティブデザイナーとして招聘。さらに、美術を務めるのは星野源の『創造』のMVや、Spotify×ずっと真夜中でいいのに。のCM美術を手掛けた橋本直征。強烈に耳に残る音楽はアニメ『東京喰種トーキョーグール』や実写『東京リベンジャーズ』やまだ豊堀内みゆきが担当した音響効果も秀逸!)と、強力な面々が揃った。

実際出来上がった作品を観てみると、CUBEの幾何学的な凹凸が効いた内部構造、一見ツナギ的だが素材にこだわりが光る衣装、ネオン色の効いた照明等々、細部までソリッドな美意識が行き届いたビジュアルが冒頭からガンガンに攻め立ててきて、「いま」を感じさせるスタイリッシュな世界観に自然と没入していた。言葉を選ばずに言えば、「いちいちカッコいい」のだ。

リアル志向の“汚し”好きの自分としては、予告を観た際に綺麗めに寄せたメイク&スタイリングに若干の違和感を覚えたものだが、上記のコンセプトに沿えば、スタイル重視のアンリアルで無機的なデザインになるのも納得がいく。観賞中もまるで気にならないどころか「家で寝ていたはずの人間が気づいたら髪も肌も歯も綺麗に洗われて、謎の立方体に閉じ込められた」ことへのうすら寒さまで感じられたため、「なるほど……やられた!」とおののいた次第だ。

『CUBE』ならではのグロ描写も踏襲されており、近年の活躍ぶりが凄まじいある俳優の狂気の怪演は、見ごたえたっぷりでうれしい限り。視覚的には先鋭的に進んでいくものの、『おっさんずラブ』シリーズ徳尾浩司による脚本は王道のエンタメのストーリーテリングをきっちり抑えており、トガッた演出とストレートな脚本の融合が、本作をメジャースタジオの大作へと仕上げている。

『CUBE』が出始めたときは低予算のカルト映画が一大ブレイク、という肌感だったが、そこから20余年を経て、日本できっちり娯楽大作として新生するという際のバランス感覚も、実に興味深い。本作の結果いかんで、今後の海外作品の日本リメイクブームが来る可能性もあり、観客の反応が大いに気になるところだ。

『CUBE 一度入ったら、最後』

突然閉じ込められた男女6人。エンジニア、団体職員、フリーター、中学生、整備士、会社役員。彼らには何の接点もつながりもない。理由もわからないまま、脱出を試みる彼らを、熱感知式レーザー、ワイヤースライサーや火炎噴射など、殺人的なトラップが次々と襲う。仕掛けられた暗号を解明しなくては、そこから抜け出すことは絶対にできない。体力と精神力の限界、極度の緊張と不安、そして徐々に表れていく人間の本性……。恐怖と不信感の中、終わりが見えない道のりを、それでも「生きる」ためにひたすら進んでいく。果たして彼らは無事に脱出することはできるのか?

清水康彦監督、菅田将暉、杏、岡田将生、柄本時生、田代輝、山時聡真、斎藤工/吉田鋼太郎出演。
2021年10月22日(金)全国公開。© 2021 「CUBE」製作委員会
WEB : https://movies.shochiku.co.jp/cube/
Instagram : @cube_m0vie
twitter : @cube_m0vie
TikTok : @cube_m0vie

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