• HOME
  • CULTURE
  • CINEMA
  • 映画『スパゲティコード・ラブ』特集2:俳優・...

映画『スパゲティコード・ラブ』特集2:俳優・清水尋也インタビュー
どんな役も演じ抜く、不変の姿勢としなやかな信念

まずは人として元気であって、友だちや家族と良い関係である、ということ

――先程、10周年を前に「ずっと楽しい」とおっしゃっていたのが印象的でした。役作りや演技へのアプローチも一貫しているのでしょうか。

 はい。演技に対するアプローチも特別変わっていません。役作りについて、僕自身は基本的に事前に作り込んだりはしないんですよ。現場に行って、監督と話し、共演する役者さんと話していくなかで役を作っていきます。それは昔からずっと同じです。

――「他者と話し合い、対話から創っていく」という姿勢なんですね。

 1人で作っていくと、自分の事しか考えられなくなってしまって気持ちが悪いんです。たとえば「ありがとう」というセリフの後に自分が「どういたしまして」と言うシーンがあったとして、気分がいいから笑顔で言おう、と決めていたとしても、現場で相手役の方がふてぶてしく「ありがとう」と言ってきたら、こっちも笑顔になれないじゃないですか(笑)。監督や相手の役者さんのことを勝手に決めつけていくと、違うものが出てきたときに対応できない。あとは単純に「決め込む」というやりかたが肌に合わなくてできないんです。

 だからやっぱり、現場か本読み(撮影に入る前に行う台本の読み合わせ)で考えるのが自分には合っています。

――そういった感覚を研ぎ澄ますためのインスピレーションというところでいうと、いかがでしょう。ここ1~2年で印象的だった映画など、ありますか?

 あまり映画を観ないんですよね……(笑)。パッと思いつくのだと『TENET テネット』(2020年)ですが、それは何かを得るというよりも、クリストファー・ノーラン監督の作品が好きだから。僕自身、ものづくりのアプローチやプロセスは自分で考えればいいと思っていて、他者が作ったものから影響を受けることが一切ないんです。

 どちらかといえば、生活の部分に気を遣っているかもしれません。どれだけ仕事が忙しくて充実していても、人間関係がうまくいかなければやる気も出ませんし、健康状態が良くなければ仕事のパフォーマンスに影響が出る。まずは人として元気であって、友だちや家族と良い関係である、ということがすごく大事だと思っています。最近は友だちとも落ち着いて遊べるようになりましたが、そういう普通の生活をすることに最も重きを置いています。楽しく生活することが一番(笑)。

――僕自身もそうですが、どうしても「勉強しなきゃ」と思ってしまう人は多いので、清水さんのスタイルになるほど!と目から鱗でした。そうした考え方は、どのようにして培ってきたのでしょうか。

 小さい時から母親に「勉強するときはして、やることが終わったら思いっきり遊んでいいよ」と言われて育ってきたので、それが大きいかもしれませんね。プライベートでは、仕事の話は一切しないです。仲のいい役者も何人かいますが、演技論などを話すわけではなく、同じ音楽が好きとか、洋服の趣味が同じとかで一緒に過ごす感覚です。

 学生時代も、周囲の人たちが自分のことを普通に同級生として扱ってくれていたので、こういう考え方でいられるのかもしれません。

――お話を伺っていると、『スパゲティコード・ラブ』の慎吾は清水さんご自身とはまた違ったタイプなのかなと思いました。

 そうですね。慎吾は難しい人間だなぁと思います。僕自身とは全然違うけど、もともと演じるうえで、自分にとって「共感できる/できない」は、あまり関係ないんです。お芝居はそもそも「ハッタリ」。つまり僕は僕でしかなく、別の人間になれることはない。だから、自分と似ているかどうかを演技の引き出しとして使わないようにしています。「ここが俺との共通点で、自分のときはこうだったからきっとこういう感情なんだろう」という引っ張り方をしちゃうと、自分と全く共通点がないときに太刀打ちできなくなり、得意/不得意が出てきてしまうんですよね。

――それこそ、『さがす』ではクレイジーな殺人鬼の役ですもんね。

 どれだけ自分に似ていなくても完璧に演じるのがプロだと思っているので、自分と役の距離に関してはフラットに見ています。慎吾も、ハンマも、「おかえりモネ」の内田衛も、僕の中では差はなく、それぞれアプローチの仕方が違うというだけですね。

 『スパゲティコード・ラブ』の慎吾も、難しい人間だなと思いつつ特別苦労したことはないんです。この作品には難しい人間しか出てこないけど(笑)、中でも慎吾はリアルだと感じましたね。もちろんフィクションだし、ファンタジー的な部分は絶対にあるけど、こういう人間は絶対どこかにいる。そう思いながら、慎吾を演じていました。

ジャケット¥522,500、パンツ¥121,000
ボッテガ・ヴェネタ(ボッテガ・ヴェネタ ジャパン TEL:0120-60-1966
WEB:https://www.bottegaveneta.com/ja-jp)/その他スタイリスト私物

Hiroya Shimizu ● 1999年生まれ、東京都出身。主な出演作に、映画『渇き。』(2014年、中島哲也監督)、『ソロモンの偽証 前篇・事件/後篇・裁判』(‘15年、成島出監督)、『ちはやふる 上の句・下の句/-結び-』(‘16年/’20年、小泉徳宏監督)、『ホットギミック ガールミーツボーイ』(‘19年、山戸結希監督)、『甘いお酒でうがい』(‘20年、大九明子監督)、ドラマ「インベスターZ」(‘18年、TX)、「サギデカ」(‘19年、NHK)、「アノニマス 〜警視庁“指殺人”対策室〜」(‘21年、TX)など多数の話題作に出演。最新作に、連続テレビ小説「おかえりモネ」(‘21年)、声優初挑戦にして主演を務めた劇場アニメ『映画大好きポンポさん』(‘21年、平尾隆之監督)、映画『東京リベンジャーズ』(‘21年、英勉監督)等がある。2019 年に第 11 回TAMA 映画賞最優秀新進男優賞を受賞。待機作にドラマ「となりのチカラ」(EX系列/2022年1月放送スタート)、映画『さがす』(片山慎三監督/2022年1月21日公開予定)など。

1 2 3