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映画『スパゲティコード・ラブ』特集2:俳優・清水尋也インタビュー
どんな役も演じ抜く、不変の姿勢としなやかな信念

2022年にデビュー10周年を迎える清水尋也。中島哲也監督の衝撃作『渇き。』(2014年、中島哲也監督)で鮮烈な印象を残し、2021年の大ヒット作『東京リベンジャーズ』(英勉監督)に至るまで、俳優として独自の世界観を刻み続けてきた。そんな彼の最新作が、映画『スパゲティコード・ラブ』(11月26日公開)。現代の東京で生きる13人の若者の姿をスタイリッシュな映像とリアルな内面描写で描く群像劇だ。

 本作で清水が演じた大森慎吾は、都内の宿泊施設を転々とし、ノマド生活を送っている青年。Facebookの友だちが5000人いることが自慢だが、ある事件によって窮地に立たされていく。SNS社会に生きる我々の痛々しさを体現したような、“生きた”キャラクターだ。

 今回のロングインタビューでは、作品の話はもちろん、SNSとの付き合い方、俳優としての生き方、今後の目標に至るまで、掘り下げて語ってもらった。本人は自身を「線が細い」と評するが、その“芯”は太く、放たれる言葉には一切のよどみがない。力のある言葉の数々をぜひ、受け取っていただきたい。

photographs : Jun Tsuchiya(B.P.B.) / styling : Shohei Kashima (W) / hair & make up : Takai / interview & text : SYO

『スパゲティコード・ラブ』
舞台は現代の東京。フードデリバリー配達員の羽田天、シンガーソングライターの桜庭心、ノマド生活を標榜する大森慎吾、気鋭の広告クリエイター黒須凛……。現在と過去の恋人同士、仕事仲間、客と従業員など、13人の若者の人生が交差してつながっていく。やがてそれぞれの物語は思いも寄らないエンディングへ。丸山健志監督、倉悠貴、三浦透子、清水尋也ほか出演。
11月26日(金)より、東京・渋谷の「ホワイトシネクイント」ほかにて全国公開。ハピネットファントム・スタジオ配給。©『スパゲティコード・ラブ』製作委員会

WEB:https://happinet-phantom.com/spaghetticodelove/
Twitter @SCL_movie 
Instagram @spaghetticodelove

https://youtu.be/NjnOzQgwUkY

得体の知れない、言葉じゃ言い表せない“何か”は「あったな」と思いました。

――文化学園の生徒を対象にした試写会でも、「自分を見ているみたいだった」という声が多数。清水さんご自身は、この作品をどう受け止めましたか?

 僕自身も、10代のときは漠然とした虚無感を抱えていました。すでに俳優の仕事をしていましたが、自分が本当にやりたいことってなんだろうと考える時期があって。この映画には色々な世代の人物が出てきますが、特に学生の部分に関しては、本作に描かれているような得体の知れない、言葉じゃ言い表せない“何か”は「あったなぁ、あるなぁ」と思いましたね。

 慎吾に関しては、SNSの部分。俳優やモデルといった仕事をしていなくても、SNSのフォロワーが何万人という人はざらにいますよね。何事にも数字が見えるようになってきたことで、便利な反面、気づかないうちに欠点も生まれてきていると感じます。

映画『スパゲティコード・ラブ』より。清水尋也さん演じる大森慎吾は、定住せずにあちこちを転々とする「ノマド」を標榜しつつ、SNSを心の拠りどころとしている。

――慎吾でいうと、TwitterでもInstagramでもなく、FacebookがメインのSNSで、ここで友達5000人超、というのをステータスにしているという描写が絶妙でした。2021年にはドラマ「アノニマス〜警視庁“指殺人”対策室〜」でもSNSと向き合う役を演じられていましたが、清水さんは、ご自身の世代とSNSの関係性をどう捉えていますか?

 僕はSNSど真ん中世代で、InstagramもTwitterも普通に見て育ってきているので、SNSがあることが当たり前だと思っています。だからこそ、ちょっと麻痺している部分もあると思うんです。SNSって、どうしても「人に対する言葉」のハードルが低くなるじゃないですか。称賛することも非難することも、容易にできる。僕は人目につく仕事をしているため“見られている”意識が強く、より一層気を付けてSNSに接していますが、周りではトラブルやミスも起こっています。学生のときには、SNSを、いじめやなりすましに使う人間も少なからずいましたから。

 そうした問題のど真ん中にいる僕たちの世代が、まずはSNSの使い方に気を付けないといけないと思います。失敗してから気づく、ということでもいいのですが、デジタルタトゥー(※インターネット上に掲載された情報が完全に削除できないこと)の問題もありますし、やはり日頃から注意して接さなくてはならないと思います。

――丸山健志監督は『スパゲティコード・ラブ』のキーワードに「リアリティ」を掲げており、清水さんの言葉を受けてから映画を観ると、より迫ってくるものがあると思います。本作で着ていた衣装に関しては、いかがでしたか?

 今回の衣装は全身ヨウジヤマモトでした。僕も、慎吾は色々な服を着回すより、ひとつのブランドを偏って着ているような人なんじゃないかと思っていたので、衣装合わせの時に「わかる!」と思いましたね。僕は黒を着ていましたけど、他の人の衣装は色味がすごく素敵だなと感じました。もちろん内容としてもですが、映像美の面でも確立されていましたよね。

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